第九章・犯人を探せ
W  続いて、ディレクターだったアンソニー・スワンソン中尉を尋ねる。 「ところで、カテリーナが放送終了直前にミシェールを探しに出たというのは本当で すか?」 「ええ、間違いないですよ」 「結局ミシェールは亡くなっていたのですが、その交代は誰がなさったのでしょう」 「ああ、それは私が代わりにやりましたよ」 「タイムキーパーでしたよね」 「ええ。タイムキーパーは新人がまず最初に与えられる役目ですから、局員なら誰で もできます。まあ、手慣れたディレクターなら、タイムキーパー役も同時にこなせま す。ちょっと忙しいですけどね」 「カテリーナのことですけど、何か変わった態度とかはなかったですか?」 「カテリーナですか? ミシェールじゃなくて……」 「そうです」 「うーん。どうですかねえ……。まあ、そわそわしていた感じはしましたけど」 「そわそわしていた?」 「放送終了間近になれば、誰だってそうでしょう。特に彼氏とかがいればよけいに」 「彼がいるのですか?」 「はっきりとは判りませんが、雰囲気からそんな感じがしただけです。本人から聞い たわけではありません」 「そうでしたか……。わかりました、また何かありましたらお伺いに参ります」 「いえ、どういたしまして。いつでもどうぞ」 「ありがとうございました」  その後、残り二人の放送局員から証言をとったが、反応は同じだった。  自分の部屋に戻って考えをまとめることにする。  とその前に……。  ランジェリーショップに立ち寄ることにする。 「いらっしゃいませ!」  職員が明るい声で迎えてくれる。 「さっきのお勧めのランジェリー、見せてもらえるかしら」 「いいですよ。店に出したら結構人気がありましてね。売り切れないように、コレッ トさんのために取っておいたんです」 「ありがとう。わざわざ済みませんねえ」 「いいえ。こちらこそ、いつもお世話になってますから、当然ですよ」  と言いながら、奇麗な化粧箱から上下揃いのブラとショーツを出してくれた。 「谷間メイクシンプルブラ・ショーツセットです。脇からお肉を寄せる伸び止め脇寄 せリフト、押し上げパッドで下からバストアップします」  ブラは、3/4カップ・ワイヤーサイドボーン入り・後ろホック二段二列、エンブロ イダリーレース使用。ショーツは同柄のストレッチ素材。 「サイズは、C70でよろしかったですよね」 「ええ。試着していいかしら」 「どうぞ」  ショーツはともかく、ブラはちゃんと試着して胸に合ったものを買わないと後悔す る。試着室に入り上半身を脱いで、ブラを胸に合わせてみる。 「ぴったりだわ。デザインも自分好み」  試着室から出て来たコレットに、すかさず店員が声を掛ける。 「いかがですか?」 「これ、いただくわ」  と言って、商品を一旦返して、IDカードを渡した。 「ありがとうございます」  店員はIDカードを受け取ってレジに通した。IDカードは身分証明書であると同 時に、クレジット機能も合わせ持っている。店舗での買い物やサービス料金などは、 給料から自動引落される。 「カードをお返しします。包装しますので少々お待ち下さい」  IDカードを受け取り、商品を包装している間に、店内を見渡すコレット。女性の 心をくすぐる可愛いデザインや、男を惑わす魅惑的な高級ランジェリー。何でも揃っ ている。  その中の一つのベビードールを眺めていると、包装を終えた商品の入った紙袋を持 って店員が声を掛けた。 「ああ、そのベビードール、なかなか良いでしょう?」 「そうね。でも、これってやっぱり彼氏がいる人しか買わないでしょう」 「そうですね、やっぱり相手がいらっしゃらないと……。そういえば、カテリーナさ んが買っていかれましたね。彼氏がいらっしゃるってことですかね。あ……。いけな い! こんなこと話しちゃいけないんだっけ。捜査官のコレットさんだから、つい話 しちゃいました。お願いです、わたしが話した事、カテリーナさんには黙っていてく ださい」 「わかりました。内緒にしておきますよ」 「ありがとうございます。はい、商品をどうぞ」  恐縮しながら紙袋を手渡してくれる。
     
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