難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

ハンチントン病/特定疾患情報(公費負担)

認定基準診断・治療指針

1. ハンチントン病とは
舞踏運動、精神症状、行動異常、痴呆などを臨床像の特徴とする常染色体優性遺伝型式をとる神経変性疾患です。これらの症状はいつのまにか始まり、緩徐ながら進行します。その原因は、脳の特定の部分(大脳基底核や前頭葉)が萎縮してしまうためです。大脳基底核の特に尾状核が萎縮するために舞踏運動が現れます。前頭葉の萎縮によっては、痴呆症状、てんかんなどを引き起こします。このような変化はCTやMRI等の画像検査をすることで明らかにすることができます。これらの脳の局部的な萎縮は神経細胞の変性脱落が原因です。最近、ある遺伝子に異常が起こることが発症に関係することが突き止められています。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
欧米では、人口10万人あたり4〜8人の患者さんがいると報告されていますが、本邦では0.1〜0.7人と欧米の1/10です。黒人にも少ないといわれていましたが、最近の疫学調査では白人との間に大きな差はないとされています。発症頻度・症状の出方が人種によりやや異なる傾向があるようです。

3. この病気はどのような人に多いのですか
男女差はほとんどありません。30〜60歳くらいでの発症が多いのですが、10代、70代での発症という報告もあります。優性遺伝病なので両親の何れかが発症していることが多いのですが、一般的に子の方が若年齢で発症する傾向があり(表現促進現象、anticipation)、特に男親が発症者の場合に表現促進現象が著明に見られます。

4. この病気の原因はわかっているのですか
第4染色体に局在している遺伝子(IT15 またはhuntintin)に正常には見られない変化が生ずることで発症することがわかっています。一般に、遺伝子は4種類の核酸が一列に並んだものです。正常のIT15遺伝子の一部には核酸3個(シトシン・アデニン・グアニン)の繰り返し配列がありますが、ハンチントン病を発症した患者さんではこの繰り返しが異常に伸びています。その原因は解明されていませんが、正常の繰り返し数で発症した患者はなく、異常に伸びた繰り返し数で天寿を全うした例もないことから、IT15遺伝子に生じたこの異常が発症の原因であることは確実です。

5. この病気は遺伝するのですか
遺伝します。原因遺伝子が第4染色体短腕にあり、常染色体優性遺伝の形式をとります。

常染色体優性遺伝
ある個体の染色体は父親からのものと母親からのものの2組ずつあります。ヒトでは染色体が23対46本あり、そのうち性を決定する性染色体の2本(XXまたはXY)を除いた22対を常染色体と言います。優性遺伝疾患とは両親の何れか由来の遺伝子に異常があれば他方の親からの遺伝子が正常であっても発症するものをいいます。片親が発症者であった場合子どもが発症する確率は50%です。通常両親の何れかが発症者ですが、稀には、両親とも非発症者で、本人が遺伝子に突然変異を起こしたことにより発症することがあります。

6. この病気ではどのような症状がおきますか
初発症状
精神症状・行動異常が舞踏運動より早く現れることが多いようです。

舞踏運動(コレア)
自分の意志とは無関係に生ずる顔面・四肢のすばやい動きのことです。しかめ面、舌打ち、手指の背屈などに始まり、進行すると激しく踊り回るように見えるので舞踏病の名称があります。病初期には、「癖」の様に見え、家族や知人は、落ち着きがなくなった、行儀が悪くなった、と感じることが多いようです。この不随意運動は大脳基底核に病変があることを示しています。書字・食事・洗面などに支障があるほかに、舌や口唇の不随意運動のため発音がはっきりせずコミュニケーションに支障をきたすこともあります。進行期では、激しい不随意運動のため体力を消耗してしまうこともあります。

痴呆・精神症状・行動異常
老年性痴呆と異なり、物忘れや記名力障害は目立ちません。むしろ、怒りっぽくなったり、常識的にはしないことをしたりという性格・行動変化や、ふさぎ込み・ものへのこだわりなどの気分変調や神経症的な症状の方が多く見られます。うつ症状が強いと自殺企図が見られることがあります。知的能力の低下も見られることがあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか
残念ながら、現在のところ根本的な治療法はありません。不随意運動、うつ症状・神経症症状により日常生活動作に支障がある場合には、対症療法として薬剤を用います。そのためには、神経内科専門医によるコントロールが必要です。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか
発症年齢、両親の年齢、臨床症状により色々で、一概にいうことはできません。症状も上記の全てが出現するとは限らず、痴呆のないもの、不随意運動が極めて軽いものなどの不全型も見られます。また、同一家系内でも、症状がまちまちなことがあります。典型的には、社会生活を独力で送ることが困難になるほどに症状が進行するのに10年以上かかります。

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