死後の世界と民族の神話
ゲルマン民族の神話

ヴァルハラ
 ゲルマン神話でいう死後の世界。戦死した人々は、半女神ヴァルキュリヤに導かれて、主神オーディーンの天宮ヴァルハラに迎えられ酒と食物のつきない生活を送るという。その一方でほとんどの人がロキの娘女怪ヘルの統治するヘルに落ちるのが普通とされ、かの英雄ジークフリートさえここへ運ばれている。

ヤコブ・グリム
 ドイツの言語学者で民族説話学の創建者。その著書<ドイツ文典>において、ゲルマン語の子音変化から印欧語との関連を明らかにした<グリムの法則>は有名。その一方で弟ヴィルヘルムとともに集めた<子供と家庭の童話>はグリム童話として全世界で親しまれている。

グリム童話
 グリム兄弟が根気良く集めた、ゲルマン民話の集大成。しかし、そのゲルマン民話は、その源と内容からいえば、大部分がインドのアーリア民族から生まれ伝わったものであり、幾世紀もの長い間言い伝えられていくうちに、ゲルマン的な色合いを帯びるようになったものが多い。


その他の伝承など

天国
 一般的には、現世で清く正しく生きたものだけが、死後行くことのできる至福の国とされている。が、ユダヤ教やキリスト教においては死後の世界というより、天主(神)の支配する国という意味に使れている趣がある。

ハデス
 Hades ギリシャ神話でいう冥府の王。クロノスの子で、兄弟のゼウスが天、ポセイドンが海、そしてハデスは地下の暗黒の王となった。
 死者はすべて彼のところに集まるが、<オデュッセイア>においては亡霊達は実体のない影で、地上での生活の影をうつろに繰り返しているという。スチュクス川をはじめ4つの死の川が流れ、忘れ川(レテ Lethe)も流れている。死者の生前の行いについて、3人の判者(ラダマンチュス、ミノス、アヤコス)が席につき、亡者を裁いては善者を楽土エリュシュオンの野に送り、悪者をタルタロスの闇に落すという。

ケルベロス
 ギリシャ神話で地獄の門を守る恐ろしい犬。首は3つで尾は蛇。

さいの河原
 冥土にあるという河原で、幼くして死んだ小児が苦行を強いられるところ。小児が石で塔を作ろうとするが大鬼がこれをくずし去って責めさいなむという。これは母胎にいるとき、母に多大な苦痛を与えながらも、幼くして死んでは母の恩に報えないから、その罪を問われているのだという。しかし、そんな子供達を地蔵菩薩が現れて救ってくれるという。その由来は、<法華教>方便品にあり(童子戯れに砂を集めて仏塔を造るも、みなすでに仏道を成ず)というものに地蔵菩薩信仰が合体したものだという。

人神
 神性があるとして尊崇される生きた人間。ペルー王、エジプト王、戦前日本の天皇など、王自らを神格化することによって、絶対的君主制を維持し強大な権力を正当化しようとした。

屈葬
 埋葬方法のうちで、遺体を折り曲げ束縛して土の中に埋める方法。
 その理由として、死霊を恐れるあまり、死者がはいだして歩きまわらないようにするため。

天使
 神と人間の仲介者として、神意を人間に伝えたり、人間の祈願を神に伝える霊的存在。仏教、キリスト教、ゾロアスター教がこれを認めている。善天使、悪天使というものがあり、仏教では浄土を行き来する天人とえん魔に仕える天使にわかれ、またキリスト教でも悪天使としてのルシフェルは広く知られているところである。

悪魔
 原語(Satan )サタンの意は、神にそむく者ということ。聖書では試練に敗れたルシフェル(悪魔の長)をはじめとする悪天使のことである。アダムとイブの原罪いらい、人は罪をおかす宿命にあるが、それをそそのかすのが悪魔であり、神の助力を得てその誘惑に打ち勝つことが功徳とされるため、神はこれを放置しているのだという。

デーモン
 原語はギリシャ語のダイモン<Daimon>(ホメロスの詩に登場する神)からきている。外部から個人を支配する運命を意味するが、ヘラクレイトスでは、人間各自の内部に潜む不気味な力のことをいった。やがてそこから、魔にとりつかれたもの<Daemoniacus>という考えがおこった。ヘルマン・ヘッセが発表した<デーミアン>はここからきている。

    ⇒part-6