機動戦艦ミネルバ/第七章 宇宙へ
V  ワープゲートに近づくミネルバ。 「付近に艦隊は見当たりません」 「ウィング大佐の流した偽情報に、まんまと引っかかったようですね」  レイチェル率いる情報部は、総督軍の統制コンピューターにハッカー攻撃を仕掛け、ラ ンドール艦隊が接近中との偽情報を流したのである。厳重なセキュリティーに守られた軍 のコンピューターがゆえに、まさか侵入されているとは毛ほども疑っていなかったのであ る。もちろん、闇の帝王とあだ名されるジュビロ・カービンが背後で動いていたことは、 知る由もない。 「しかし情報一つで、敵艦隊を動かすことができるなんて、さすがウィング大佐です」 「感心してないで、行動に移しましょう。コントロールセンターのドッグベイに接舷して ください」  ワープゲートは、ワープが行われるゲート部分と、ワープをコントロールする部分とで 構成されている。 「突撃部隊は接舷ベイに集合してください」  ミネルバは、第八占領機甲部隊メビウス所属である。占領に携わる白兵戦用の精鋭部隊 も揃っている。 「接舷しました」 「突入せよ!」  なだれ込むように白兵部隊が、コントロールセンターに突入した。  センターにいるのは、ほとんどが科学・技術職員なので、占拠が容易かった。 「コントロールを奪取しました」  突入部隊より連絡が入る。 「シャイニング基地へのワープゲートを繋いでください」 「了解しました」  というところで、タルシエンにいるフランク・ガードナー少将に連絡を取る。 「おお、待っていたよ。早かったな」  万事了解済みという風に答えるガードナー。 「トランターのワープゲートを奪取しました」  一応報告するフランソワ。 「判った。既にシャイニングに三個艦隊を待機させている。ゲートが繋がり次第、よっち へ転送する」 「お待ちしております」  通信が切れた。 「我々は、このワープゲートを死守します」 「偽情報に惑わされた防衛艦隊が引き返すのが早いか、シャイニングからの援軍がワープ してくるのが早いか。時間との競争ですね」 「それに地上からの追撃隊もあります」  言うが早いか、 「急速接近する艦があります」  オペレーターが警報を鳴らした。 「早速おいでなすったわね。総員戦闘配備!一旦ゲートから離間する」  敵味方を識別する必要はない。メビウスには宇宙へ上がれるのは、このミネルバだけだ。 ゲートから離間するのは、接舷したままでは戦闘できないからだ。  戦艦プルートの艦橋。 「ワープゲートに到着しました」  正面スクリーンには、ワープゲートに接舷するミネルバがあった。 「遅かった。ゲートは敵の手に墜ちたようです」 「ミネルバが回頭して、艦首をこちら側に向けようとしています」 「原子レーザー砲を使うつもりだ。軸線上に入らないように気をつけろ」  原子レーザ砲は、大気圏内ではエネルギー減衰が激しいが、宇宙空間に出れば百パーセ ントの能力を引き出せる。ミネルバ級に搭載されていたのも、この宇宙に出ることを前提 としていたからだ。 「破壊力も射程も桁違いだ。こちらは長距離ミサイルで応戦しろ!」  双方十分離れた距離からの戦闘ゆえに、相手に十分な損傷を与えることができない。  やがて、ワープゲートが反応した。  次々と艦艇が姿を現したのである。
     
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