【初稿版】学園小説/梓 後編
プールへ
とある遊園地のプールサイド。
その場内に開いているレストランのテーブル席でジュースを飲んでいる梓と絵利香。
この間、二人でショッピングした水着をそれぞれ着ている。
それを早く着てみたい為に、絵利香がプールに誘ったのである。
「梓ちゃん、それ似合ってるよ」
「ありがとう。絵利香ちゃんもね」
「うふふ……」
「ねえ、君達。二人きり?」
可愛い女の子がいれば、声をかけてくる軟派野郎はどこにでもいる。
「可愛いね、君達」
二人が困っていると、
「やあ、待たせたね」
そこには筋骨隆々とした武藤が立っていたのである。
「武藤先輩……」
「ちぇっ。男がいたのか」
といって退散する軟派野郎。
がっちりした体格の武藤に、食ってかかろうという男はいない。
「よかったね。たまたま俺達が居合わせてさ」
郷田が微笑んでいる。
「まったく。女の子のいるところ軟派ありですね。どうしようもない連中だ」
木田が、立ち去っていく軟派野郎の後ろ姿に軽蔑の表情で言った。そしてその視線
は郷田に移る。
「そういやあ、ここにも一人いたっけ」
「え? いや、僕は軟派ですけど、一応礼儀はわきまえているつもりです」
「そうかあ……」
他の部員の疑心暗鬼な表情。
「信じて下さいよお……梓ちゃんは、信じてくれますよね」
にっこり微笑んだだけで、答えない梓。
そして話題を変えるように、
「しかし、偶然ですね。同じプールに先輩方がいらっしゃるなんて」
「あれ? 俺達、絵利香ちゃんに誘われたんだよ。今日、プールに行くから、良かっ
たら来てくださいってね」
驚いて絵利香を見る。
「絵利香ちゃん。なんで黙ってたの」
「ごめんなさい。つい、言いそびれちゃった。だって、さっきみたいなことだってあ
るじゃない。殿方がいたほうが、安心だから」
「ところで、座っていいかい?」
立ったままで話している武藤が、紳士的に許しを請う。
「ああ、すみません。気がつきませんでした。どうぞ、構いませんよ」
「それじゃ、お邪魔して」
と腰掛ける武藤。他の部員達も椅子を持ちよって同じテーブルを囲んだ。
「ところで、キャプテンは来てないのですか?」
「はは、相も変らず出前持ちだよ」
寿司用の出前機を後ろにくっつけたバイクで、街中を走りまわっているその姿を想
像する梓。
「可哀想ですね」
「親孝行で有名なキャプテンだからね。ま、仕方がないよ」
「でも品行方正で、成績も学年で十番を下らないから、某有名私立大学への推薦入学
は間違いないそうですよ」
「へえ……キャプテンって、成績優秀なんだ」
「信じられないだろ。あの無骨で融通の利かない男がねって」
「うふふ」
まったくその通りと思ったが、口に出して言ったら失礼だろうと思い、含み笑いで
ごまかす梓。
「ところで、二人とも可愛い水着ですね。とっても似合っていますよ」
軟派な郷田だけに、女の子の着ているものを誉める事は忘れない。こういうことに
かけてはベテランの郷田、他の連中が口籠って言い出せない時でも、さらりと言って
のける。
「ありがとう」
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