第十五章 タルシエン要塞陥落の時
Ⅲ  要塞砲の発射によって、その軌跡上の無人戦闘機はすべて蒸発した。  タルシエン要塞中央制御室。 「要塞砲、発射完了しました」 「うむ。様子を見る」 「どうでしょうか……射程内に敵さんが入っていればいいのですが」 「期待しようじゃないか」  タルシエンの橋に消えたエネルギーの渦は沈黙していた。  次の瞬間だった。 「タルシエンの橋に高エネルギー反応!」 「こ、これは?」  スクリーンにエネルギー波が迫り、そして真っ白になったかと思うと、激しい衝 撃が要塞を襲いブラックアウトした。立っていた者はほとんどが床に倒れている。  管内の電源が落ち真っ暗になった。 「な、なんだ! 何が起こった?」 「主電源がショートして落ちたようです!」 「補助電源に切り替えろ! 主電源は直ちに修理にかかれ!」 「損害を調べて報告せよ!」  やがて電源が回復して、損害報告も上がってくる。 「要塞砲が破壊されました!」 「モニターに映してみよ」  要塞の外部TVカメラが要塞砲の様子を映し出した。  要塞砲の反射エネルギーによって、射出口がほぼ完全に破壊されていた。 「これは酷いな。もはや使用不能だろう」 「エネルギーの逆流を防ぐために、粒子加速装置を閉鎖した方がよろしいかと」 「そうだな。そうしてくれ」 「敵の秘密兵器でしょうか? とても戦艦搭載の砲ではありえません!」 「制空権を取られた上に、要塞砲なしでは勝ち目はないか……」 「なんだあれは?」  タルシエンの橋からゆっくりと出現したものがある。 「真っ白ですね」 「まるで氷のようですが……」 「いや、氷ですよ。本物の氷の壁です!」 「分かりました! あの氷の壁で要塞砲のエネルギーを反射させたのではないでし ょうか」 「できるのか?」 「間違いありません」 「で、あれを壊せるか?」 「要塞砲を反射させたくらいですから、熱エネルギー攻撃は無理でしょうが、ミサ イルのような物理攻撃なら壊せるでしょう」 「氷の壁に対してミサイル攻撃を敢行する。各レーザー砲は無人戦闘機撃墜に専念 せよ」 「残存艦隊及びカーグ少佐達に、無人機は無視して氷の壁の向こう側の敵へ攻撃開 始せよ」 「了解! ホスター准将に連絡」 「了解! カーグ編隊へ連絡」  無人機による要塞への攻撃はさほどのことでもなかった。攻撃して反撃される方 が痛い目に会うことになる。そのようにして外に出ていた第十一艦隊は半数に激減 していた。 「氷の向こう側にどれだけの艦艇が潜んでいるかだな」  やがて姿を現したのは、 「敵勢力、重戦艦を主体とした八十万隻のもよう」  その兵力に驚くガードナー。 「まいったな……」  外に出ている味方艦艇では戦力不足だった。
     
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