難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

骨髄線維症/特定疾患情報

診断・治療指針

1. 骨髄線維症とは
 骨髄線維症とは、骨髄の広い範囲に線維化がみられ、骨髄穿刺で骨髄液が採取できないのが特徴です。骨髄線維症は、原発性と2次性に分けられます。このうち、原発性骨髄線維症とは、多能性造血幹細胞の腫瘍性増殖により、骨髄の広汎な線維化と脾腫を伴う疾患で、慢性骨髄増殖性疾患のひとつに位置づけられています。二次性骨髄線維症は、他の疾患に伴っておこる骨髄の線維化で、造血系腫瘍(白血病や悪性リンパ腫など)や結核などの炎症性疾患、膠原病および骨疾患などでみられます。以下、原発性慢性骨髄線維症について述べます。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
 平成10年度の調査では全国で660人(95%信頼区間570〜750人)と報告されています。

3. この病気はどのような人に多いのですか
 男/女比は1.64/1で、小児にもみられますが、最も多いのは60歳代です。

4. この病気の原因はわかっているのですか
 造血幹細胞に遺伝子変異が生じ、その結果血液細胞が増殖することが原因と考えられています。約40%の患者さんでは、Jak2という遺伝子に異常が生じています。骨髄の線維化をきたす理由は、骨髄で増殖している血小板の母細胞である巨核球から線維芽細胞増殖を促す因子が産生放出されるためです。

5. この病気は遺伝するのですか
 一般的には遺伝性疾患とは考えられていません。しかし、ごくまれに家族性発症がみられています。

6. この病気ではどのような症状がおきますか
 原発性慢性骨髄線維症では、発症して3−5年は無症状で、徐々に脾臓や肝臓が腫れるため腹部膨満感、圧迫感、食思不振、体重減少、微熱、盗汗、皮膚掻痒および痛風などがみられ、さらに貧血の症状(倦怠感、疲労感、立ち眩みなど)が出現します。ときに脾臓に梗塞ができると激しい左上腹部痛がおきます。血小板減少がすすむと皮膚粘膜の紫斑など、出血傾向もみられてきます。

7. この病気にはどのような治療法がありますか
 自覚症状や貧血が軽度のときは、無治療で経過をみます。脾腫のための圧迫感や痛みがあれば、摘脾や脾への放射線治療なども考慮されます。貧血や血小板減少が著明になれば、それぞれの成分輸血も必要です。

 薬物療法としては、蛋白同化ホルモンや抗腫瘍剤であるメルファラン、サリドマイドなどの有効性が報告されています。一部の患者さんでは、これらの薬物療法により貧血や血小板減少に効果が認められていますが、一般的な治療法ではなく、専門医の診療が必要です。また、薬物療法によって「生命の予後が改善されるかどうか」に関しては、わかっていません。

 現時点で唯一、治癒をもたらしうる治療法は、同種造血幹細胞移植です。しかし、移植関連死亡率も高く、その適応については、専門医との十分な相談が必要です。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか
 原発性慢性骨髄線維症の診断がついてからの平均寿命は約10年です。しかし、個人差が大きく、中には無症状のまま経過される方もおられます。貧血、血小板減少、白血球減少あるいは増加、幼弱な白血球(芽球)の増加などが予後不良因子となります。また、何らかの自覚症状があること、女性より男性、高年齢なども予後不良因子となります。約10%が白血病に移行しますが、この場合は治療が極めて難しく、やはり予後不良です。肺炎などの感染症、出血、白血病化、食道静脈瘤破裂なども死亡の原因となります。


情報提供者
研究班名 血液系疾患調査研究班(特発性造血障害)
情報見直し日 平成20年5月2日

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