第十五章 収容所星攻略

                 VI  そんな通信の模様は、セイレーン艦橋にも届いていた。 「リンダ! あなた何考えてるのよ」  目の前にいる艦長のリンダを叱責するリーナ。 「え? だってハリソンが……」 「だって、じゃないでしょ。今は戦闘中なのですよ」 「でもお……」 「まったく、しょうがないわね」  リーナが呆れ顔で呟く。 「ハリソンを出して」 「こちらシルバー・フォックス。ハリソン、どうぞ」 「こちらハリソン。シルバー・フォックス、どうぞ」 「ハリソン、賭けに参加した者全員、減俸三ヶ月よ。いいわね」  いきなり処分を言い渡すリーナ。 「それは、勘弁してくれ」 「だったら目の前のものを早く片付けて頂戴」 「片付けたら帳消しにするか?」 「考えておくわ」 「おうよ。考えておいてくれや」 「だったら、手際よくやりなさいよ」 「見ていろよ」  ハリソンがそう言うと、ぷつんと会話が途切れた。戦闘に専念しはじめたのだろう。  はあ……。  というため息をもらすリーナだった。 「いつもこうなのですか?」  パトリシアが尋ねた。 「似たり寄ったりですね」 「サラマンダーの艦橋にいては、各部隊ごとのこまごまとしたことは入ってきません。 艦載機同士の通信までは聞いてられませんから」 「それは当然です。司令官は全体の動きだけ指示していればいいんです。後は各部隊 指揮官が最善の処置を施します」 「何はとはあれ、戦闘中に賭け事は問題です。厳罰処遇にしなければ……」  とここまで言ってから、 「と、言いたいところですが……。提督ご自身も、賭け事には一癖も二癖もあるお方 でしたから」  そうなのだ。  士官学校の学園祭で、バニーガールを交えたカジノパーティーを主催したり、禁断 の密造酒を製造したりもした、破天荒かつ型破りな御仁だった。  ゆえにパトリシアにしても、こういったことには慣れていたと言ったほうがいいだ ろう。 「五十機目!」  ジャックの喚声が通信機に届いた。 「ハリソン達は優勢に戦いを進めているようです」 「敵味方の撃墜差は、現時点でおよそ四対一といったところ」 「残存機数で次第に差が開いてきますから、いずれ撃墜差にはさらに開きが出てきま す」
     
11