第十九章 シャイニング基地攻防戦
XV  三日間の休暇を終えてシャイニング基地に舞い戻ったアレックスは、次なる指令で あるタルシエン要塞攻略に向けての行動を開始した。  シャイニング基地に残って、捕獲した六万隻の艦船の改造の指揮にあたっていたカ インズは、戻ってきたアレックスに呼ばれて司令官室へ向かった。 「カインズ中佐。入ります」 「搾取した艦船の改造の進行状況はどうか」 「艦制コンピューターを同盟仕様に変えるのに手間取っておりまして、現在三万隻が 動かせるところまで進んでおります。乗員のほうも艦政本部長のコール大佐のおかげ で、丁度それを動かせる人数分だけ何とか集まり、現在試運転に掛かりはじめまし た」 「人集めに関しては、コール大佐の手腕はたいしたものだな。で、コンピューターウ ィルスの懸念は?」 「提督の指示通り、ROMはすべて総取り替え、SRAMやメモリディスクは完全に 初期化してソフトを再インストールしましたので、万全な状態です。ただそれが工期 を遅らせている原因になっておりまして」 「ご苦労様。たとえ手間がかかってもやらなければならない。ウィルスが潜んでいて は元も子もないからな。この基地を取り返したような事態になってはいけない」 「わかっております」 「さて……と」  アレックスはわざとのように呼吸を整え、パトリシアに視線を送った。パトリシア は書類入れのところへ行って、中の書類を取り出して戻ってきた。 「今三万隻が動かせるのだな」 「そうです」 「それでは、その三万隻の指揮を、貴官に預けよう」 「三万隻を私にですか」 「そうだ。カインズ大佐」 「大佐? 私が大佐に?」  アレックスはパトリシアに合図を送り、彼女が小脇に持っていた辞令書と階級章を 手渡させた。 「第十七艦隊は、四十八時間後にタルシエン要塞攻略に向かうことになった」 「タルシエンですか?」 「私は、別働隊としてウィンディーネ以下の第六部隊を率いて出るつもりだ。貴官に は、ドリアードから本隊を指揮運営してもらいたい」 「私が、本隊をですか?」 「ただし、作戦指令はこのウィンザー参謀長の指示に従ってくれ」 「わかりました。提督がそうおっしゃられるのなら」 「それから、第八占領機甲部隊メビウスを君のところからレイチェル少佐の配下に移 行する」 「メビウスを?」
     
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