第十一章 帝国反乱
Ⅷ  大演習は終わった。  すでに展望ルームには、皇帝の姿はない。  幼い皇帝に長時間同じ場所に立たせておくのは無理だろう。  ぐずって泣いて周りの者を困らせたのであろう。皇帝をあやしながら侯爵とエリ ザベス皇女と共に帰ったと思われる。  残っているのは将軍達だけのようである。 「大演習を終了する。これより反省会を開くので、各艦隊の指揮官及び参謀はス テーション作戦会議室に集合せよ」  本部から連絡が届く。  数時間後作戦室に集合する面々。  議長は、当然ロベスピエール公爵子飼いのアルバード・ギンガム大将である。 「反乱軍は、アルビエール侯国に集結している」  摂政派においては、反乱を起こしたのは前回に続いて皇太子派ということになっ ている。  前回はともかく今回はどうみても摂政派の謀反であることは確か。  しかし国政においては、帝都を押さえている摂政派に分がある。 「帝国を放ったらかしにして、共和国同盟にばかり加担して国政を疎かにしている」  アレクサンダー王子に、皇帝になる資格はないと吹聴しまくっていた。  盗人にも三分の理があるということだろう。  摂政派にとって、アレックス(アレクサンダー)が皇位継承継承権を有する王子 であることまでは認めているようだが、皇太子としては認めない。  話題は中立を保っているサセックス侯国の話しとなった。 「サセックス侯国は、今まで通り中立を保っている」 「まあ、バーナード星系連邦の侵略を阻止するためには致し方ないでしょう」 「連邦? 今はあっちも謀反が起きて分裂しているのだろ? こちらに攻め入る余 裕はまだないと思うのだが」 「さすれば、サセックスをこちら側に引き込むこともできるじゃないか」 「使者を送ってみたらどうだ?」 「そうだな。手をこまねいていたら、反乱軍に先を越されてしまうぞ」 「だが、これまでの経緯をみても、エルバート侯が首を縦に振るとは思えない が?」  頭を抱える一同だったが、 「人質を取って、言うことを聞かせるしかないだろう」  と進言したのは、フランシス・ドレーク提督であった。  海賊上がりのドレーク提督にとっては、人質作戦を実行するのも容易いだろう。 「ならば貴官が陣頭指揮を執ればどうだ?」 「いいですとも。ご命令なさればいつでもよろしいですぞ」  と議長のギンガム大将を見る。 「それは良いのだが……一応公爵に伺ってからでないと結論は出せない」  国家間の案件であるがゆえに、公爵の了解を取る必要がある。  最高権力者であるはずの皇帝ロベール三世でも、摂政エリザベスでもない公爵の 名を出すことからして、真の実力者は誰かを示していた。 「ところで、ジュビロ・カービンはどうしておるか?」 「例の同盟分断作戦を上程した奴か? 闇の帝王とか名乗っていたようだが」 「議会進行中のスクリーンに突然現れたのにはビックリしましたよね。ハッキング の能力は認めますけど」 「しかし彼の進言通りに途中までは上手く運んでましたよ」 「共和国同盟内に反乱を起こさせたのは、素晴らしい手腕でした」 「いっそ参謀に取り入れたらどうでしょうか?」 「いや、それはよした方がいい。ああいう奴は、自分の都合で簡単に裏切る」  ということで、話題を変える一同だった。
     
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