第二章
Ⅴ 魚雷発射!
アレックス達の訓練艦。
衛星ロナンの軌道に入っていた。
「敵艦の位置は?」
アレックスが確認する。
「後方約十五万キロ、時間差にして十二分です」
十分のハンデを貰ったのだから、時間差で十分となるのは当然だが……。
若干遅れているのは、アレックス達の艦の速度がすでに第三宇宙速度に達している
のに対して、彼らの艦はまだ加速中だからである。
「敵艦との相対位置で、衛星の裏側に入ります。減速しつつ衛星軌道に入ります」
操舵手のマイケル・オヴェットが報告する。
「よろしい。そのまま進行」
衛星軌道に入る訓練艦の視界から敵艦の艦影が消えうせた。
「敵艦消失、衛星の裏側に入りました」
と、電探手のジミー・フェネリー。
「敵艦が衛星軌道に入る時間は?」
「十分後です。我々とは反対方向から軌道進入するもようです。会敵予想十三分
後!」
「よし、戦闘配備につけ!」
「了解!」
各自が緊張して装備をチェックした。
「戦闘準備完了!」
最後の一人の報告を確認して、
「そのまま待機」
ゆっくりと衛星軌道を進行するアレックス艦。
「まもなく会敵します」
ジミーの声に呼応して下令するアレックス。
「減速してさらに低軌道へと移動する。魚雷一号から四号まで装填!」
「魚雷装填します」
「魚雷一号二号、照準仰角十二度、雷速三分の一に設定」
「魚雷設定完了しました」
息を飲む瞬間であった。
「敵艦発見! 高度4000キロ、速度6.8km/秒」
ジミーが叫ぶ。
「魚雷照準補正、仰角ブラス3度」
「仰角ブラス3度! 合わせました!」
「魚雷一号二号発射!」
号令に従って魚雷発射ボタンを押すブルーノ。
「一号二号、発射!」
発射される魚雷二発は、一直線に敵艦へと直進してゆく。
「加速して中軌道へ移動する。その後転回して正面から攻撃だ」
「了解。エンジン一杯、加速します」
機関士のフレッド・ハミルトンがエンジン出力を上げる。
惑星軌道上、高軌道をデイミアン艦が進み、低軌道を反対方向に進んでいるアレッ
クス艦。
やがて上下ですれ違いつつ転回する双方の艦。
「魚雷、外れたもようです」
敵艦は減速しておらず、高速で転回移動していた。
「想定内だ。三号四号発射用意!」
冷静に次の行動に移るアレックス。
「了解。発射準備、完了!」
すかさず反射準備を終えるブルーノ。
「敵艦の位置は?」
「正面、二時の方角、仰角十二度です」
ジミーが答える。
「艦首回せ!」
「了解。面舵六十度、上ゲ舵十二度!」
マイケルが操舵して敵艦に艦首を向ける。
「軸線合いました。敵艦正面!」
正面には、艦底を曝け出して無防備に進む敵艦。
「魚雷、発射!」
敵艦に向かって一直線に突き進む魚雷。