陰陽退魔士・逢坂蘭子/蘇我入鹿の怨霊

其の拾壱 飛鳥寺にて  飛鳥の代表的なお寺の一つが飛鳥寺である。  ここは596年蘇我馬子が発願して創建された日本最古のお寺で、寺名を法興寺、元興 寺、飛鳥寺と変遷し、現在は安居院(あんごいん)と呼ばれている。奈良市にある元興 寺は平城遷都と共にこのお寺が移されたもの。  このお寺はひっそりと建っているが、近年の発掘調査では、東西200m、南北300m、 金堂と回廊がめぐらされた大寺院であったようです。現在の建物は江戸時代に再建した 講堂(元金堂)のみを残す。  又ここは大化の改新を起こした中大兄皇子と中臣鎌足が、有名な蹴鞠会で最初出会っ たと伝えられ、蘇我入鹿を天皇の前で暗殺して大化の改新となる。  〒634-0103 高市郡明日香村飛鳥682  近鉄橿原神宮駅下車→岡寺前行バス10分→飛鳥大仏下車  又は、近鉄橿原神宮駅下車 徒歩40分  拝観料大人300円  駐車場料金 普通車500円  飛鳥大仏は写真撮影可能 「着いたぞ、飛鳥寺だ」  駐車料金500円を払って、飛鳥寺に入場する二人。  併設の駐車場は有料であるが、7分歩いたところには県立万葉文化館無料駐車場(普 通車110台収容)もある。 「拝観料は300円ね」  飛鳥寺(安居院)の西門から西へ100m程度行ったところ、飛鳥川との間にある五 輪塔が蘇我入鹿の首塚といわれている。  高さ149cmの花崗岩製で、笠の形の火輪の部分が大きく、軒に厚みがあるのが特徴で ある。  田畑の真ん中にこじんまりと安置されていて、入鹿塚だと言われなければ気が付かな い。  主な観光ルートには入っておらず、蘇我入鹿に興味ある熱心な歴史探訪家くらいしか 訪れることはない。   蘇我入鹿首塚のストリートビュー  一通り首塚を調べる蘭子。 「その下に蘇我入鹿の首が埋葬されているのか?」 「伝承ではそういうことになっています」 「仮に埋葬されたとしても、後世のものによって掘り返されているだろうな」 「ありえますね」 「そろそろ飛鳥寺に戻りましょうか」 「うむ……」 飛鳥寺正門  正門の「飛鳥大佛」と刻印された石碑の前で、 「記念写真撮りましょうよ」  と、同意を求める蘭子。  記念写真となれば、立っている所がどこであるかが明確に特定できる場所が最適であ ろう。 「観光に来たのではなくて、捜査のために来たのだが……」 「いいから、いいから」  背を押して石碑の傍に立たせるようにして、自分も隣に寄り添う。 「すみませーん。シャッター押して頂けますかあ」  通りかかった観光客にスマートフォンを手渡してお願いする。 「いいですよ」  観光客も快く引き受けてくれる。 「あ、このボタンを押してください。シャッターが降りますから」  今時の若者にはスマートフォンの扱いなど朝飯前である。 「いいですか?撮りますよ」 「お願いしまーす」 「はい、チーズ」  と、ピースサインを出す蘭子。 「はい。撮れましたよ」  スマートフォンを返してくれる。 「ありがとうございました」 「どういたしまして」  旅は道連れ世は情け、見知らぬ他人とて助け合うことができるというものだ。  手を振って別れる観光客。 「次はどこへ行く?」 「蘇我入鹿が殺されたといわれる『飛鳥板蓋宮跡』に行ってみましょう」 「何かあるのかね?」 「いえ、何もありません」
     
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