第二十四章 新生第十七艦隊
Z  タルシエンに全艦隊が揃ったところで、改めて会合が開かれた。各艦隊の司令や参 謀達を交えるとかなりの人数に及んだ。もちろん初顔合わせという士官同士がほとん どであった。 「ところで、連邦軍がこの要塞を避けてトランター本星を直接攻略するというのはあ り得るのかね」  早速、アレックスに次ぐ地位にあるフランク・ガードナー少将が質問に立った。 「当然でしょう。現在ここには三十万隻からの艦隊が駐留していますし、要塞そのも のの防御力もあります。これを真正面から攻略するには、その三倍の艦隊を必要とす るでしょう」 「都合九十万隻が必要ということか」  続いてリデル・マーカー准将が問題にする。 「お言葉ですが、提督は数十人の将兵で要塞を攻略なされました。同様の奇抜な作戦 で敵が奪回する可能性もあります」 「それはないと、俺は思うな。この要塞を攻略できるような作戦能力に猛る参謀が敵 にはいない」  フランクが答えると、すぐにアレックスが訂正する。 「過信は禁物ですよ。向こうにはスティール・メイスンという智将がいるんです」 「しかしこれまで表立った戦績を上げていないじゃないか」 「それは彼が参謀役に甘んじていたからです。艦隊司令官として直接戦闘を指揮する ようになれば手強い相手となるはずです」  アレックスは、これまでに調べ上げたスティールに関する情報から、彼が着々とそ の地位を固めていることを確認していた。もし次の侵略攻勢があるとすれば、彼が総 指揮官として前線に出てくると踏んでいた。  その作戦も尋常ならざるを得ない方法を仕掛けてくるだろうと直感していた。  それがどんな作戦かは想像だにできないが、少なくともタルシエンの橋の片側を押 さえられ、多大な損害を被ることになる要塞を直接攻略するものではないと確信でき る。 「とにかく……。仮に通常戦力で敵が襲来してきた場合を想定すると、連邦軍がそれ だけの艦隊をこの宙域に派遣するには相当の覚悟がいります。同盟が要塞防衛に固執 して艦隊を集結させ、その他の地域の防衛が疎かになっている点に着目すれば……」 「要するに、ここには共和国同盟軍の精鋭部隊のすべてが集結しているということで すよね」 「逆に言えば、アル・サフリエニ以外の後方地域は、有象無象の寄せ集めしかいない ということで、本星への直接攻略という図式が成り立つというわけだ」 「侵略政策をとっている連邦は、敵陣内に深く入り込んで戦闘を継続しなければなら ない関係で燃料補給や艦の修繕の必要があるからこそ、要塞を建造した。そこを拠点 として同盟に進撃することができるというわけですね。でも、専守防衛を基本として いる共和国同盟にとっては、要塞を防衛することは戦略上の重要性は少ないとみるべ きでしょう。いくら要塞を押さえていてもそこから先に進撃することはあり得ないの ですから、燃料補給も艦隊の修繕もあまり必要ありませんからね。ゆえにこの要塞は 破壊してしまうか、同盟本星近くに曳航して最終防衛戦用として機能させるべきで す」 「まったく軍上層部は一体何考えているんでしょうねえ」 「というよりも評議会の連中の考えだろうさ。金儲けのことしか頭にないからな。要 塞を所有していることの経済効果を考えているのだろう」 「経済効果ね……確かにこの要塞の建造費がどれくらいは知らないが、ただで儲けた ものだし、ここの生産設備をフル稼動させれば、たとえ本国からの救援がとだえても ある程度は自給自足できる」 「ともかく、軍の命令には逆らえない以上、言われた通りにするしかないからな。た とえ本星が占領されても知ったこっちゃないということさ」 「それ、それですよ。本星が占領され同盟が降伏すれば、同然ここを明け渡すことに なるわけですよね」 「そう。結局連邦にとっても本星さえ落としてしまえば、この要塞は苦もなく手に入 れることができる。苦労して要塞を攻略する必要はないわけだ」 「果たして燃料補給の問題をどう解決するかですね」 「それさえ解決すれば、明日にも攻めてくるのは間違いない」 第二十四章 了
     ⇒第二十五章
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