難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

原発性胆汁性肝硬変(PBC)/診断・治療指針(公費負担)

特定疾患情報認定基準

■概念
原発性胆汁性肝硬変 (primary biliary cirrhosis:PBC) の名称は、Ahrensらにより初めて記載された(1950)。

PBCは、中等大の小葉間胆管あるいは隔壁胆管の慢性非化膿性破壊性胆管炎 (chronic non-suppurative destructive cholangitis:CNSDC) により慢性肝内胆汁うっ滞をきたし、最終的には肝硬変に至る疾患である。皮膚掻痒感、黄疸、食道静脈瘤、腹水、肝性脳症など肝障害に基づく自他覚症状を有する症候性(symptomatic) PBC(s-PBC) と、これらの症状を欠く無症候性 (asymptomatic)PBC (a-PBC) に分類される。

■疫学
本邦におけるPBCの推定年間発生数は約500人で、特定疾患医療受給者証所持者数から推定される本邦での患者数は約50,000人である。ヨーロッパ諸国の有病率は本邦の3ないし4倍である。本症は中年以降の女性に好発する。男性の割合は全症例の10%前後で、診断時年齢は50歳代が最も多い。

■病因
自己免疫性機序が考えられている。免疫複合体あるいは胆管細胞表面抗原に感作された細胞障害性Tリンパ球による胆管障害が想定されているが明らかではない。

自己免疫の関与を裏付ける根拠としては、血中自己抗体である抗ミトコンドリア抗体(AMA)・抗pyruvate dehydrogenase(PDH)抗体が高頻度に陽性で、高力価を示すこと、他の自己免疫性疾患(シェーグレン症候群・慢性関節リウマチ・慢性甲状腺炎)を合併することなどがあげられる。

■症状
(1)初発症状
a-PBCではPBCの診断基準に合致するにもかかわらず自他覚症状を欠いており、a-PBCのまま数年以上経過する場合がある。

s-PBCにおける初発症状は皮膚掻痒感が最も多く、ついで黄疸である。これら症状が認められず、腹水、食道胃静脈瘤、肝性脳症などの門脈圧亢進症症状が先行する場合がある。

(2)合併症による症状
高脂血症が持続する場合の皮膚黄色腫、脂溶性ビタミン欠乏による骨粗鬆症、合併する他自己免疫疾患に基づく諸症状などがみられる。

(3)末期における症状
腹水・食道胃静脈瘤破裂などによる消化管出血・肝性脳症の出現など肝不全による症状は、他の原因による肝硬変と大きな差異はみられない。これらの症状が前硬変期に出現することがあるため注意を要する。

(4)肝癌の合併
合併率は0.7%(男性1.6%、女性0.6%)、肝癌の診断時年齢は男性で約70歳、女性で64歳と、PBC自体の診断時年齢より10歳以上高齢であった。

■治療
進行したs-PBC症例を除けば、ウルソデオキシコール酸 (ursodeoxycholic acid:UDCA)を第1選択とする。UDCAで正常化しない場合ベザフィブラートの併用が有効である場合がある。なお掻痒感を訴える場合は、コレスチラミド顆粒の投与を試みる。脂溶性ビタミンA・D・E・K欠乏予防のため、適時補充療法を行う。肝硬変非代償期・肝不全に至った場合は一般的肝硬変に対する治療に準ずる。

予後不良の転帰が予測される症例については、肝移植の可能性について検討する。

進行性のa-PBCを区別するマーカーがないため、全例で生化学検査の正常化を目標に治療を行うことを基本とする。

■予後
PBCの主な死因は肝不全(30%)である。消化管出血は近年数%にまで減少している。5年生存率はa-PBC97.5%、s-PBC77.6%、10年生存率はそれぞれ92.1%、65.8%と、診断時臨床的病期により予後は異なる(全国調査第26報 平成18年度)。また、皮膚掻痒感や黄疸がなくとも腹水・食道胃静脈瘤破裂、肝性脳症の出現などを有する症例(従来はa-PBCに分類されたが、現在はs-PBCとして特定疾患治療研究事業の対象)では、5年、10年生存率はそれぞれ89%、69%であった(全国調査第25報 平成16年度)。

また診断時a-PBCであった症例のうち30%が約15年でs1-PBCに、18%は約18年でs2−PBCに移行した。1989年までの既登録例の検討での移行期間はそれぞれ7年、7年で、明らかに延長していた。(全国調査第22報 平成13年度)。

短期予後予測にはMayo Risk Scoreが用いられる。


難治性の肝疾患に関する調査研究班から
研究成果(pdf 26KB)
この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。

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