純愛・郁よ

(三)ディズニーランド  ディズニーランドに着く。  やはりこういうところは、子供か若い女性連れでないと、なかなか来れるものじゃ ない。どこを見回しても子供連れか若いカップルだ。  郁のはしゃぎようと言ったら、とても主婦歴五年とは思えないほどのものだった。  当然だ。高校卒業とほとんど同時に俺と暮らすようになっていたからだ。大学にも 行ってないし、仕事にも就いていない専業主婦だ。精神年齢は高校卒業の頃のまま成 長したって感じだな。 「武司、武司、早く。今度はあれに乗ろうよ」  と、指差したのはウエスタンランドにある、鉱山列車で猛スピードで駆け降りる何 とかマウンテンコースターとかいうやつだ。名前なんか気にしていないから覚えても いない。 「大丈夫か? ちびったりしないだろうな」  ジェットコースターなどのいわゆる絶叫マシンと呼ばれるスリル満点の乗り物は、 尿道が短く前立腺のような弁組織を持たない女性は、興奮と緊張のあまり失禁してし まうこともあるそうだ。そのためこういう施設の近くにはショーツを売っている売店 が大概あるものだ。しかし夢の国のディズニーランドだからないかも知れない。一応 コースターのそばに六つショップがあるから、探してみてくれ。あ、一つは写真館だ ったね、郁と二人でウエスタンスタイルのコスチューム着て写真撮ったんだ。  郁の身体は俺とは違う。だから確認したのだが……。 「もう恥ずかしいこと言わないでよ。さあ、乗りましょう」  俺の手を引っ張って、コースター乗り場へ向かう。  それから何やらかんやら、最新施設の「バズ・ライトイヤーのアストロブラスター」 や古参の「ホーンテッドマンション」やら「カリブの海賊」やらのアトラクションに 参加したり、いろんな乗り物に乗って、時間がいくらあっても足りないほどの楽しい 充実した時間を過ごした。  やがて日が落ちてきた。  これで最後と、ワールドバザールの、リフレッシュメントコーナーの屋外席に座り、 ホットドックとドリンクを飲みながら、夜景を楽しむ事にする。本当は大観覧車みた いな高所へ昇りつつ、室内で軽食を取れる遊戯施設があれば、夜景の展望も素晴らし いと思うのだが……。 「夜景が奇麗だね」  俺の肩に頭をもたれかけてうっとりした表情で囁くように言った。 「ああ……」 「楽しかったね。また来ようね」 「そうだな」
     
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