難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺)/診断・治療指針(公費負担)

特定疾患情報認定基準

■概念・定義
核上性注視麻痺,パーキンソニズム,痴呆を主症状とする慢性進行性の神経変性疾患である。病理学的に,黒質,上丘,淡蒼球,視床下核,小脳歯状核に強い神経細胞の脱落とグリオーシスを認める。更に残存神経細胞の中に,神経原線維変化が出現し,ガリアス染色では房状星状膠細胞が認められ, 臨床的にも,病理学的にも特徴のある疾患単位を構成する。発症の原因は不明である。

■疫学
正確な疫学調査はない。有病率は,パーキンソン病(人口10万人当たり約100人)の20分の1程度ではないかと推定される。

■病因
現在はなお不明である。パーキンソン病のような発症の危険因子に関する研究はまだ行われていない。

■症状
発症年齢は中年期以降で,50歳以後が大部分を占め,更に60歳以後の発症が多い。 徐々に歩行障害で始まる場合が多い。パーキンソン病に似た小刻み歩行を呈するが,前屈姿勢と,逆に反り返った姿勢で頸が後屈している場合が多い。進行 すると歩き始めに足がすぐ出ないすくみ足が現れ,方向転換の際もすくみ足が出現する。更にパーキンソン病との違いとして,スタンスが左右にやや広い開脚歩行をとるために,初期には小脳性の歩行障害と間違われることがある。

下方注視麻痺が出現する時期は,様々であるが,これに関する症状と して,階段を降りる際,足下を見づらくて怖いという訴えがある。診察では,上方視より下方視障害の方が強いのが典型であるが,注視麻痺がはっきりしない場合もあり,眼球運動が正常でも必ずしも進行性核上性麻痺を否定できない。眼球頭位反射(人形の目現象)は保たれている。

言語障害は,頻度の高い症状で,声は小さく,抑揚の乏しい話し方となる。嚥下は進行例において障害され,固形物も流動物も気管へ誤飲しやすくなる。

身体動作も病初期から緩慢となり,手先の細かい動作や書字が難しくなり,日常生活においても,着替え,ボタンのかけはずし,歯磨きなどの動作が徐々に時間を要するようになる。

パーキンソン病の特徴である安静時振戦は通常存在しないが,姿勢時や動作時の振戦は出現することがある。しかし稀に初期に安静時振戦をみる患者があるので,安静時振戦があっても進行性核上性麻痺を否定できない。また強剛は項部と体幹に強く,四肢にはないかあっても軽い。

中期以後になると知能低下をきたすことが多い。いわゆる皮質下性痴呆の特徴を示し,記憶障害としては想起障害が目立ち,名前などをすぐ思い出せない。獲得した知識・知能の利用が障害され,思考過程がのろくなり,質問の理解やその反応に時間を要するようになる(思考緩慢:bradyphrenia)。しかし,かなり進行するまで痴呆が目立たない症例もある。

■治療
抗パーキンソン病薬による治療はおおむね効果を示さない。しかし,他によい治療薬がないので,まずパーキンソン病の治療に準じて薬物療法を試みる。抗うつ薬が有効なこともあるが、効果は一時的である。ただし,通常の有効量まで使用しても効果が認められない場合は,漸滅中止することが望ましい。治療は,もっぱら便秘,流涎,不眠,興奮などに対する対症的治療が中心となる。流涎や筋強剛が強い場合,少量の抗コリン薬(アーテン2〜4mg/日)を試みてよいが, 痴呆を伴っていることが多いことと,進行性核上性麻痺ではドパミン系のみならず,脳内のコリン系ニューロンもかなり変性脱落しているとされ,抗コリン薬は精神症状を悪化させることがあるので,使用は慎重に行う。

歩行と姿勢反射の障害が顕著となり,転倒の危険のある患者の場合,リハビ リテーションにより機能の維持をはかることが重要である。通院リハビ リ施設がないか,あっても通院できない場合は,家庭で毎日午前・午後20分位ずつ歩行練習を行う。すくみ足に関しては,家庭内であれば,すくみ足の起きやすい場所の床に,歩幅に合わせてビニールテープをはっ ておくと,すくみ足を軽減できる。すくみ足治療の薬物としてドロキシドパ(300〜900mg/日)があるが,著効果は期待できない。

骨折などを契機に寝たきりになってしまった場合は,体位変換により褥瘡・肺炎を予防し,食事は特に注意して誤嚥を防ぐ。万一誤嚥性肺炎を起こした場合は,直ちに吸引を行い,化学療法を行う。胃内容を誤飲した場合は,胃酸のため強い炎症反応が肺に起きるので,最初にソル・ コーテフ1gを併用する。その後は,体位変換に加え胸部理学療法を 行い,喀痰の排出に努める。経口摂取が困難と判断したら,鼻腔胃ゾンデによる経管栄養,又は胃瘻造設によるチューブ栄養を行う。ま困難な場合が多く,間歇的導尿か勝胱留置カテーテルを必要たこの段階では,自カでの排尿がとする。寝たきりになった場合には,介護力の確保状況によってか,看護カの優れた長期療養施設利用かを選択する。

■予後
正確な予後調査はない。薬物が無効なために,パーキンソン病に比ベると寝たきりになるまでの期間が短いが,一般的に従来考えられてきたよりは進行速度は遅い。これは,比較的軽症の時期に臨床診断がされる 例が増えていることも関係しているかも知れない。発症から寝たきりになる期間は,5〜10年程度と推定される。死因は肺炎や尿路感染などの感染症,食物や喀痰による窒息などが多い。


神経変性疾患に関する調査研究班から
進行性核上性麻痺 研究成果(pdf 24KB)
この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。

この疾患に関する関連リンク
  神経変性疾患に関する調査研究班ホームページ

  メニューへ