機動戦艦ミネルバ/第三章 狼達の挽歌

 XI 撃沈  ミネルバ艦首の三連装135mm速射砲が火を噴いた。  砲口から飛び出したAPFSDS弾は、加速ブースターとも言うべき離脱装弾筒を 切り離して、後尾翼のついたペンシル状の弾丸となって敵艦を襲う。  砲口初速は2100m/s(7560km/h)とハープーンの巡航速度(970km/h)とは桁違いの 速度であり、しかも電波を出さず推進用の熱源もないために、着弾時の終速値がかな り低下していたとしても、これをミサイルで迎撃するのは至難の業である。  余談だが、かつては大砲の砲身には砲弾を回転させ安定感を与えるための旋条砲身 というもの使われていたが、最近のAPFSDS徹甲弾のように、その直径と長さの 比が大きい(L/D比が6以上)弾種は、旋動させる方が飛翔中の安定性が悪くなること が判った。そのため旋条のない滑腔砲身が使用され、弾丸の安定には翼が付くように なった。なおラインメタル対戦車榴弾なども滑腔砲身用である。  APFSDS徹甲弾はザンジバルの後部エンジンに見事着弾して炎上させた。  炸薬がないとはいえ、凄まじい運動エネルギーの放出によって、衝撃波が生じ付近 一帯をことごとく破壊する。  ザンジバル艦橋。  大きな衝撃を受けてよろめく乗員達。 「後部エンジンに被弾しました!」  オペレーターが金きり声で叫ぶ。 「エンジン出力低下! 機動レベルを確保できません!!」  火炎を上げながらゆっくりと降下するザンジバル戦艦。  艦内では、消火班や応急処理班が駈けずり回って、何とか艦を立て直そうと必至に なっている。  やがて海上に着水し、加熱したエンジンに大量の海水が流入して、水蒸気爆発を起 こして火柱が上がった。  艦橋に伝令が駆け寄ってきて報告を伝えた。 「艦長! 至る所から浸水が始まっています。艦を救える見込みはありません!」 「判っている。副長、総員を退艦させろ!」 「了解、総員を退艦させます」 「通信士。艦隊司令部に打電だ。『我、撃沈される。速やかなる救助を願う』艦の位 置も報告しろ」 「了解!」  総員退艦の指令を受けて、艦の至るところで退艦の準備が始められた。  救命ボートや救命艇が海上に降ろされて、次々と兵員が乗り込んでいく。  艦橋からそれらの様子を眺めている艦長。 「だめだ! 敵艦は、エンジンから武装、その他すべてにおいて大気圏内戦闘のため に特殊開発された特装艦だ。宇宙戦艦一隻が太刀打ちできる相手ではない」  ミネルバ艦橋。 「敵艦、海上に着水。撃沈です」  一斉に歓声が上がる。 「スチームの射出を停止。当艦はこのままカサンドラ訓練所のあるバルモアール基地 へ向かう。全速前進!」 「了解。進路バルモアール基地、全速前進します」 第三章 了
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