(1) 診断上,脳血管撮影は必須であり,少なくとも次の所見がある。
@ 頭蓋内内頸動脈終末部,前及び中大脳動脈近位部に狭窄又は閉塞がみられる。
A その付近に異常血管網が動脈相においてみられる。
B これらの所見が両側性にある。
(2) ただし,磁気共鳴画像(MRI)と磁気共鳴血管撮影(MRA)により脳血管撮影における診断基準に照らして,下記のすべての項目を満たしうる場合は通常の脳血管撮影は省いてもよい。「MRI・MRA による画像診断のための指針」(表)を参照のこと。
@ MRA で頭蓋内内頸動脈終末部,前及び中大脳動脈近位部に狭窄又は閉塞がみられる。
A MRA で大脳基底核部に異常血管網がみられる。
注: MRI 上,大脳基底核部に少なくとも一側で2 つ以上の明らかなflow void を認める場合,異常血管網と判定してよい。
B @とAの所見が両側性にある。
(3) モヤモヤ病は原因不明の疾患であり,下記の特別な基礎疾患に伴う類似の脳血管病変は除外する。
@動脈硬化 A自己免疫疾患 B髄膜炎
C脳腫瘍 Dダウン症候群 Eレックリングハウゼン病
F頭部外傷 G頭部放射線照射 Hその他
(4) 診断の参考となる病理学的所見
@ 内頸動脈終末部を中心とする動脈の内膜肥厚と,それによる内腔狭窄ないし閉塞が通常両側性に認められる。ときに肥厚内膜内に脂質沈着を伴うこともある。
A 前・中大脳動脈,後大脳動脈などウィリス動脈輪を構成する諸動脈に,しばしば内膜の線維性肥厚,内弾性板の屈曲,中膜の菲薄化を伴う種々の程度の狭窄ないし閉塞が認められる。
B ウィリス動脈輪を中心として多数の小血管(穿通枝及び吻合枝)がみられる。
C しばしば軟膜内に小血管の網状集合がみられる。
[診断の判定]
(1)〜(4)に述べられている事項を参考として,下記のごとく分類する。なお脳血管撮影を行わず剖検を行ったものについては,(4)を参考として別途に検討する。
確実例
(1)あるいは(2)のすべての条件及び(3)を満たすもの。ただし,小児では一側に(1)あるいは(2)の@,Aを満たし,他側の内頸動脈終末部付近にも狭窄の所見が明らかにあるものを含む。
疑い例
(1)あるいは(2)及び(3)のうち,(1)あるいは(2)のBの条件のみを満たさないもの。
表:MRI・MRA(magnetic resonance imaging・angiography)による画像診断のための指針
(1) 磁気共鳴画像(MRI)と磁気共鳴血管画像(MRA)により,通常の脳血管撮影における診断基準に照らして,下記のすべての項目を満たしうる場合は,通常の脳血管撮影は省いてもよい。
@ 頭蓋内内頸動脈終末部,前及び中大脳動脈近位部に狭窄又は閉塞がみられる。
A 大脳基底核部に異常血管網がみられる。
B @とAの所見が両側性にある。
(2) 撮像法及び判定
@ 磁場強度は1.0tesla 以上の機種を用いることが望ましい。
A MRA 撮像法は特に規定しない。
B 磁場強度・撮像法・造影剤の使用の有無などの情報をモヤモヤ病臨床調査個人票に記入すること。
C MRI 上、両側大脳基底核部に少なくとも一側で2 つ以上の明らかなflow voidを認める場合、異常血管網と判定してよい。
D 撮像条件により病変の過大・過小評価が起こり疑陽性病変が得られる可能性があるので、確診例のみを提出すること。
(3) 成人例では他の疾患に伴う血管病変と紛らわしいことが多いので、MRI・MRA のみでの診断は小児例を対象とすることが望ましい。
(4) MRI・MRA のみで診断した場合は、キーフィルムを審査のため提出すること。