難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

重複症候群(オーバーラップ症候群)

1.重複症候群(オーバーラップ症候群)とは?(定義)
2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?(疫学・頻度)
3.この病気はどのような人に多いのですか?(男女比・発症年齢)
4.この病気の原因はわかっているのですか?(病因)
5.この病気は遺伝するのですか?(遺伝)
6.この病気ではどのような症状がおきますか?(症状)
7.この病気にはどのような治療法がありますか?(治療)
8.この病気はどういう経過をたどるのですか?(予後)
9.よく聞かれる質問とこたえ(FAQ)

1.重複症候群(オーバーラップ症候群)とは?(定義)
膠原病には関節リウマチ、全身性エリトマトーデス(SLE )、強皮症、皮膚・多発筋炎、結節性多発動脈炎、リウマチ熱など、多くの種類があります。一人の人にこれらの病気の二つ以上が重なって(重複して)起こった場合を重複症候群といいます。すべての膠原病の組み合わせが考えられますが、 関節リウマチSLE、関節リウマチと 強皮症、強皮症と 多発筋炎、SLE と多発筋炎などの二つの組み合わせによる重複症候群が多く認められます。一つ一つの膠原病にはおのおのの診断基準がありますが、二つの診断基準に合うもの、一方しか合わないもの、あるいは両方とも基準に合わないもの、以上の3種類の重複症候群が存在します。厚生省の特定疾患に認定されている 混合性結合組織病 (MCTD) はSLE、 強皮症、多発筋炎の二つ以上の重なりが認められる病気ですが、これも今日では重複症候群の一病型に入れられています。

2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?(疫学・頻度)
膠原病の多くは厚生省の研究班が疫学調査を行って推定患者数が明らかにされていますが、重複症候群の疫学調査はいまだ十分に行われていないため患者数は明らかではありません。おそらくSLE、関節リウマチ、皮膚・多発筋炎のおのおのの患者数の1% 以下の発現ではないかと考えられます。

3.この病気はどのような人に多いのですか?(男女比・発症年齢)
他の膠原病と同様に女性に多く認められます。発症年齢は30から50代です。

4.この病気の原因はわかっているのですか?(病因)
他の膠原病と同じように原因はまだわかっていません。SLE、関節リウマチ、強皮症、皮膚・多発筋炎などが膠原病という名で呼ばれているのは、からだの細胞を結び付けている結合組織の中の膠原線維に共通した異常(病変)が認められることに由来しています。
このような共通した異常があるために、時々二つの膠原病が一人の人に起こるのではないかと考えられています。

5.この病気は遺伝するのですか?(遺伝)
他の膠原病と同様に発病原因の一つに遺伝的素因があると考えられています。しかし重複症候群が子孫に次々と遺伝して発病したという報告はありません。

6.この病気ではどのような症状がおきますか?(症状)
二つ以上の膠原病が存在するわけですから、おのおのの膠原病の症状が起こります。たとえばSLEと関節リウマチが起こった場合、SLE の症状と関節リウマチの症状が出てきます。この場合最初から二つの膠原病が同時に起こる場合と、最初に一つの膠原病が起こり、遅れてもう一方の膠原病が起こってくる場合とがあります。検査成績も重なったおのおのの膠原病に特徴ある異常が出てきます。MCTDでは抗RNP抗体が陽性となりますが、強皮症と多発筋炎が重複した場合には抗Ku抗体(抗核抗体の一種)が陽性となります。

7.この病気にはどのような治療法がありますか?(治療)
重複した膠原病の種類によって異なりますが、副腎皮質ホルモン(ステロイド゙剤)が治療の中心となります。関節リウマチが重複している場合には抗リウマチ剤が用いられます。

8.この病気はどのような経過をたどるのですか?(予後)
重なった膠原病の組み合わせによって経過は異なります。SLE や筋炎の症状は多くの場合ステロイド゙剤が有効ですが、強皮症の症状は改善されにくい特徴があります。また重複した慢性関節リウマチに対しては抗リウマチ剤が有効です。

9.よく聞かれる質問とこたえ(FAQ)
Q1:二つ以上の膠原病があれば重症で予後も悪いのではないでしょうか?
A1:二つの膠原病が重なって起こればより重症というわけではありません。
ステロイド剤などによる十分な治療を行えば病状は改善します。また二つの重症な膠原病が重なることはむしろ少なく、軽症の重なりのほうが多く認められます。予後も一つ一つの膠原病と大差はないとされています。
Q2:重複症候群とMCTDとは異なる病気ですか?
A2:一時期重複症候群とMCTDとは異なった病気であると考えられていましたが、今日ではMCTDは重複症候群の一つに入れられています。
Q3:妊娠、出産は可能ですか?
A3:病状が安定していれば妊娠、出産は可能です。主治医と産科の先生に相談して下さい。また生まれた子供にこの病気がうつることはありません。


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