難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

進行性骨化性線維異形成症(FOP)/診断・治療指針

特定疾患情報

■概要
進行性骨化性線維異形成症(Fibrodysplasia ossificans progressiva: FOP)(MIM: 135100)は、小児期から全身の骨格筋や筋膜、腱、靭帯などの線維性組織が進行性に骨化し、このため四肢・体幹の可動性低下や変形を生じる疾患である。先天性の母趾形態異常を伴うという特徴がある。骨系統疾患の国際分類(Superti-Furga A, et al: Am J Med Genet A, 2007)ではDisorganized development of skeletal components group(骨格成分の発生異常グループ)に分類されている。

■疫学
 有病率は200万人に1人とされている。日本では50〜80名程度の罹患者がいると考えられるが、正確な数字は把握されておらず、研究班で調査を行っている。

■病因
 本疾患は弧発例が多いが、家系例の検索から常染色体優性遺伝形式を取るとされている。2006年にはBMP type Iの受容体であるACVR1の遺伝子変異が報告され(Shore EM, et al: Nat Genet, 2006)、日本人の罹患者でもこの変異が確認されている。この遺伝子変異が本疾患における進行性異所性骨化をはじめとした表現型にどうつながるかは研究途上にある。

■症状
 本疾患の主症状である異所性骨化は、乳児期から学童期にかけて初発することが多く、皮下軟部組織に腫脹や腫瘤を生じ、時に熱感や疼痛を伴うことが多い(flare-upと呼ぶ)。これが消退を繰り返しながら骨化が進行し、四肢では隣接する関節の拘縮、強直、体幹では可動性低下や変形につながる。外傷や医療的介入(深部への注射や手術など)が誘因となることもある。骨化は体幹(傍脊柱や項頚部)や肩甲帯、股関節周囲から始まり、徐々に末梢へ進行する傾向がある。従って手指の可動域制限は少ない。胸郭の軟部組織(肋間筋など)や咀嚼に関係する組織にも可動性の低下や骨化を生じ、拘束性呼吸障害、開口障害につながる。平滑筋と心筋には骨化を生じないとされている。
 異所性骨化以外の症状として、母趾の形態異常(外反を伴う短趾が多い)、母指の短縮、小指の弯曲、聴力障害、禿頭などが知られており、X線検査で太く短い大腿骨頚部や長管骨骨幹端部における外骨腫様の像を認めることがある。

■治療
 現時点で本疾患に伴う有効な治療法はない。遺伝子治療は行われておらず、骨髄移植は再生不良性貧血の合併例で1例行われたが、免疫抑制剤の投与期間中のみ異所性骨化の発現が抑制されていたと報告されている。
 Flare-upを予防するためには、外傷を避ける必要がある。特に転倒、転落はflare-upだけでなく、受身の姿勢を取れずに頭部外傷などにつながるので特に注意する。筋肉内注射は避けるべきであるが、皮下注射や静脈注射は問題がないといわれている。歯科治療に際しては特に注意が必要といわれており、無理に顎を開くこと、筋肉内の局所麻酔薬注射、下顎神経ブロックは避けるべきである。インフルエンザやインフルエンザ様のウイルス感染もflare-upの危険因子とされている。
 Flare-upを生じた際に骨化への進行を防ぐために様々な薬剤が試みられているが、明らかな有効性が確認されたものはない。ステロイド、非ステロイド性消炎鎮痛剤、ビスフォスフォネートなどが使用されている。

■ケアー
 早期の正確な診断が重要とされており、診断されればflare-upを予防するために外傷を避けることを心掛ける。しかしどの程度まで運動や活動を制限するべきかはまだ分かっていない。骨化が進行した場合、移動に関しては適切な援助や杖・車椅子などの処方が必要となる。また胸郭の可動性低下や変形による呼吸障害、開口制限による栄養摂取等についても援助が必要である。

■食事・栄養
 食事や栄養と疾患の進行とは直接関係がない。しかし開口制限を生じた場合には、適切な栄養摂取ができるように工夫が必要となることがある。また、歯科治療に伴い顎関節の可動性が低下したり、また開口制限のある状態では歯科治療が困難になったりすることもあり、齲歯の発生を避けるような食事と、歯の衛生管理が重要である。

■予後
 呼吸障害と栄養障害が生命予後に関与するとされているが、50歳代〜70歳代の生存者も確認されている。


この疾患に関する関連リンク

進行性骨化性線維異形成症(FOP)に関する調査研究班ホームページ


情報提供者
研究班名 骨・関節系疾患調査研究班(脊柱靭帯骨化症)
情報更新日 平成20年4月30日


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