第十二章 海賊討伐
Ⅰ  アルビエール侯国アレックスの執務室。 「ヘルハウンドから連絡が入りました。海賊船は中立地帯へと向かっているようです」  パトリシアが報告する。 「そうか、やっと本拠地を探し当てられそうだな」 「どうしますか? 戦艦が中立地帯に立ち入るのは、国際条約違反になりますが」 「そもそも中立地帯に違法に基地を建設しているのは海賊だからな」  としばし考え込んでいたが、 「この際、大掃除するか?」 「中立地帯でドンパチやらかすのですね」 「害悪を放っておいては、摂政派との交渉にも水を差される事態になるかもしれないからな」 「誘拐された候女救出という名分があれば、大丈夫なのではないでしょうか」 「そうかもしれないな」 「それでは、征伐には誰を向かわせますか?」 「ここはやはり、ゴードンがいいだろう」 「捲土重来(けんどちょうらい)ですね。失った信用を取り戻させようと?」 「まあな……」  海賊征伐の命はすぐさまゴードンに伝えられた。  副官のシェリー・バウマン大尉が、頬を紅潮させて言う。 「提督の恩に応える機会を与えられましたね」 「すぐさま海賊討伐に向けて準備せよ!」 「はいっ! 海賊討伐に向けた準備を進めます」  キリッと姿勢を正して、命令を復唱するシェリーだった。 「ヘルハウンドに連絡! 我々が到着するまで、索敵に専念させて早まった行動は取らせるな!」  通信士も思いは同じだった。  いや、ここにいるすべてのオペレーター達の思いも。  ウィンディーネ艦隊が結成されて以降、指揮官たるゴードンに付き従ってきた同志だった。 「了解! ヘルハウンドどうぞ!」 『こちらヘルハウンド』 「索敵に専念し、ウィンディーネ艦隊の到着を待て!」 『ヘルハウンド了解! ウィンディーネ艦隊を待ちます』  数時間後。 「出航準備完了しました!」 「よおし! 中立地帯へ向けて全速前進!」 「了解!」 「進路、中立地帯へ!」 「全速前進!」  ウィンディーネ艦隊七万隻が、中立地帯に潜む海賊討伐に向けて動き出した。  銀河帝国にしろ、共和国同盟にしろ、長年の頭痛の種を葬り去る好機がやってきたのだ。  その頃、追撃艦隊が動き出したのも知らずに、中立地帯へと踏み込む海賊船団。 「まもなく中立地帯に入ります」  航海長が報告する。 「警報装置を切っておけよ」  戦艦に搭載された航路ナビには、中立地帯に近づくと警報を鳴らすシステムが組み込んである。  結構大きな音を立てるので、煩いからと切るのがいつものことである。  国際条約上では切ってはいけないことにはなっているのであるが海賊には無用である。 「中立地帯に入りました」 「跡をつけている奴はいないか?」 「感応ありません」 「ならば基地に帰還する」
     
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