あっと! ヴィーナス!!(48)
ポセイドン編 プロローグ  ここは海底地下神殿、ギリシャ神話におけるオリュンポス十二神の一人、ポセイ ドンの居城である。  最高神ゼウスに次ぐ圧倒的な強さを誇る。海洋の全てを支配し、全大陸すらポセ イドーンの力によって支えられている。  なぜなら、大陸移動説で語られるように、地殻は対流するマントルの上に浮かん でいるからである。  彼が怒り狂うと、強大な地震を引き起こして世界そのものを激しく揺さぶる。ま た、地下水の支配者でもあり、泉の守護神ともされる。  玉座に腰を降ろし神の酒を飲みながら、TV中継を鑑賞している。  天上界でもお馴染みの地上波デジタル放送である。  海底神殿でも、海底ケーブルを引き込んで、視聴することができる。  もちろん高速インターネット回線もある。  リモコンを操作して、チャンネルを切り替えている。 「何か、もっと刺激的な内容の番組はないのか?」  やがて、冥界チャンネルという番組になった。  冥界にTVカメラを持ち込んで、生中継しているようだ。 「お? 冥界に人間が紛れ込んだのか?」  その映像は、ハーデースの御前での弘美とヴィーナス達のものであった。  音声も出ている。 『地上へは元来た道を戻るがよい。ただし、冥界から抜け出すまでの間、決して後 ろを振り返ってはならぬぞ!』 『振り返るなだと?どういうことだ??』  しばし考え込む弘美。  やがて、日本神話を思い出す。 『まさか、イザナギとイザナミの黄泉の国の物語か?』 『違うな』 『じゃあ、JOJO/ダイヤモンドは砕けないの岸辺露伴編『振り向いてはいけな い小道』の怪、じゃないだろうな。振り向くと魂を持っていかれるっていうやつ』 『竪琴の名手オルペウスと妻エウリュディケーの物語は知ってるか?』 『知らん!』 『ギリシャ神話だよ……ともかく、振り返るなってことだ』  和洋の違いはあれど、冥府に関するタブーというものは共通のものらしい。 「さて、彼らはどうなるかのお?」  ポセイドンが呟くと、 「冥府から無事に脱出できたものはこれまでいません」  と、側近にして愛人のメデューサが説明する。  メデューサは美しい長髪に、宝石のように輝く目を持つ美貌の女神である。  長姉ステンノー、次姉エウリュアレーとともに「ゴルゴン(ゴーゴン)三姉妹」 の名前で呼ばれ、ポルキュスとその妹ケトの間に生まれた娘。  ギリシャ語で「女王」「支配する女」という意味名であり、ギリシアの先住民族 ペラスゴイ人の崇める女神(大地母神)であったと言う説が有力。  都市の守護女神アテーナーの怒りを買って、恐ろしい怪物になる前の姿であった。 「生中継のようだが、彼らは撮影されていることに気付いていないのか?」 「たぶん、隠しカメラのようです」 「そうか……。ハーデースめ。余興のつもりのようだな」  一部始終が中継されているのを知らない弘美たちの慌てぶりを笑って見ていると いうところ。  いわゆる、どっきりカメラの一種。 「ふむ……。このまま、ハーデースの軍門に降るのも、癪に障るな」 「助け舟を出されてはいかがでしょうか?」 「ハーデースやアポローン、そしてゼウスに一泡吹かせるのも一興であるな」 「手配いたします」 「よろしく頼む」
     
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