第十一章 帝国反乱
Ⅸ  アルビエール侯国首都星サンジェルマン、執務室で談話するアレックスとハロルド侯爵。 「どうやら摂政派は、サセックス侯国を自陣に取り込もうと画策しているようです」 「当然でしょうね。味方は多ければ多いほどいいですから」 「こちらも交渉した方がよろしいのではないでしょうか?」 「そうなのかもしれませんが……。紛争が泥沼化した際には、仲裁役として中立を 保っていて欲しいものです」 「しかし反乱を起こした側にとっては、溺れる者は藁をも掴むです」 「そうですね。取りあえずは、保険を掛けておくとしますか」  数日後。  サセックス侯国のエルバート侯爵の館を訪れた使節団があった。  使節の代表は、ロベスピエール公爵の懐刀のマンソン・カーター男爵である。  応接室で応対するエルバート侯爵。 「早い話が、味方になれということですかな」 「その通りです」 「我が国が、バーナード星系連邦に対する盾になっていることはご存じですよね」 「はい。しかし連邦は、革命直後で侵略する可能性はありません」 「それは分かっております。とはいっても、アルビエール侯国側にしても、同じこ とを考えておりましょう。どちらか側の肩を持つというのは、不公平というものです」  数時間後。  館から出てくる使節団。 「想定通りだったな」 「仕方ありませんね。やりますか?」 「無論だ。後はドレーク提督に任せよう」  やがて乗ってきた車で帰ってゆく。  宇宙空間に十二隻の宇宙船が停止している。  その中心にフランシス・ドレーク提督の乗船する私掠船カリビアン号。  かつて海賊として帝国内を荒らしまわった船である。  久しぶりに仲間を招集して海賊団を結成したのだった。  船橋では、今しがた通信が終わったばかりのところ。 「男爵は、説得に失敗したか……。まあ、想定内だ」 「次は我々の番ですね」 「標的は今どこにいる?」 「今の時間は、女学院にいるはずです」 「よし! 先に潜入している奴と連携して、下校するところを襲うぞ!」 「彼女は、送り迎えの車で通学しています」 「運転手は殺しても構わん。娘だけ誘拐できれば良い」  数時間後。  数隻の高速艇が惑星へと降下していった。  女学院から公爵家へと向かう自動車。  車内で本を読んでいる少女。  その自動車の前方に出現する高速艇。  道を塞ぐように停止する。  何事かと車を降りてくる運転手だったが、銃撃を受けてバタリと地面に倒れてし まう。  高速艇から数人の男達が降りてきて、自動車を取り囲む。  怯えている少女。 「お嬢さま、お迎えに参りました」  ドアを開けて、降車を促す男。 「おとなしくして頂ければ、危害は加えませんから」  逆らってもしかたがないと思った少女は、言われるままに男達に着いてゆき、高 速艇に乗り込む。  少女を乗せた高速艇は上空へと飛び去り、待機していた私掠船に合流する。  やがて、どこかへと消え去った。  その私掠船の後を密かに追跡する一隻の船。  その機影はレーダーからは確認できず、肉眼でも視認できない。  歪曲場透過シールドで守られていた特殊索敵である。
     
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