メイドカフェレストラン物語〜キャッスルへようこそ!〜
 (1)朝食にて

 とある朝の倉本家での食事の風景。
 食卓を囲んで、母親、長女の仁美、そして主人公である里美が仲良く食事をとっている。
 つと、仁美が口を開いた。
「里美は、明日から冬休みだよな」
「うん」
 それに里美が答えると、さらに言葉をつなぐ。
「というわけで、レストランを手伝え」
 倉本家では、川越駅前の一角にてメイドカフェレストランを経営していた。
 父親がオーナー、母親が店長、そして長女がマネージャーという経営陣となっている。
 里美は高校受験を控えた中学三年生なので、レストランには関与していないのだが……。
「なんでそうなるの?」
 と聞き返すのは当然だろう。
「どうせ暇だろう」
「うちの学校はバイト禁止だよ」
「家業を手伝うのにバイトはないだろう。バイク免許取得禁止の高校だって、ラーメン屋とかすし屋とかの家業を手伝う生徒には、出前のために免許取得と乗車を許可しているぞ」
「そりゃそうだけど……。受験勉強しなきゃいけないし……」
 いまどきの風潮としては高校進学はほとんど義務教育化している。
 里美の生活は受験一色になっているので、レストランの手伝いなど頭になかった。
 しかし、それは無論承知の仁美は切り札を取り出した。
「手伝うならバイト料を出そう。家族でバイト料もないがな……。時給八百円でどうだ」
 それを聞いて里美の目の色が変わった。
 時給八百円!
 高校生だって、そうそうその金額を出してくれるバイト先などないはずだ。
 里美は身を乗り出した。
「やる!」
 高額なバイト料に、俄然張り切りだす里美だった。
 しかし……。
 この一言が、里美の人生を狂わせることになるとは……。
 知る由もなかった。
 さてさて、この先どうなるかは、次回以降のお楽しみ♪

 

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