難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

ライソゾーム病(ファブリー病)/診断・治療指針(公費負担)

認定基準特定疾患情報

■定義
Fabry病は,ライソゾーム加水分解酵素の1つであるα-galactosidase A(α-gal A)活性の遺伝的欠拐又は低下により生ずるX染色体劣性のスフインゴ糖脂質代謝異常症である。本症では,α-galA活性の欠損又は低下によIり血管の内皮細胞や平滑筋糸田胞を始め,全身の臓器,特に皮膚,眼,神経系,腎臓,心臓などの各種の細胞のライソゾームに本酵素の生体内基質であるスフインゴ糖脂質,特にceramidetrihexoside(CTH)が進行性に蓄積することにより様々な症状を呈する。

典型的Fabry病男性患者(ホモ接合体)では,α-gal A活性はほぼ完全欠損を示し,幼少時から四肢末端痛,被角血管腫,低汗症,角膜混濁などの症状が出現し,加齢とともに腎臓,脳,心臓の障害を生じて死亡する。ヘテロ接合体の女性では,2本ある]染色体の一方がlyonizationにより胎生期にランダムに不活化されるため,個々の細胞でのα-gal A活性は正常か欠損かのいずれかとなる。このため,ヘテロ接合体の女性のα-gal A活性は著明な低値を示すものから正常域のものにまで及び,臨床症状も無症状のものから重症のものまで様々である。

これに対し最近,典型的な症状を欠き,病変が心臓に限局している非典型的Fabry病として「心Fabry病」が報告されている。心Fabry病男性患者のα-gal A活性はわずかながらも残存しており,心筋細胞へのCTHの過剰蓄積により生じた左室肥大が主症状となっている。

■疫学
典型的Fabry病は稀であるとされているが,日本での頻度は不明である。白人男性では40,000人に1人と推定されているが,正確な頻度はやはり不明である。

一方,心Fabry病は鹿児島県では左室肥大を有する男性患者の約3%に存在するという報告がある。しかし,鹿児島県以外の日本全国及び世界における頻度は不明である。

■病因
Fabry病は,α-gal A遺伝子の異常に起因するα-gal A酵素活性の欠損又は低下により生ずる。

α-gal A遺伝子の全長は約12,000塩基対であり,7個のエクソンから構成されている。典型的Fabry病では,これまでに100を超える多様なミスセンス変異,ナンセンス変異,欠失,重複,スプライシング変異が報告されている。

心Fabry病では9種類(Ala20Pro,Glu66Gln,Ile92The,Phel13Leu,Asn215Ser,Gln279Glu,Met296Ile,Met296Val,Arg301Glu)のミスセンス変異が報告されている。更に,エクソン内及びイントロン-エクソン接合部に異常を認めないにもかかわらずメッセンジャーRNAの低下を認めた症例も報告されている。

■治療
Fabry病の病因は,α-gal A遺伝子異常により生ずるα-gal A酵素活性の欠損又は低下であるが,この酵素活性異常を改善させる根本的治療法は,現時点ではまだ確立されていない。このため,現在行われている治療は,基本的にすべて対症療法である。この対症療法については,「III.治療指針」の項で述べる。

現在,米国において遺伝子組み換え技術を用いて作られたα-gal A酵素蛋白を用いた酵素補充療法の臨床治験が行われている。更に,レトロウイルス又はアデノウイルスをベクターとして用いた遺伝子治療法の開発が試みられている。

■予後
臨床経過及び予後は,臨床病型と性により異なる。典型的Fabry病男性患者では,幼少時より四肢末端痛,被角血管腫,低汗症,角膜混濁などの症状を認め,徐々に進行して腎臓,脳,心臓の障害を生じ,30〜40歳代で死亡する。

これに対し心Fabry病男性患者では,通常40歳以降の中高年で発症する。心肥大を主症状とし進行性に増悪して,多くは60歳以降に心不全や不整脈により死亡する。

女性のFabry病患者では,病状は男性と比べ通常軽く,進行も比較的遅い。


特発性心筋症に関する調査研究班から
研究成果(pdf 88KB)
この疾患に関する調査研究の進捗状況につき、主任研究者よりご回答いただいたものを掲載いたします。

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