あっと! ヴィーナス!!(37)
ハーデース編 part-2  そんなこんなで、ヴィーナスと弘美は、天界にある運命管理局へとやってきた。 「探せ!愛ちゃんをどこへ連れ去ったのか、虱潰(しらみつぶ)しに探すのだ!」  管理局の部下に命令を下すヴィーナス。  その部下の心境は、 「また酒飲みすぎてドジ踏んだのかよ」  と内心思っているだろう。  早速、天空の女神ディアナが陣中見舞い?にやってきた。 「またもや、双葉愛が誘拐されたようだな」 「前にもやったように、時間を戻して誘拐犯を尾行できないのか?」  弘美が尋ねた。 「無理だな。またもやアポロンが絡んでいるようだからな。前回使った手が二度も 通用する相手じゃない」 「アポロン?石になって地中海じゃなかったのか?」 「いや。海から拾い上げられて、とある美術館に飾られていたはずが……。つい先 日、何者かによって持ち去られている。そして石化を解かれてしまったようね」 「第二報が届きました!」 「身代金要求か?」 「いえ、それが『ファイルーZ』を要求しています」 「ファイルーZだと!?」  顔を見合わせるヴィーナスとディアナだった。 「やはり、アポロンが絡んでいるようだな」 「そして共謀者もいるな」 「アポロンの石化を解いた誰かだな」  見知らぬ天空の運命管理局とやらに連れてこられて、一人宙に浮いているような 立場となっていた弘美。 「おまえらなあ!俺にも、教えろよ。分かりやすく、易しく解説してくれ!ファイ ルーZとはなんぞや?」 「じつはだな……斯斯然然(かくかくしかじか)だ!」 「なるほど、そうだったのか……ってか、全く分らんぞ!!内容を端折(はしょ) るな」 「アポロンはともかく、共謀者が誰かだな」 「第三報で、ファイルーZの受け渡し場所そ指定してくれば、おのずとわかるだろう」 「しかし、データだけメールで送れと言われたら、対処のしようがないぞ。ボット ウイルスに侵されたPCから多国間に渡った遠隔メール発信されたらな」  イライラしながらも、次の第三報が来るのを待ち受けている神々だった。 「来ました!第三報です!!」  メールを表示するディスプレイに、被りつく女神。  画面には、次のような文面が表示されていた。 「受け渡し場所を、そこにいる娘のスマホに送る」 「なに?」  と、弘美に視線を移すと、  ♪ チャリラリラン ?  弘美の持っているスマホに着信した。 「お!メールが来たぞ」 「見せろ!」  スマホを奪い取るような勢いで、メール文に注目する女神。  文面は以下のようになっていた。 『ファイルーZを持って、添付ファイルに示した地図の場所に来い』 「添付ファイルがあるぜ」 「待て!開くなよ。ウイルスが仕込んであるかもしれん」 「だからと言って、開かなきゃ愛ちゃんの場所が分らんぞ」 「まあ、待つんだ。そのメールを管理局のパソコンに、そのまま転送するんだ」 「どうやるんだ?」 「ちょっと貸せ!」  と、スマホを取り上げるなり、ピピピッと操作してメールを管理局へと転送した。 「メール届きました」 「よし、ウイルスが潜んでいないか解析しろ!」 「かしこまりました」  解析が行われてゆく。 「ウイルスはありませんでした」 「ご苦労だった」  と、弘美に向き直って、 「添付ファイルを開いて良いぞ」 「なんだよもう……」  とぼやきながらも、添付ファイルを開く。
     
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