第十章 反乱
Ⅲ  ゴードン・オニール率いるアルサフリエニ方面軍が反旗を上げたことは、アルデ ラーンにいるアレックスの耳にも届いた。  あまりの衝撃に言葉を失うアレックスだったが、その背景を調べるように通達し た。  やがて、タルシエン要塞から驚きの報告が帰ってきた。  皇太子即位の儀の後に行われた記者会見のTV放映が、タルシエン要塞及びそこ を中継するアルサフリエニ方面では、本放送と生中継放送とではまるで違っていた のだ。  それが発覚したのは、念のためにアルデラーンで録画した本放送分をタルシエン 要塞に送ったことで、違いが判明したのだ。  アルデラーンでの本放送では、共和国同盟の処遇に関しては、兼ねてよりの意思 として、以前の体制に復帰させることで念押ししたはずだった。しかし、中継放送 では帝国に併合させると改変させられたことが判明したのだ。  おそらくタルシエン要塞側の中継設備にハッカーが侵入して、本放送とは違う別 の録画映像を流したのであろう。 「やられたな……」  ハッカーの犯人は分かっている。  闇の帝王と称される、ジュビロ・カービン以外にはいない。 「久しぶりに聞きましたね。その名前」 「おそらく今日あることを予期して、要塞奪還後のシステム構築の時に、侵入経路 の裏口を作っておいたのだな」 「要塞コンピュータの設定に関わらせたのが仇になりましたね」 「分かってはいたのだが、一刻も早いシステム復興が必要だったのだ」  それは、要塞を落とせば当然再奪取に艦隊を派遣してくるだろうからである。 「ハッカーという奴は、武器商人と同じだよ。どちらか一方にだけ加担するのでは なく、不利になった側について戦況を盛り上げ、永遠の膠着状態にさせるのが本望 なのだ。双方が疲弊してゆくのを、高見の見物しながら、裏舞台で高笑いする」 「いかがなされますか?」 「そうだな。バーナード星系連邦に最も近いアルサフリエニ方面を放っておくわけ にはいかないだろう」  内憂外患状態にある事を、連邦に悟られるわけにはいかない。  速やかに鎮圧部隊を派遣しなければならなかった。 「しかし、今の状態では要塞駐留艦隊を動かすわけにはいきませんね」 「私が行く!」  共和国同盟の士官としてなら、いつどこへ行こうが構わないだろうが、銀河帝国 皇太子たるアレックスが、アルサフリエニ方面に進軍するとした時、マーガレット 皇女などは大反対した。  が、皇太子の意思に逆らうわけにはいかない。 「私も同行致します!」  マーガレットが配下の皇女艦隊を引き連れて、護衛に同行すると許可を求めた。  ジュリエッタも参加することを公言した。  こうして、皇太子即位の興奮も冷めやらぬ間に、アルデラーンからタルシエン要 塞への行幸となったのである。  アルデラーンからトランターまでは、それぞれのワープゲートを調整すれば使え るが。  ジュビロ・カービンが敵側に着いたと想定される現在、タルシエン要塞にある ワープゲートは、万が一を考えて使うことができない。  トランターからは、艦隊の足を使って行くしかない。
     
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