第五章
Ⅲ ワープゲート 『お客様各位にお伝え致します。まもなく一回目のワープに入ります。ご自身の お席にお戻りになり、シートベルトをしてお待ちください』  船内放送があって、乗客がゾロゾロと移動を始めた。 「私達も、席に戻りましょう」  ルイーザに促されて、席に戻るために展望ルームへと向かう少年達。 「僕、船でのワープの経験ないんですよね。どんな感じなのですか?」  ゲーム好きのエヴァン・ケインが質問する。 「ワープに突入する時に少し震動があるけど、後は普通に船に乗った時と同じで すよ」  ルイーザが解説する。  彼女とて、船自体が有するワープ機能での経験はあるが、ワープゲートによる 長大距離ワープの経験はなかった。  それでも、全くワープ経験のない者よりは安心感を持っていた。 「さあ、席に戻りましょう」  他の乗客の後を追って自席へと歩き出す少年達だった。 『まもなくワープに入ります。ワープ五分前、シートベルトの再確認をお願いし ます』  緊張で手が震えながらも、座席のシートベルトを締める少年達。 『ワープ三分前です』  着々とワープ態勢が進む旅客船。 『ワープ一分前です』  そして、カウントダウンが始まった。 『十秒前、九、八……三、二、一。ワープします』  一瞬機体がガクンと揺れ照明も落ちたが、すぐに元通りに戻った。  数分後。 『お客様にお伝えします。本機は無事にワープゾーンに進入しました。目的地到 着ワープアウトは、およそ六時間後になります。それまで席を離れて船内を移動 しても構いません。ごゆっくりと船旅をお楽しみください』  シートベルトを外して席を立つ乗客達。  各自それぞれ、船内の施設であるカフェバーやシアター、カジノ、遊技場など へと移動を始めた。 「遊技場へ行かないか?」  旅客船のパンフレットを眺めていた、ゲーム好きのエヴァン・ケインが誘った。 「いいね。そうしよう」  乗り物好きのマイケル・オヴェットが賛同した。  それから座席に戻るまでの数時間ほど遊技場で興じる少年達だった。 『お客様にお伝えします。まもなくワープアウト態勢に入りますので、お席にお 戻りになり、シートベルトをして待機してください』  船内放送に従って、自分の席に戻る少年達。 「目的地のトラピストについたのかな?」  機械好きのフレッド・ハミルトンが尋ねると、 「まだよ。一度で目的地に飛べるワープゲートはないから、幾つかの都市にある ゲートを経由してゆくのが普通よ。経由地の一つであるゲートウェイ拠点都市の コリダロスに到着したのよ。まだまだ道行半ばというところ」 「そうなんだ……」  三十分後に旅客船は、コリダロスに到着して、四十八時間ほど停泊することに なっていた。ワープゲートの点検と燃料供給に必要な時間でもある。  コリダロスは、ゲートウェイ拠点都市であると同時に、有数の観光都市惑星で もあった。  旅客船から降り立ち、ひと時の惑星観光へと向かう乗客達。  その中に混じって少年達もいた。
     
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