難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

強直性脊椎炎

1.強直性脊椎炎とは?(定義)
2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?(疫学・頻度)
3.この病気はどのような人に多いのですか?(男女比・発症年齢)
4.この病気の原因はわかっているのですか?(病因)
5.この病気は遺伝するのですか?(遺伝)
6.この病気ではどのような症状が出ますか?(症状)
7.この病気にはどのような治療法がありますか?(治療)
8.この病気はどういう経過をたどるのですか?(予後)
9.よく聞かれる質問とこたえ(FAQ)

1.強直性脊椎炎とは?(定義)
 この病気は、英語でAnkylosing Spondylitisといい、その頭文字をとりASと略してよく言われます。病名にあるように脊椎(背骨)が強直(固まってつながる)になる特徴的な病気です。いまだにその原因は明らかでなく、特定の遺伝子をもつ人に発症するなどの事実が明らかになりつつあります。広義にはリウマチ反応陰性脊椎関節炎のグループに属し、脊椎、仙腸関節、股関節など靱帯付着部に炎症を生じ、その結果、脊椎、関節の強直に至る疾患です。

2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?(疫学・頻度)
 この病気の発生頻度は、人種により異なっています。白人では0.4%、日本人でその発生頻度は低く人口あたり0.4〜0.05%とされています。疫学的には、明らかではありませんが人種差が報告されており、中国・韓国人に特定の遺伝子を多く持つために、その発生頻度が高いとされています。日本では地域による発生頻度の差は、無いとされています。また特定の食べ物や特別な環境がこの病気に関係していることは無いとされています。

3.この病気はどのような人に多いのですか?(男女比・発症年齢)
 この病気は、特定の遺伝子を持つ人に発生するといわれています。男女比は12:1と男性に多く、発症年齢は、10歳から35歳で40歳以上に発症することは希です。発症は特定の遺伝子HLA-B27を持つ人で若年で高いとされていますが、すべての人がそうではありません。

4.この病気の原因はわかっているのですか?(病因)
 原因は現在も不明です。多くの研究者が様々な研究を行っておりますが、今のところ原因はわかっていません。しかし最近の研究から特定の細菌感染がこのHLA-B27との関連性が注目されています。この病気の発症する誘因は、わかっておりません。また病態は、白血球からHLA-B27を測定することで、他のリウマチ性疾患と鑑別が可能です。今日では、測定精度も高くなり、費用も比較的安くなりました。専門医に相談すると良いと思います 。

5.この病気は遺伝するのですか?(遺伝)
 遺伝に関しては、明らかな証明はされておりません。HLA-B27の遺伝子を有する人に発症し、かつ家族発生が見られることから遺伝子の関与がいわれています。

6.この病気はどのような症状がおきますか?(症状)
 全身症状と脊椎・関節症状があります。全身症状は、初期に体重減少、疲労感、発熱、貧血などです。活動期では、血液検査で炎症反応がみられ、CRP値の上昇、赤沈の亢進などが見られます。
 脊椎の症状は、徐々に腰部や仙腸骨、臀部に放散する痛みで始まり、座骨神経痛に似た症状を示します。神経学的異常は見られません。腰部や背部の痛みは、軽度の運動で改善しますが、安静では改善されません。強直の変化が進行すると、脊柱全体の運動制限が出現し、前屈みなどの動作が困難になります。
 関節症状は、股、膝、肩関節など躯幹に近い部位の関節が侵され、疼痛・運動制限などです。侵された関節は、最終的には強直となります。確定診断は、エックス線にてなされ、脊椎が骨性に連続し、竹の節状になります(図を参照)。血液学的にリウマトイド因子が陰性で、HLA-B27が高頻度に認められます。

7.この病気にはどのような治療法がありますか?(治療)
 特異的な治療法はありません。基本的治療は、鎮痛と運動療法が主体となります。十分な生活指導、適度の体操と十分な睡眠、休息などが必要です。現在優れた薬はありません。脊柱変形は骨切り術、関節強直は人工関節などが行われております。

8.この病気はどのような経過をたどるのですか?(予後)
 脊椎は、適切な運動療法を行うことで、強直に至ることを遅らせることが可能ですが、靱帯付着部炎が続くと強直となり、炎症は、無くなります。しかし脊柱の運動制限や胸の動きが悪くなります。経過とともに関節は、強直になるため日常生活の行いやすい肢位を保つことが大切であります。

9.よく聞かれる質問とこたえ(FAQ)
 Q1: どのような時にこの病気は進行しますか?
 A1: この病気は、緩解と再燃を繰り返します。炎症が強い時は痛み止めと安静を中心としてください。ただし適切な体操と深呼吸運動が必要です。背骨や関節を固まらせないために必要です。炎症の強い時、疲労時や適切な体操を行わなかった時に進行する傾向があります。
 Q2: 日常生活で気をつけることはどんなことですか?
 A2: 大切なことは、適切な体操です。背骨の強直が起きたときには、大きな関節の機能を保つことが重要です。また外傷、交通事故などに注意してください。背骨の骨折は、脊髄の神経損傷を生じることがあります。


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