第八章
Ⅱ ガスパロ再び  再び海賊ギルドの基地に舞い戻ってきたフォルミダビーレ号とアムレス号。  フォルミダビーレ号の来訪を事前に察知していたのか、基地の周囲には数多く のケンタウリ帝国艦隊がひしめき合っていた。 「ガスパロから通信が入っています」  と、レンツォ・ブランド通信士。 「繋いでくれ」  通信用パネルにガスパロが移りだされた。 『おまえ処刑されたんじゃないのか?』 「しぶとく生きてますよ。少年達に助けられましてね」 『少年? 子供達も?』 「ええ、生きていますよ。彼らに助けられたのです」 「そうか……。で、例のロストシップは見つかったのか?」 「見つかりましたよ。見てのとおりです」  並走する船を指し示すアーデッジだった。  その映像を見つめている風のガスパロ。  やがて、 『隣に並んでいる船は例のヤツだな?』  核心を突くガスパロ。 「そういうことだな」  否定することなく答えるアーデッジ。  しばし考えてから、 『そのロストシップをこちらに渡せば、これまでの反乱行為を無しにして、再び 仲間に戻して上げてもいいのだぞ』  交渉を出してくる。 「断る!」  断固として拒否するアーデッジ。  当然だろう少年達が命を賭して見つけた船を、軽々しく渡せるはずがないだろ う。言ってみればロストシップは、少年達の所有とみなすことができるからだ。 『ならば、何故に舞い戻ってきた? こうなることは分かっていただろう』 「預けているものは返してもらわなくてはな」 『預けている? まさか親父のことじゃないだろうな?』 「分かっているじゃないか」  海賊ギルドの元頭領アントニノ・ジョゼフ・アッカルドは幽閉されていた。  ギルドと要塞を作り上げた人物であり、海賊達の信奉も厚かったから、処断す ることができなかったのだ。もし処断していたら、海賊達の不平不満を抑えるこ とは不可能だっただろう。  幹部の中には、アッカルド頭領に恩義を抱いている者も多いので、彼らが反乱 を起こさないためにも処断することができなかったのだ。 『それでどうするつもりだ!』 「一対一の決闘を申し込む。俺が勝てば頭領を解放しろ!」 『おまえが負けたら?』 「俺の船と俺の首を差し出す」 『いいのか? お前の首がどうでもいいが、その船は最新鋭だろ』 「かまわない。受けるのか? 受けないのか?」 『馬鹿か! 受けるわけねえだろ! その前に、目の前の艦隊をどうにかするん だな』  通信が強制的に切られたかと思うと、帝国艦隊が動き出した。 「帝国艦隊が戦闘態勢に入ったようです。如何いたしますか?」  リナルディ副長が尋ねる。 「そうだな……同じ海賊船なら同士討ちだが、帝国艦隊なら気兼ねなくやれる。 戦闘配備だ!」 「了解。戦闘配備!」  リナルディーが復唱した時に通信が入った。 「アムレス号より入電あり」  と、レンツォ・ブランド通信士。 「繋いでくれ」  スクリーンにアレックスが出る。 『帝国艦隊は僕に任せてください。流れ弾が当たらないように後方に下がってお いてください』 「分かった」  フォルミダビーレ号を後方へと移動させるアーデッジ。  ロストシップの性能を知りたいのと、戦術級におけるアレックスの才能如何を この目で見たいとの思いがあった。
     
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