難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

ライター症候群

1.ライター症候群とは?(定義)
2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?(疫学・頻度)
3.この病気はどのような人に多いのですか?(男女比・発症年齢)
4.この病気の原因はわかっているのですか?(病因)
5.この病気は遺伝するのですか?(遺伝)
6.この病気ではどのような症状がおきますか?(症状)
7.この病気にはどのような治療法がありますか?(治療)
8.この病気はどういう経過をたどるのですか?(予後)
9.よく聞かれる質問とこたえ(FAQ)

1.ライター症候群とは?(定義)
 この症候群を確立したのはHans Reiterであり、彼は一人のプロシャ陸軍中尉が腹痛と下痢に引き続いて尿道炎、結膜炎さらに多発性関節炎が発症したのを記述し、Spirochaetosis arthriticaと呼んだのがその始まりです。以後古典的ライター症候群は関節炎、非淋菌性尿道炎、結膜炎の三大主徴を伴った症候群をいうことになっています。しかし臨床上では必ずしもこの三徴がそろうとは限りません。本症候群は疫学的、遺伝的、免疫学的、臨床的、病理学的、X線学的にも慢性関節リウマチと異なることが明かです。Foxらはライター症候群を次のように定義しています。

ライター症候群の定義
1.血清反応陰性の非対称関節炎(主として下肢関節)
2.次の項目の1つまたはそれ以上を満たす
 a. 尿道炎
 b. 赤痢
 c. 炎症性眼疾患
3.除外項目
強直性脊椎炎乾癬性関節炎、その他のリウマチ性疾患

2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?(疫学・頻度)
 頻度:わが国では症例数が少なく実際の正確な患者数はわかっておりません。しかし米国では50才以下の男性では100,000人に3.5人との報告もあります。

 疫学:性的交渉の後や(クラミジア感染)、消化管の炎症、つまり赤痢やサルモネラ感染、エルシニア感染のあとに発症することが知られています。

3.この病気はどのような人に多いのですか?(男女比・発症年齢)
 一般的に性的交渉によるライター症候群では、はるかに男性が多く、好発年令は20−40才台です。日本での報告では男女比は13:1であったとの報告もあります。小児および女性と高齢発症のものでは、そのほとんどが腸内感染によるものです。小児におけるライター症候群はほぼ全例がHLA-B27抗原陽性患者であり、さらに小児では成人に比べて発熱、胸膜炎、脾腫、リンパ腺腫脹などの全身症状がつよいのが特徴です。

4.この病気の原因はわかっているのですか?(病因)
 原因:ライター症候群は感染性下痢疾患後に発症する流行型と、性交後に発症する型に分けられます。軍隊での赤痢後に本症の多発が報告されていますが、赤痢後に発症するものではShigella Flexneriという菌が証明されています。さらに腸内感染ではサルモネラやエルシニア菌も注目され、HLA-B27抗原分子との関連が示唆されています。

 性的交渉後に発症するライター症候群は未開発国に比べて欧米やわが国に比較的に多いのです。この型ではクラミジアやマイコプラスマをはじめとする微生物とHLA-B27抗原を有する遺伝的素因との細胞性免疫や抗クラミジア抗体の上昇が報告され非腸炎型でのライター症候群の発症要因として注目されています。

5.この病気は遺伝するのですか?(遺伝)
 正確に遺伝するということは言えません。しかしこの病気にかかっている患者さんにはリンパ球抗原(HLA)のHLA-B27とつよい相関関係が認められております。またHLA-Bw22あるいはB42などと交叉反応する抗原をもつ人もこの病気にかかりやすい素因があると思われます。

6.この病気はどのような症状がおきますか?(症状)
 関節炎と尿道炎の合併は90%以上に認められ次に多いのは筋肉や腱が骨に付着する部位での炎症によるenthesopathy(付着部炎)に起因する腰背部痛です。Calinによりますとライター症候群の臨床症状発現頻度は次のようであるとしています。

ライター症候群の臨床症状発現頻度
関節炎100%

単関節炎4%踵部痛56%
多発性関節炎96%腱鞘炎52%
尿道炎90%亀頭炎46%
下痢18%口内炎27%
眼症状63%角皮症22%
背部痛72%


 関節炎では非対称性の多発性関節炎で膝関節(90%)が最も多く、足関節(75%)がこれに次ぎます。関節炎は通常数か月以内に自然緩解しますが、約半数のものは憎悪と緩解を繰り返します。膝関節では水腫が長期に持続し、組織学的にも慢性の滑膜炎がみられることがあります。指関節ではソーセージ様の腫脹がみられます。このほか、足底腱板やアキレス腱付着部の疼痛もしばしばみられます。関節の広範な破壊をきたすことはまれですが、変形性関節症に移行するものがあります。

 結膜炎はライター症候群の古典的三徴の1つとされていますが、ブドウ膜炎や紅彩炎も合併していることがあります。しかし一般的に眼症状は軽度で見逃されることも多いのです。多くは両側性であり、分泌物があっても数日で消褪します。

 尿道炎は初期には自覚されないことが多く、この尿道炎は関節炎に先行し本症の初期症状であることが多いのです。尿道分泌液には白血球を多く認めますが特異な菌は検出されません。男性では前立腺炎を伴うことがあります。チフス後におこる尿道炎は直接感染よりも一種のアレルギー反応と考えられています。

 陰茎亀頭の無痛性、表在性潰瘍が20〜50%に認められます(連環状亀頭炎)。表在性潰瘍は亀頭で合して連環状になることもあります。

 足底、足趾、亀頭に膿漏性角皮症が約20%の患者に認められます。この皮膚症状は軽重さまざまで再発を繰り返し、時には膿疱性乾癬との鑑別が困難なこともあります。

 表在性の口腔内潰瘍は約30%にみられますが、無痛性のものが多く、口蓋底、頬粘膜、口唇に多発します。

7.この病気にはどのような治療法がありますか?(治療)
 急性滑膜炎の時期には非ステロイド抗炎症剤の投与と理学療法をおこないます。ステロイド剤は皮膚症状の増悪をきたすことがありますので通常は使用しませんが、関節内注入や腱付着部炎の局所注射は効を奏することがあります。治療に抵抗するものはメトトレキサート(MTX)やアザチオプリンの使用も考慮されます。

8.この病気はどのような経過をたどるのですか?(予後)
 6週から6ケ月で自然治癒するものが多いですが再発を繰り返すのも少なくありません。30〜40%のものが関節炎の増悪と緩解を繰り返したり、脊椎症状が持続します。

9.よく聞かれる質問とこたえ(FAQ)
 Q1: 性交渉の後で発症するのはどんな場合ですか?
 A1: 多くの場合クラミジア感染が多いのですが、この場合でも婚外性交の既往を持つ男性に多発しています。
 Q2: HLA-B27抗原を持たない人にはこの病気はおこりませんか?
 A2: HLA-B27抗原を持たない人でも発症します。アフリカ系の患者ではしばしばHLA-27は陰性ですし、日本人でもHLA-B27は比較的まれです。


ページトップへ

メニューへ