難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

クッシング病/診断・治療指針

特定疾患情報

■診断・治療指針
視床下部室傍核で産生されるCRHは下垂体門脈を経て下垂体前葉に至り、ACTH細胞に働いてACTHの合成と分泌を促進する。ACTHは全身に分泌され副腎皮質に作用してコルチゾールの合成と分泌を促す。分泌が亢進した血中コルチゾールは視床下部ー下垂体前葉に作用しCRHとACTHの分泌を抑制する。これをネガティブフィードバックという。クッシング病は下垂体からACTHが自律的に過剰分泌され、その結果副腎からのコルチゾール分泌を亢進させ、種々の臨床症状を示す。一方視床下部CRH分泌は抑制される。

1.概念
クッシング病は下垂体ACTH分泌が過剰となり、その結果慢性的高コルチゾール血症をきたし、特異的な臨床徴候を示すようになる疾患である。本疾患は病理学的には良性であるが、臨床的には治療が難しく悪性に似ているといえる。

2 診断
厚生労働省間脳下垂体機能障害に関する調査研究班からのガイドラインを参照されたい。ポイントとしては(1)治療に抵抗する高血圧や耐糖能異常からみつかることが多い。(2)本疾患に特異的な臨床徴候を見逃さないこと。早期には皮膚萎縮、皮下溢血、相対的な中心性肥満などが出やすい。(3)ACTHやコルチゾール値は正常域以下でなければ除外しない。(4)偽性クッシング症候群との鑑別でスクリーニング検査を行うが、0.5mgデキサメタゾン抑制試験1回法が重要である。深夜血中コルチゾール値が異常の場合、再検して確認すること。(5)異所性ACTH症候群との鑑別のための確定診断では、CRH試験、大量デキサメタゾン試験、MRI等で下垂体腫瘍の検出が満たされれば90%以上の確立で本疾患と診断できる。1つでも満たさなければ選択的静脈洞血サンプリングを行う。ただし下垂体macroadenomaの場合は各種負荷試験に反応しないことがあり、逆に気管支カルチノイドによる異所性ACTH症候群の場合は、負荷試験で本疾患と似た反応を示すことがある。さらに病態が周期性に変動することがよくみられるので注意が必要である。局所診断ができない場合は、腫瘍が大きくなるまでステロイド合成酵素阻害薬を用いる方法もある。

3。治療
これもガイドラインを参照すること。第一選択は経蝶形骨洞的下垂体腫瘍摘出術である。何らかの理由で手術ができないか手術がうまくいかなかった場合はガンマナイフを行う。その効果がでるまではステロイド合成酵素阻害薬を用いる。術後2〜4週の血中コルチゾールの基礎値が2μg/dl以上であれば将来再発する可能性が高い。もし手術で腫瘍が完全に摘出できれば術後は一過性の副腎不全になるのでハイドロコーチゾンの補充療法を行う。通常約1年で視床下部―下垂体―副腎系は回復する。


この疾患に関する関連リンク
  社団法人日本内分泌学会ホームページ
(社団法人日本内分泌学会ホームページ「診断と治療の手引き」より、「視床下部・下垂体」をあけてください。)


情報提供者
研究班名 間脳下垂体機能異常障害
情報提供日 平成21年4月1日


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