機動戦艦ミネルバ 第一章

V 機動戦艦ミネルバ  ケースン研究所内にある造船工場。  機動戦艦ミネルバが係留され、発進の刻を待っていた。  そのミネルバ艦橋。  副長のリチャード・ベンソン中尉は苛立ちを隠せない表情であった。 「艦長からの連絡は?」 「ジャミングがひどくて通信困難」 「シャトル搭載の通信機の出力は小さいからな」 「上空軌道を探査衛星が通過します」 「やばいな……」 「探査信号、艦体を透過」 「上空軌道の艦隊。軌道爆雷投下ポイントに移動開始」 「見つかったな」 「投下ポイント到達まで二分三十五秒」 「仕方がない。艦長はいないが……発進準備にかかれ」 「ちょっと待ってください。三時の方向より味方信号接近中です」 「スコット・リンドバーグのシャトルです。着艦許可を申請しています」 「艦長はおられるのか?」 「はい。おられるそうです」 「わかった。メインゲートへ誘導してやれ」 「了解!」 「リンドバーグ機、着艦を許可する。メインゲートより進入せよ」 『了解。メインゲートより進入する』  メインゲートには、艦橋へ直行できる高速エレベーターがある。  メインゲートに滑り込んでくるシャトル。  ただちにタラップがかけられて、フランソワが降りて来る。  艦内放送が告げている。 『敵艦隊、機動爆雷投下ポイントまで三十秒』 「ご覧のとおりです。ただちに艦橋へ」 「艦橋は?」 「艦長。こちらです」  高速エレベーターの前に案内されるフランソワ。  艦橋。  エレベーターの扉が開いてフランソワが姿を現した。 「艦長!」  一斉に振り向き、敬礼をする艦橋勤務の士官達。 「敵艦隊、投下ポイントに到達」 「時間がありません。発進準備は?」 「完了しています」 「では、ただちに発進してください。ヒペリオンの各要員は配置について」 「すでに配置を完了しています。ミネルバ発進します」  ヒペリオンは、その主要構造はレールガン(電磁飛翔体加速装置)であり、電位差 のある二本の伝導体製のレール間に、電流を通す伝導体を弾体として挿み、この弾体 上の電流とレールの電流に発生する磁場の相互作用(ローレンツ力)によって、弾体 を加速・発射する物でハイパーベロシティガンともいう。この際、伝導体は流す電流 の量によっては、電気抵抗により蒸発・プラズマ化してしまう事もあるが、プラズマ であっても伝導体として機能しローレンツ力が働くため、弾体自身は電流を全く通さ ない樹脂などの非伝導体で作り、弾体後部に導体を貼り付ける様式が一般的となって いる。理論上では、レールガンが打ち出す弾体の最大速度に限界はない。相対論的制 約で光速度が上限となるのみである。発射速度は入力した電流の量に正比例するため、 任意の発射速度を得るために、任意の電流を入力してやればよいだけであるが、実際 は摩擦や損失が生じるために理論通りにはいかない。  概ね、ローレンツ力と各種の摩擦や損失がつりあう速度が最大速度となる。  現実問題としてはヒペリオンにおける初速19.2km/s が現時点での最大射出速度の記録と なっている。  さらにヒペリオンの場合は、CIWS(近接防御武器システム)の一環として改良 が加えられ、毎分2,000発もの連続発射が可能となっている。  砲弾には炸薬も推進剤もないために誘爆の危険もなく大量安価に搭載できるために、 弾切れを起こすことはほとんどない。もちろん開発者はフリード・ケイスン科学技術 士官であることは言うまでもないだろう。
     
↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v

小説・詩ランキング

11