難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

加齢黄斑変性/特定疾患情報

診断・治療指針

1. 加齢黄斑変性とは
網膜の中心部は黄斑とよばれ、ものを見るときに最も大切な働きをします。この黄斑の働きによって私達は良い視力を維持したり、色の判別を行ったりします。この黄斑が加齢にともなって色々な異常をきたした状態を加齢黄斑変性といいます。加齢黄斑変性は滲出型と萎縮型に分けられます。萎縮型は徐々に組織が痛んで死んでいくタイプで、黄斑に地図状の萎縮病巣ができます。長い間かかって視力が低下していきます。老化現象ですから治療法がなく、視力も急には落ちないので、あまり問題にされていません。もう一つの滲出型はその名の通り水がにじみ出てきて(滲出)、黄斑に障害が生じるタイプです。出血することもあります。出血や滲出は脈絡膜新生血管といって、網膜の下の脈絡膜にできた、正常な血管とは異なる弱いもろい血管からおこります。以下は滲出型について述べたものです。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
現在日本でこの病気は増加傾向がみられるとされていますが、現段階での頻度を正確に把握することはできません。九州の久山町の住民を対象にした研究では、少なくとも1眼に加齢黄斑変性を有する人は50歳以上の人口の0.87%を占めていました。このうち、滲出型が0.67%でした。

3. この病気はどのような人に多いのですか
加齢にともなって起きる病気ですので高齢者に多く、特に60歳以上に多くみられます。また滲出型は男性に多く、男性は女性の約3倍の頻度でみられます。約20%には両眼性に発症します。喫煙者に多いことが報告されています。太陽光、血圧、体重、虹彩の色などとの関連性が報告されていますが、否定的な報告もあり、年齢と喫煙以外は確実なものはありません。遺伝が関係あることがわかってきました。

4. この病気の原因はわかっているのですか
詳しい原因はわかっていませんが、滲出型では網膜を栄養していて網膜のすぐ外側にある脈絡膜から、網膜にむかって新生血管という病的な新しい血管が発育して、これによって出血や、血液中の水分が漏れ出し黄斑に腫れが起こります。新生血管の発育には網膜色素上皮と脈絡膜の間にあるブルッフ膜が、老化に伴う沈着物のために厚くなることと関係があります。この病的な新生血管が発生する原因として網膜色素上皮やブルッフ膜の変化に加齢や炎症、遺伝的要因が指摘されています。

5. この病気は遺伝するのですか
この病気はしばしば家族内で発症したり、双子で発症したりする事が報告されていますので、遺伝的背景が影響しているのは確実です。しかしすべての患者さんに遺伝歴が証明される訳ではなく、むしろ実際には遺伝歴が証明されない場合のほうが多いです。これはこの病気が高齢者に多いためはっきりとした家族歴が把握できないことが多いためと遺伝子の力が弱いため症状が出ない場合があり、環境がかなり影響しているためであると考えられます。最近米国では関連する遺伝子(compliment factor H 遺伝子)異常が見つかりましたが、日本人ではその遺伝子異常はみつかりませんでした。

6. この病気ではどのような症状がおきますか
網膜の中心部が傷害されますので、まず視野の真ん中すなわち最も見ようとするところが見えにくくなります。最初は物がゆがんだり小さく見えたり暗く見えたりします。また急に視力が低下する場合もあります。黄斑部に病気が限局していれば通常見えない部分は中心部だけですが、大きな網膜剥離や出血が続けばさらに広い範囲で見えにくくなります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか
病気の進行度や重症度、また病型によって治療法はいくつかに分かれます。出血の予防のため止血剤を用いたり、黄斑部に新鮮な出血が多いときには出血を動かす処置をすることがあります。また加齢黄斑変性になりやすい、後に述べる前駆病変が黄斑にみとめる人では発病予防のためにサプリメントを摂取するのが有効だという報告があります。新生血管が中心窩外にあればレーザー光凝固をおこないます。中心窩にとても近い場合には新生血管を抜去する方法もあります。中心窩に及んでいる場合には、最近は光線力学的療法が行われます。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか
この病気は原則として進行性ですが、その進行度や重症度には個人差があります。一般的にはドルーゼン、網膜色素上皮の異常などの前駆病巣がありますが、前駆病巣があってもすべてが発病するわけではありません。やがて新生血管が発育し、出血や滲出が起こります。やがて新生血管が枯れ、出血や滲出が収まっても黄斑の組織の傷害は永久に残ります。


情報提供者
研究班名 視覚系疾患調査研究班(網膜脈絡膜・ 視神経萎縮症)
情報見直し日 平成20年5月1日

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