第一章
Ⅵ 公王死す  惑星サンジェルマン。  地上を歩く人々がいる。 「あれは何だ!」  誰かが空を指さして叫ぶ。 「なんだ、なんだ!」  と他の者も空を仰ぐ。  雲以外何もなかった空に、突如眩い輝きが広がり、恒星が一つ増えたような明るさ だった。  そして十分ほどで輝きは弱まり、平常の空に戻った。  それらの異変はハルバート侯爵のもとに伝えられた。 「ケンタウロス帝国艦隊が迫っていると警告されていたが、関係あるのか?」 「公王さまがアムレス号で蹴散らしてくださったとか?」 「それはありうるが、おかしくないか?」 「なにがですか?」 「爆発は一回きりだった。いくらアムレス号でもまとめて敵艦隊を撃沈させることは できないだろう」 「つまり一隻ずつ段発的に爆発すると?」 「当然だろうが」 「確かアムレス号には自爆装置があると聞きましたが」 「自爆だと! まさか公王さまが自分の命を顧みずケンタウロス帝国艦隊を殲滅させ たというのか?」 「たぶん……」  驚愕するハルバート侯爵。  そこへ一人の臣下がカプセル状のものを携えて入室した。 「大変です、侯爵様」 「どうしたのだ?」  つい先ほど、アムレス号からの通信カプセルが届きました。 「通信カプセルだと? 再生できるか?」 「はい。ただいま」  通信カプセルを端末にセットする臣下。  やがて正面スクリーンにアレックスの映像が映し出された。 「公王!」  一同が驚いている。 『公王である。このカプセルを手にしている時分には、私はこの世にいないだろう。 自分の命及びアムレス号と引き換えに、ケンタウロス帝国艦隊を殲滅する。遺言とし て我が息子エドワードに公爵位と公王の地位を相続させる。公国に栄光あれ!』  通信内容が途切れた。  緊急通信のために手短に重要事項だけ記録したのだろう。 「公王は、公国を守るために自ら犠牲になったのか?」  三日後、エドワード率いる艦隊が戻ってきた。  正面スクリーンには惑星サンジェルマンが映し出されていた。 「帝国艦隊は? 探査しろ!」 「了解。探査します」  電探手のキャスリン・ウォード少佐が応える。 「見たところ、帝国艦隊の姿が見えませんが、すでに占領されたのでしょうか?」  マーティン・ウォーズリー少将が尋ねる。 「そうだとしても、守備や迎撃のための部隊ぐらいは待機してるだろう」  言われて口ごもる少将だった。 「陛下! 王宮のハルバート侯爵から通信が入っています」  通信士のジュリアナ・ワイズ少佐が報告する。 「繋いでくれ」  通信用パネルに侯爵の姿が映し出された。 『エドワード、悲しい報告をしなければならない』 「何事ですか?」 『公王がアムレス号と共に、帝国艦隊を巻き込んで戦死なされた』 「戦死ですと? 父上が亡くなられたということですか、何があったのですか?」 『通信で話す内容ではない。とにかくこちらに来てくれ、詳しく話す』 「分かりました。そちらに行きましょう」
     
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