第二十二章 要塞潜入!
U  ジュビロから声が挙がった。 「よし! 侵入した。成功だ」  ものの数分でコンピューターの侵入に成功するジュビロ。 「さすがだな」 「俺を誰だと思っている」  憤慨気味のジュビロ。 「まあな……。レイティ、端末を操作して見てくれ。そうだな……要塞のブロック図 を出してみてくれないか」 「OK。要塞のブロック図ですね……ちょっと待ってください」  レイティは操作パネルをいじりはじめた。 「間違っても警報システムは作動させるなよ」 「いやだなあ、提督。僕達を誰だと思ってるんですか、コンピューターのシステム管 理者と天才ハッカーですよ。システムなんてのは日常茶飯事で取り組んでいるんです。 操作パネルのデザインを見ただけでもおよそのことはわかります」 「そ、そうか」 「よし、こいつだな……」  と確信した表情でスイッチを押した。 「お、出たでた」 「レイティ、ごみ処理場周辺を出してくれ」 「はい」 「どうやら二区画先まで閉鎖されているようだな」 「大型ミサイルの不発弾があるから用心のためですね。これなら、ここへ踏み込まれ ることはないでしょう」 「しかし、その内に爆弾処理班がおっつけやってくるはずだ。早いところやってしま わなければならない」 「そうですね」 「中央制御コンピューターの位置は?」 「ここから二十七ブロック先の所にあります」 「そこへたどり着く最短コースは」  レイティはパネルを操作してルートを表示してみせた。 「そうですね、このルートを通れば」 「途中の保安システムは?」 「残念ながら、この端末からでは保安システムを止めることはできません。ローカル コード専用の端末ですからね。保安システムへのアクセス権が設定されていません」 「このままでは、中央制御コンピューターへは行くことができないか……後は、ジュ ビロ次第だな」 「保安システムへのアクセスルートを探っているところだ。もう少し時間をくれ」  たとえアクセス権が設定されていなくても、中央制御コンピューターに接続されて さえあれば、ジュビロの腕前なら何とかしてくれるだろう。 「それにしても……」  レイティーが小さく呟くのを聞いて、アレックスが尋ねる。 「どうした?」 「いえね。ここのシステムは一世代前のものなんですよ」 「一世代前?」  ジュビロが代わって答える。 「さっきからいろいろ探っているが、カウンタープログラムはおろか、ハッカーの侵 入を防ぐ対策らしきものが一切ない」 「どういうことだ」 「つまりですね。この要塞は完全独立コンピューターによって制御されていますから、 外からアクセスする道が遮断されています。ハッカーの侵入を考慮する必要はないと 判断しているのではないでしょうか」 「がっかりだぜ。この程度なら、レイティでも攻略できるかもしれないね。時間さえ あれば」 「その時間が惜しい。一秒でも早く落とさなければならないんだ。外の艦隊だけでは、 この要塞を直接攻略することは不可能だ。いつまでも要塞に手を出さずにいれば、い ずれ勘繰られて、侵入した我々のことを悟られることになる。時間が掛かれば掛かる ほどな」 「しかし旧式のシステムとはいえ、やけに広大過ぎる。どうやらシステムのすべてを 中央制御コンピューターが管理しているようだ」 「それは、僕もさっきから感じていました。普通いくつかにモジュール化して分散さ せておいて、メインがシステムダウンしても他からバックアップできるようにしてお くものですが、ここのは違う。ほらこれを見てください」 「これは?」  表示パネルには、中央制御コンピューター室から一本の通路が外へ向かっているの が、映しだされていた。 「排気口ですよ」 「排気口?」 「そうです。システムのすべてを中央制御コンピューターが担っているから、過負荷 となって膨大な熱が発生します。熱源が一ヶ所に集中していて冷却が間に合わないか ら、その熱を外へ排気するための通路ですよ。巧妙に隠されて外からは気付きません でしたけど」 「排気口か……いずれ使えるかもしれないな……」 「使える……?」 「いや、何でもない。ということは、中央制御コンピューターに侵入できれば要塞の すべてをコントロールできるわけだな」 「その通りです。ところで、同じように熱源として動力炉もありますが、こちらは熱 循環させて要塞内の暖房に使われています。同じ熱量があったとしても、コンピュー ターは超電導素子の関係からシビアに冷却する必要があるので、絶対零度に近い宇宙 空間に放出するほうが効率がいいわけです」  戦闘に関しては神がかりの才能を発揮するアレックスであるが、ことシステムエン ジニアに関しては無知といってもいいだろう。レイティーやジュビロが解説すること を、百パーセント理解しているとは言いがたい。  が、それでいいのである。自分にできないことは他人にやらせればいいこと。そう いう人材を集め利用する。それが指揮官たる才能なのである。 「やったぞ、中央制御コンピューターに侵入した」  指を鳴らして叫ぶジュビロ。 「どうします? 保安システムを解除しますか」 「いや、ただ単純に解除したのでは、察知されて保安システムが作動していない原因 を調査にくるだろう。正常に作動しているようにみえて、実は解除されているという 具合でないとな」 「そういうことなら簡単さ」  再び、端末をいじるジュビロだが、一分も経たないうちにシステムを改竄してしま う。 「保安システムを解除した。お望みの通りにね」
     
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