難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

脊髄小脳変性症/診断・治療指針(公費負担)

特定疾患情報認定基準

■概念・定義
脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とする原因不明の神経変性疾患の総称である。

従って、これには臨床、病理あるいは遺伝子的に異なるいくつかの病型がある。臨床的には小脳性ないしは後索性の運動失調を主症状とする。運動失調症状が徐々に出現し、緩徐に進行する経過をとる。運動失調のみ呈する場合もあるが、それ以外の症状を呈する場合が少なくなく、他の症状として、錐体路徴候、錐体外路徴候、自律神経症状、末梢神経症状などを示すものがある。これらの組み合せから、病型を推定することができるが、必ずしも常に可能とは言えない。そのときに参考になるものの一つは、画像診断である。例えば、頭部X線CTやMRIにて小脳や脳幹の萎縮を認めることが多く、ときには大脳基底核病変を認めることもある。もう1つの参考となる点は、病型によっては遺伝性を示すことである。遺伝性を認める場合には優性遺伝のことが多いが、劣性遺伝もある。

なお、脊髄小脳変性疾患であることを言うには、他の疾患、例えば脳血管障害、炎症、腫瘍、多発性硬化症、薬物中毒など二次性の運動失調症が否定されていなければならないのは言うまでもない。

■疫学
運動失調症調査研究班による臨床統計によると、1990年の段階で本邦の脊髄小脳変性症の頻度は10万人当たり約7〜10人程度であるという。

遺伝性症例の中では、従来は Menzel型遺伝性運動失調症とされる病型が多かったが、最近の遺伝子診断が確実に行われるようになり、意外にもMachado-Joseph病が最も多いことが分かってきた。この事実は世界的に確認されつつある。

■病因
遺伝性の病型は当然ながら遺伝子異常により発病すると考えられるが、そのうちのいくつかの遺伝子が同定された(SCA1,Machado-Joseph病、DRPLA)。また、遺伝子の同定はまだできていないが遺伝子連鎖解析により、染色体上の遺伝子座が分かったものもある(SCA2,Friereich運動失調症など)。

このように、遺伝子から病因を解明していく研究が盛んになっているが、小脳あるいはそこと関連した神経細胞群が選択的に死に至る理由はまだ分かっていない。

■症状
小脳性運動失調は、いくつかの個別の症状のまとまりからその存在が疑われる。それらの症状には、まず、いわゆるロレツが回らない、あるいは音と音がつながってしまうなどの言語障害がある。次に、歩行時に腰部の位置が定まらずゆらゆらと揺れる体幹動揺や足を左右に広げて重心が後ろに残ってしまう症状を合わせた失調性歩行がある。更に、上肢の協調運動不全と動作時の振戦がある。このために患者は字が書けず、言語障害とともに意志の疎通を困難にする場合がある。

その他関連症状として眼球あるいはその運動の異常 (眼振、緩徐眼球運動、びっくり眼など) がある。運動失調が単純に小脳性だけではなく、後索性の要素が加わって深部感覚障害が加味されていることもある。

こうした小脳性運動失調症状のみの場合もあるのがむしろ少ない。多かれ少なかれ運動失調以外の症状を呈することが多い。そのような症状には、例えば筋固縮や無動などのパーキンソニズムを中心とする錐体外路徴候、腱反射亢進や時に病的反射を見る錐体路徴候、起立性低血圧や排尿障害を中心とする自律神経症状、頻度は少ないが病型によっては認められる知能障害などがある。病型によって、運動失調以外のこれらの随伴症状の組み合わせが異なるので、診断基準に述べた各病型の特徴をみると病型診断も可能である場合がある。

しかし、遺伝性のものは最終的には遺伝子診断が決め手になるのはやむを得ない。

■治療
まず、一般的な指導としては、患者が困っている症状の克服のためあるいは危険防止のために、次のような指導を与える。例えば、言語障害に対してはゆっくりしゃべるように指導する。また、体幹動揺を伴う失調性歩行については左右に足を開いて歩くよう指導する。さらに上肢の振戦による動作障害については肘を机に固定して手の作業をするようにしたり、あるいは一方の手を他の手に添えて固定するなどの指導を行う。

小脳性運動失調症状に対する唯一の薬剤がTRH(Thyrotropin releasing hormone)の静注である。効果がある場合には継続する。ミオクローヌスのような素早い振戦には、リボトリールを試みる。

付随症状としてのパーキンソニズムに対してはL-DOPA合剤を漸増により試みる。起立性低血圧による立ちくらみや失神などに対してはL-DOPSなどを試みる。また、下肢に弾性包帯を巻くことは起立性低血圧の程度を軽減する。尿道括約筋・膀胱収縮筋の協調不全による排尿困難が多く、自己導尿を要することが多い。

■予後
脊髄小脳変性症の予後は、各病型で少しづつ違うので一概にはいえない。純粋に小脳症状のみで経過する型である皮質性小脳萎縮症と遺伝性皮質性小脳萎縮症は、その進行は非常に遅く、生命予後も極めて良好である。通常の平均寿命と変わらないと考えてよい。一方、その反対に進行が著しく速く、数年でベッドから起き上がることさえ不可能になることもあるのがオリーブ橋小脳萎縮症である。

症状が多彩であり特に起立性低血圧によって立位をとることも難しくなり呼吸器感染症を起こしやすいこと、更に排尿障害によって尿路感染症も起こしやすいことなどの理由で生命予後も最も悪い。

その他の病型はこの2群の中間に位置するが、痙攣発作や痴呆などを伴うDRPLAは比較的進行も早く予後は悪い方に属する。
なお、全体的にいえることであるが失調性歩行のために、転倒する機会が多くそのためにしばらくベッド上安静を取らざるを得ず、それをきっかけとして病像の増悪を見ることも決して少なくない。


運動失調症に関する調査研究班から
研究成果(pdf 33KB)
この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。

  メニューへ