難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

特発性間質性肺炎/認定基準(公費負担)

特定疾患情報診断・治療指針

36.特発性間質性肺炎

1 主要項目
(1) 主要症状、理学所見及び検査所見

@ 主要症状および理学所見として,以下の1 を含む2 項目以上を満たす場合に陽性とする。
 1.捻髪音 (fine crackles)
 2.乾性咳嗽
 3.労作時呼吸困難
 4.ばち指
A 血清学的検査としては,1−4 の1 項目以上を満たす場合に陽性とする。
 1.KL-6 上昇
 2.SP-D 上昇
 3.SP-A 上昇
 4.LDH 上昇
B 呼吸機能1−3 の2 項目以上を満たす場合に陽性とする。
 1.拘束性障害(%VC<80%)
 2.拡散障害(%DLCO<80%)
 3.低酸素血症(以下のうち1 項目以上)
  ・安静時PaO2 : 80Torr 未満
  ・安静時AaDO2 : 20Torr 以上
  ・6分間歩行時SpO2: 90%以下
C 胸部X線画像所見としては,1 を含む2 項目以上を満たす場合に陽性とする。
 1.両側びまん性陰影
 2.中下肺野,外側優位
 3.肺野の縮小
D 病理診断を伴わないIPF の場合は,下記の胸部HRCT 画像所見のうち1 および2を必須要件とする。特発性肺線維症以外の特発性間質性肺炎に関しては,その病型により様々な画像所見を呈する。
 1.胸膜直下の陰影分布
 2.蜂巣肺
 3.牽引性気管支炎・細気管支拡張
 4.すりガラス陰影
 5.浸潤影(コンソリデーション)
(2) 以下の@−Cの各項は診断上の参考項目,あるいは重要性を示す。
@ 気管支肺胞洗浄(BAL)液の所見は各疾患毎に異なるので鑑別に有用であり,参考所見として考慮する。特発性肺線維症では正常肺のBAL 液細胞分画にほぼ等しいことが多く,肺胞マクロファージが主体であるが,好中球,好酸球の増加している症例では予後不良である。リンパ球が20%以上増多している場合は,特発性肺線維症以外の間質性肺炎,または他疾患による肺病変の可能性を示唆し,治療反応性が期待される。
A 経気管支肺生検(TBLB)は特発性間質性肺炎を病理組織学的に確定診断する手段ではなく,参考所見ないし鑑別診断(癌,肉芽腫など)において意義がある。
B 外科的肺生検(胸腔鏡下肺生検,開胸肺生検)は,特発性肺線維症以外の特発性間質性肺炎の診断にとって必須であり臨床像,画像所見と総合的に判断することが必要である。
C これらの診断基準を満たす場合でも,例えば膠原病等,後になって原因が明らかになる場合がある。これらはその時点で特発性間質性肺炎から除外する。
(3) 鑑別診断  膠原病や薬剤誘起性,環境,職業性など原因の明らかな間質性肺炎や,他のびまん性肺陰影を呈する疾患を除外する。 (4) 特発性肺線維症(IPF)の診断 (2)の@−Dに関して,下記の条件を満たす確実,およびほぼ確実な症例をIPF と診断する。
@ 確  実:(2)の@−Dの全項目を満たすもの。あるいは外科的肺生検病理組織診断がUIP であるもの。
A ほぼ確実:(2)の@−DのうちDを含む3 項目以上を満たすもの。
B 疑  い:(2)のDを含む2 項目しか満たさないもの。
C 特発性肺線維症以外の特発性間質性肺炎,または他疾患
:(2)のDを満たさないもの。
(5) 特発性肺線維症以外の特発性間質性肺炎の診断
 外科的肺生検(胸腔鏡下肺生検または開胸肺生検)により病理組織学的に診断され,臨床所見,画像所見,BAL 液所見等と矛盾しない症例。
 特発性肺線維症以外の特発性間質性肺炎としては下記の疾患が含まれる。
 NSIP(非特異性間質性肺炎),AIP(急性間質性肺炎),COP(特発性器質化肺炎),DIP(剥離性間質性肺炎),RB-ILD(呼吸細気管支炎関連間質性肺炎),リンパ球性間質性肺炎(LIP)
(6) 重症度判定
 特発性肺線維症の場合は下記の重症度分類判定表(表1)に従い判定する。安静時動脈血酸素分圧が80Torr 以上をT度,70Torr 以上80Torr 未満をU度,60Torr 以上70Torr 未満をV度,60Torr 未満をIV 度とする。重症度U度以上で6 分間歩行時SpO2が90%未満となる場合は,重症度を1 段階高くする。ただし,安静時動脈血酸素分圧が70Torr 未満の時には,6 分間歩行時SpO2 は必ずしも測定する必要はない。

2 参考事項
(1) 特発性間質性肺炎(IIPs)は,びまん性肺疾患のうち特発性肺線維症(IPF)を始めとする原因不明の間質性肺炎の総称であり,本来その分類ならびに診断は病理組織診断に基づいている。しかし,臨床現場においては診断に十分な情報を与える外科的肺生検の施行はしばしば困難である。そのため,高齢者(おもに50 歳以上)に多い特発性肺線維症に対しては,高分解能CT(HRCT)による明らかな蜂巣肺が確認できる場合,病理組織学的検索なしに診断してよい。それ以外の特発性間質性肺炎が疑われる場合には,外科的肺生検に基づく病理組織学的診断を必要とする。
(2) 略語説明(表2)

3 特定疾患治療研究事業の対象範囲
 診断基準により特発性間質性肺炎と診断された者のうち,重症度分類のV,W度の者を対象とする。


表1:重症度分類判定表
新重症度分類 安静時動脈血酸素分圧 6分間歩行時SpO2
T 80Torr 以上
U 70Torr 以上80Torr 未満 90%未満の場合はVにする
V 60Torr 以上70Torr 未満 90%未満の場合はWにする
(危険な場合は測定不要)
W 60Torr 未満 測定不要

表2:略語説明
英語略称 英語表記 日本語表記 解説
IIPS Idiopathic interstitial pneumonias 特発性間質性肺炎 原因不明の間質性
肺炎の総称
IPF Idiopathic pulmonary fibrosis 特発性肺線維症 臨床診断名
UIP Usual interstitial pneumonia 通常型間質性肺炎 IPF に見られる病理組織診断名
NSIP Non-specific interstitial pneumonia 非特異性間質性肺炎 臨床・病理組織診断名
COP Cryptogenic organizing pneumonia 特発性器質化肺炎 臨床診断名
OP Organizing pneumonia 器質化肺炎 病理組織診断名
DIP Desquamative interstitial pneumonia 剥離性間質性肺炎 臨床・病理組織診断名
RB-ILD Respiratory bronchiolitis-associated interstitial lung disease 呼吸細気管支炎関連性間質性肺炎 臨床・病理組織診断名
LIP Lymphocytic interstitial pneumonia リンパ球性間質性肺炎 臨床・病理組織診断名
AIP Acute interstitial pneumonia 急性間質性肺炎 臨床診断名
DAD Diffuse alveolar damage びまん性肺胞傷害 AIP に見られる肺病理組織診断名


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