第十六章 新艦長誕生
U  司令室を退室して、すぐ近くの主計科主任室に集まった三人。 「はい。これが女性佐官の制服よ」  といって主計科主任であるレイチェルから制服を支給されるパトリシア。 「サイズは合っていると思うけど、一応着てみてくれる」 「はい」  着ている士官用の制服を脱いで、下着になるパトリシア。 「とにかく第十七艦隊に女性佐官はあたし達三人だけだし、もちろん既成服なんかあ るわけないから、特注品なのよ」  といってスリップ姿になったパトリシアに制服のスカートを渡すレイチェル。 「そうなんですか。じゃあ、この制服は……」  それを受け取って履きながら質問する。 「ふふふ。アレックスが准将になった時から、この時のために前もって準備しておい たの。あなたなら必ず昇進するだろうと信じていたから」 「ありがとうございます」 「うん。スカートはぴったり合っているわね」 「はい」 「次ぎは上着ね」  といって今度はジェシカがパトリシアに上着を着せてやった。 「最後はこれを付けるのよ」  といって持ち出したのは、少佐の階級肩章であった。  レイチェルが器用に針と糸でしっかりと肩に縫い付けていく。そして縫い終わって 糸の始末を施し歯で切った。  そして、戦術士官を示す胸に差している徽章(職能胸章)を、尉官の銀色から佐官 用の金色のものに取り替えた。 「いいわ。さあ、鏡の前に立ってみて」  制服を着終えて、言われた通りに鏡の前に立つパトリシア。  真新しい佐官の制服、肩に輝く少佐の階級章。どれもまばゆいばかりに輝いて見え た。 「素敵よ、パトリシア。良く似合っているわ」 「ほんと、どこから見ても立派な少佐殿よ」 「ありがとうございます……」 「さて、パトリシア。少佐になって最初のお仕事よ」 「そうよ。作戦室に全幕僚を招集する役目」 「はい」  早速、主計科主任室に備わっている端末を操作して、全幕僚に連絡を入れるパトリ シア。最初に呼び出したのは、アレックスの片腕であるゴードン・オニール大佐であ った。 「おう。パトリシア、似合っているじゃないか、その制服」  画面に現れると同時にパトリシアの制服姿を誉めるゴードン。 「あ、ありがとうございます。提督からの指令です、一五○○時に作戦室に集合で す」 「わかった。じゃあ、後でまた」  画面からゴードンが消えて、緊張したため息をもらすパトリシア。  さらに次々と連絡を取り続けるパトリシアであったが、親しい間柄にある幕僚のほ とんどが、その佐官の制服を誉めちぎった。  すべての幕僚に連絡を取り終えて、緊張した肩の荷を降ろして、ほっとため息をも らすパトリシア。 「ごくろうさま」  といってジェシカは、ねぎらいの言葉を忘れなかった。  それから集合の時間までの間、三人は第十七艦隊の今後について熱く語り合い意見 を交換するのであった。  情報参謀のレイチェル、航空参謀のジェシカ、そしておそらく作戦参謀に取り立て られるだろうパトリシア。アレックスを作戦面でバックアップする女性佐官トリオの 誕生であった。
     
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