機動戦艦ミネルバ/第五章 ターラント基地攻略戦
\ 「ナイジェル中尉はトラップに気づきますかね」 「最初の一発を食らえばいやでも気づかされるだろうが、時すでに手遅れという状況に 追い込んでやればいいのさ」 「どうやって?」 「オーガス曹長が考えていた手を使わせてもらうさ」 「湿地帯を?」 「いや、山岳地帯を登っていく。途中に開けた場所があって、狙撃には格好の場所だ。 隊を二手に分ける。私のチームが山岳地帯へ向かう。カリーニ少尉は、トラップ地帯か ら抜け出してきた機体を迎え撃て」 「判りました」 「上手くいけば、こちらは損害を被ることなく全滅させることができるだろう」 「そう願いたいですね」 「第一から第三小隊は私に続け、残る第四から第六小隊はカリーニ少尉と共にここでト ラップから抜け出てきた敵を攻撃」 「了解!」 「総員機体に乗車!」  サブリナとカリーニが率いる二隊が分かれて、それぞれの作戦に向かう。  山岳地帯へと向かう傾斜を登るサブリナ隊。  やがて開けた場所に出た。 「ここなら眼下を進撃するオーガスらを狙撃することができるな」  双眼鏡で監視するサブリナ。  数時間後、ナイジェル中尉率いるB班が登場した。 「B班が森林地帯に入る瞬間を狙うのだ」 「ブービートラップに追い込むのですね」 「ん?ナイジェルめ、気が付きよったな」  覗く双眼鏡のレンズを通して、同じように双眼鏡でこちらを眺めているナイジェルが いた。  と同時に、部下の一人が対戦車用擲弾発射機(ロケットランチャー)を撃ってきた。  慌てて退避し、難を逃れるナイジェル。 「どうやら、見透かされていたようだ」  砲弾は至近距離に着弾したものの、砲弾に炸薬は入っていないペイント弾なので人体 被害は免れた。とは言っても、部下三名がペイントを浴びて戦線離脱となった。  さてどうするか?  と考えていると、通信士が叫んだ。 「隊長!敵襲です、ミネルバが敵に発見されました。至急訓練を中止して帰還せよ」  上空を戦闘機が飛び交いはじめた。  地上にいる所を発見されると、機銃掃射される危険がある。 「分かった!ナイジェルにも伝えろ。総員退却帰還!」  これからいいところだったのに、という名残惜しさが漂う中、慌ただしく総員撤収が はじまった。  ミネルバ艦橋。 「敵機来襲!」 「後方に揚陸母艦が見えます」 「何隻いるか?」 「三隻です」 「ヘリウム残量は?」 「残り12%です」 「超伝導磁気浮上システム維持できる時間は?」 「およそ56時間です」 「そうか……」 「やはり、ここへ来るときに、敵艦隊の足止めに放出したのが痛いですね」 「仕方がなかった。そうしなければ、ミネルバの運命もどうなっていたか」 「訓練部隊総員帰還しました」 「よし、ミネルバ浮上!」  砂塵を巻き上げて浮上するミネルバ。 「戦闘配備!」  艦内を駆け回って、それぞれの持ち場に急ぐ隊員達。  モビルスーツの格納庫では、出撃の準備が始まっている。  旧式機から昇降機を使って降りながら、整備員に大声で尋ねるサブリナ中尉。 「新型の整備状況はどうか?」 「液体ヘリウムの注入がまだ完了してません」 「何割注入した?」 「六割です」 「なら、二十分は飛べるな?」 「ええ、たぶん」  新型の諸元表によると、液体ヘリウム満タンで大気中を三十分飛べることになっている。 もちろん気温や気圧といった環境でも違ってくるが。 「ハイネはまだか?」  と叫ぶと、 「今行きます!」  待機所から、携帯食料のチューブを咥えながら出てきた。 「ちょっと小腹が空いたもんで」  言い訳していた。 「早く乗れ!」 「了解」  新型は複座式である。  パイロットの他、超伝導磁気浮上式システムを操作する機関士が必要なのだ。 「システム起動!」 「よし、出発する」  ノシノシと歩いて射出機に両足を乗せる。  前方の信号機が青になると同時に、 「サブリナ機、行きまーす!」  カタパルトによって前方空域へと飛び出した。  浮上システムによって、ふわりと空中に浮かぶサブリナ機。 「三時の方向に編隊多数!」  レーダー手でもあるハイネが報告する。  が早いか、戦闘機から発射されたミサイルが飛んでくる。  防御用の盾を前にかざして、それを防ぐと同時に、身近を通った戦闘機をバルカン砲で なぎ倒す。  戦闘機の方も、素通りしてミネルバを急襲する。 「ミネルバなら大丈夫だ。こっちは敵母艦を叩く」  戦闘機には目もくれずに、敵母艦へ向かってゆく。  当然として、激しい弾幕攻撃を受ける。  しかし、それも難なくかわして、母艦に取り付くのに成功する。  背負っていたビームサーベルを手に取って、 「くらえっ!」  とばかりに、ビームサーベルを艦体に突き刺す。  ビームエネルギーが流れ込み、艦内のあちこちで爆発が起こり始める。  サブリナが離艦すると同時に、轟音と共に大爆発した。 「役目は終わった、帰還するぞ」  母艦が轟沈するのを見て、散り散りに逃げ去ってゆく戦闘機を見送りながら帰還するサ ブリナだった。
     
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