あっと! ヴィーナス!!第二部
第三章 part-8
「ふわっはっは!これは参ったな」
と大笑いするアポロン。
キョトンとする弘美。
「そいつが、愛をさらった誘拐犯のアポロンよ」
「それは本当か?」
「インディアン、嘘つかない……」
「ローン・レンジャーかよ」
「いやね、神夜映画劇場で地上放送の再放送やっているのよ」
ヴィーナスが解説する。
「なんだよ、その神夜映画劇場ってのは」
「知らないのかよ。天上界で人気の映画シリーズだぞ。天上界でも地上界の放送番組と契
約して再放送しているんだよ。今大人気なのが【神劇の巨人】というアニメだな」
今度は、ディアナが説明する。
「知るわけねえだろ!天上界のことなんか」
「だよな」
「そんなことどうでもいいだろ?こいつが、アポロンなんだな?」
「それは間違いない!!」
ヴィーナスとディアナがほぼ同時に答えた。
「やい!アポロンとやら、愛を返せ!!」
単刀直入に詰問する弘美。
「ほう……。なかなかシャイな娘だね」
反対の異義語で答えるアポロン。
「君って面白いね。たまには風変わりなのもいいかもな」
「返すか返さないのか、どっちなんだ!?」
「そうだね……。君が僕の妻になってくれるというなら、考えてもよい」
「つ、妻だとお!?」
顔を真っ赤にして激怒する弘美。
アポロンの思惑はこうだろう。
ゼウスのお気に入りである、ファイル−Zの娘を自分の妻にすることで、ゼウスに一泡
吹かせてやろうということだ。
人間には寿命があるので、いくらでも代わりの相手はいる。
「ふざけるなあ!」
というとアポロンの胸倉をむんずと掴み、勢いよく背負い投げをぶちかました。
それは見事に決まり、
「一本!それまで!!」
ヴィーナスが宣言する。
床にもんどりうって転がるアポロンは、一体何があったのかという表情をしている。
「ふん!」
どうだ、参ったか!
というように勝ち誇る弘美。