難病(特定疾患)と生活保護・社会保障を考える【携帯/モバイル版】

この場を借りて、難病(特定疾患)と生活保護などの社会保障制度について考えてみたいと思います。

多発限局性運動性末梢神経炎(多巣性運動ニューロパチー、ルイス・サムナー症候群)/特定疾患情報

診断・治療指針

1. 多発限局性運動性末梢神経炎(多巣性運動ニューロパチー、ルイス・サムナー症候群)とは
1982年に米国のルイス博士とサムナー教授らにより、最初に報告された末梢神経炎で局所的な神経の絶縁体(髄鞘)の障害に伴い、神経の伝導がブロックされる疾患で、脱髄性末梢神経障害の一つです。神経伝導検査を行うと、このような伝導ブロックが四肢に2〜数箇所にみられ、局所的な筋萎縮や筋線維束攣縮と呼ばれる筋肉のピクツキを認めることもあります。1988年に米国のペストロンク博士らが、この病気で知覚神経の障害を欠き筋萎縮性側索硬化症(ALS)とよく似た症状を示す例があること、またそのような例では抗GM1抗体と呼ばれる抗体が血清で上昇していることを報告しました。この抗体は現在ではこの病気の約半数にしか見られないことが明らかになっており、診断上あまり重要視されなくなりました。神経伝導検査により伝導ブロックを認めることが診断をする上で必須条件となっていましたが、脱髄の部位によっては神経伝導検査で明らかな伝導ブロックを来たさないこともあり、伝導ブロックが診断に必須か議論がなされています。1992年にはこの病気が大量のガンマグロブリン製剤の点滴によりうまく治療できることが世界ではじめて我が国から報告され、ALSとよく似た筋萎縮などの症状を示しながら治療可能な病気として脚光をあびることとなりました。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか 日本全国でも数百人程度と考えられており、多い病気とは言えません。しかし、神経伝導検査や抗体検査をされることなく他の疾患と診断されている方が多くいると考えられています。

3. この病気はどのような人に多いのですか
10代後半から60代までに見られ、男女比はやや男が多いと考えられています。

4. この病気の原因はわかっているのですか
抗GM1抗体が伝導ブロックや脱髄を起こすことによると言う説がありましたが、最近の研究では否定されました。詳しい原因はまだわかっていません。

5. この病気は遺伝するのですか
現在のところ遺伝するという報告はありません。

6. この病気ではどのような症状がおきますか
上で述べたような手足の筋肉のやせやピクツキではじまり、軽度の知覚障害を伴う場合もあります。

7. この病気にはどのような治療法がありますか
上で述べたように、大量のガンマグロブリン製剤の点滴が最も効果があり、保険適応となっています。高価であるため、高額医療費の適応となる場合が多いです。

8. この病気はどういう経過をたどるのですか
治療されない場合、筋肉のやせがかなりすすむことはありますが、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の様に呼吸筋が麻痺することはありません。ガンマグロブリン治療を頻回に行うことによりほぼ完治することがある一方、ガンマグロブリン治療によって一過性の改善を認めるものの数年単位で少しずつ筋力が低下していくこともあります。


情報提供者
研究班名 神経・筋疾患調査研究班(免疫性神経疾患)
情報更新日 平成19年7月2日

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