難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

膵嚢胞線維症/特定疾患情報

診断・治療指針

1. 膵嚢胞線維症とは?
 膵嚢胞線維症は、病名に"膵"という語がついていますが、膵臓だけではなく、気道、腸、肝臓、胆道など全身の臓器の外分泌腺(汗、消化液、潤滑剤である粘液などを分泌する組織)が冒される病気です。

 膵臓と気道の粘液分泌腺で極めて粘稠な分泌液が産生されて膵管(膵臓の消化液を十二指腸に導く通路)や気道の通過障害をきたす、あるいは汗の中へ過剰の電解質が失われてショックを起こすなどの病態が起こります。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
 日本全国で約30人の患者さんが確認されています。それほど多くはないのですが、診断の進歩や認識の広まりによって、今後、症例数が増える可能性もあります。

3. この病気はどのような人に多いのですか
 ほとんどが新生児期、乳児期に発症します。男女差はありません。

 欧米人の中では最も頻度の高い重篤な劣性遺伝病として知られています。一方、日本人を含む東洋人では稀です。

4. この病気の原因はわかっているのですか
 全身の外分泌腺の機能を司っているCFTR遺伝子と呼ばれる遺伝子の異常により全身の外分泌腺の機能異常が起こり、それに基づく症状が起こります。

5. この病気は遺伝するのですか
 この病気は遺伝子異常によって起こる病気ですが、日本人の中での異常頻度は非常に低いので、近親結婚でなければ発症する危険性はかなり低いといえます。

6. この病気ではどのような症状がおきますか
 異常に粘稠で凝固しやすい粘液のために胎便の排泄が妨げられ、新生児期に約10%の症例で胎便性イレウス(腸閉塞)を起こします。生後数日たっても便が出ず、嘔吐を繰り返し、おなかが大きく膨らみます。膵臓の外分泌腺障害(消化吸収障害)のため大量頻回の悪臭を伴う脂肪便、栄養発育障害がみられます。また気道外分泌腺の異常のため肺炎や気管支炎を繰り返すようになります。夏季など発汗の多い状態では電解質喪失によるショックをきたすことがあります。

 その他、副鼻腔炎、直腸脱、鼻ポリープ、二次性徴の発現遅延、不妊、骨関節症などをきたすことが多いようです。

7. この病気にはどのような治療法がありますか
 消化吸収障害に対する投薬や栄養管理(高カロリー、高蛋白質、低脂肪食が原則)を行います。ビタミン類の吸収障害も起きますのでビタミン剤の投与も必要です。

 呼吸器感染(肺炎・気管支炎)、胎便性イレウスを生じた場合には抗生物質・気管支拡張剤などの投与やイレウスに対する処置が必要となります。特に呼吸器感染が生命予後を決定しますので、適切な治療が必要です。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか
 平均7〜8才で呼吸器感染症で亡くなることが多い病気です。しかし、最近では呼吸器感染症の治療法の進歩、及び病態の解明による適切な輸液、栄養管理によって改善し、成人に達する患者さんもみられるようになっています。

◆ 第3回膵嚢胞線維症全国疫学調査

 「難治性膵疾患に関する調査研究班」では、わが国における膵嚢胞線維症の実態を把握し、本症の診断と治療に役立てるため「特定疾患の疫学に関する研究班」と共同で、2004年1年間ならびに過去10年間の膵嚢胞線維症患者に関する第3回全国疫学調査を実施しました。小児科を標榜する400床以上の病院、大学附属病院の小児科、50余の小児専門病院に対する1次調査により、474科(回収率80.3%)から過去1年で7名、10年で16名の報告がありました。また、これまで2回の全国疫学調査から確認された患者さんの経過調査、「びまん性肺疾患に関する研究班」でのアンケートならびに文献検索により確認された患者さんにたいして副次調査を行いました。これらの結果を加算した結果、2004年中の患者は13名、過去10年間の患者数は38名程度と推定されました。

 詳細:第3回膵嚢胞線維症全国疫学調査(中間報告)(PDF 555KB)

◆ 膵嚢胞線維症個人調査票の解析結果

 第3回膵嚢胞線維症全国疫学調査(2004年1年間ならびに過去10年間)に引き続き行われた臨床経過に関する2次調査の結果がまとまった。2次調査では過去10年間に確認された34症例中、17症例の個人調査票が回収された。日本人の膵嚢胞線維症患者の長期経過は、白人の膵嚢胞線維症(classic cystic fibrosis)と類似していた。即ち、繰り返す呼吸器感染により呼吸不全が進行し、それに伴って栄養状態が悪化し、入院治療を必要とする期間が徐々に長くなり、15〜20歳で死亡する症例が多かった。診断法ならびに治療薬には未承認のものも多く、肺感染症とそれに伴う呼吸不全の進行を遅らせるために早期の診断と治療体制の確立が必要である。

 詳細:第3回膵嚢胞線維症全国疫学調査(個人調査票の解析)(PDF 1,155KB)


情報提供者
研究班名 消化器系疾患調査研究班(難治性膵疾患)
情報更新日 平成19年9月8日

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