第十三章 カーター男爵
Ⅳ  公爵より情状酌量を得られたカーター男爵。  捲土重来よろしく、公爵の信頼を取り戻すためには何をするべきなのか……。  自分を拾ってくれた公爵への恩を返すには何をすべきなのか?  自らの居城に戻り策略を巡らす。  時は遡ること二十年ほど前。  男爵マンソン・カーターの家系は、没落貴族で爵位をも失っていた。  十五歳のおり糧を求めて、輸送船の乗組員として雑用係をやっていた。  その輸送船はロベスピエール公爵の持ち船であり、荷役に折に時折姿を見せる公爵の威厳ある態度に、憧れをも抱いていた。  そんなある日、公爵がウェセックス公国から帝国本星アルデラーンへと行幸する旅に同行することが叶ったのだった。  しかも、公爵の御座に酒などを運ぶ配膳掛かりに任命されたのだった。  行方不明となっているアレクサンダー王子に次ぐ皇位継承第二位であり、次期皇帝確実という身分であった。  間近で見る高級貴族に羨望のまなざしを向けるカーターだった。  突然大きく揺れる船体。 「何事だ!」 「か、海賊です!」 「やはり来たか! 応戦しろ!」  公爵の乗る船の周りに護衛艦が集まって、海賊の攻撃から守りつつ、反撃を開始した。 「どこの所属の海賊か?」 「おそらくは、この辺りを荒らしているドレーク海賊団かと思われます」 「そうか、捕まえて儂の前に引っ立てよ」 「かしこまりました」  船長はうやうやしく頭を垂れると、オペレーターに命令した。 「重戦艦を公爵の船の前に並べよ! さらに海賊船団を取り囲め!」  どうやら海賊の出現を予見して、護衛艦隊を隠し持っていたようだ。  完全包囲される海賊船団。  海賊と正規軍隊では火力がまるで違った。  抵抗空しく海賊はリーダーの船を残して全滅した。  リーダーのドレークは捕えられ、公爵の前に引きだされた。  後ろ手に縛られ跪かされているドレーク。 「一応、お主の名前を聞こうか」  厳かに質問する公爵。 「ドレーク。フランシス・ドレークだ!」  言うが早いか、隠し持っていたナイフで手綱を切って、公爵に襲い掛かった。 「危ない!」  配膳掛かりで傍に立っていたカーターが、公爵の前に立ちはだかりドレークの襲撃を防ぐ。ドレークのナイフが腹に突き刺さるも、カーターはその手をしっかりと掴んで離さなかった。  身動き取れなくなったドレークは、従者によって取り押さえられた。 「医者だ! 医者を呼べ!」  公爵の声が遠くなっていく。  無事を確認したカーターはそのまま意識を失った。
     
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