第十章 反乱
Ⅸ 「ウィンディーネ炎上を確認しました。どうやら航行不能に陥ったようです」 「ウィンディーネの乗員が次々と退艦していきます」  爆発炎上するウィンディーネを見つめるアレックス。  航行不能になったウィンディーネは、ゆっくりと漂流を始めた。  総員退艦したのを確認すると、 「魚雷発射準備! サラマンダーに止め(とどめ)を刺す」 「サラマンダーを葬るのですか?」 「そうだ! 反乱軍の拠り所となっているウィンディーネを沈めれば、抵抗する気 力もなくなるだろう」  魚雷が発射される。  心臓部に命中した魚雷によって、ウィンディーネは跡形もなく消滅した。  こうして、ランドール艦隊の中でも、随一の戦績と功績を誇る名艦であった、ハ イドライド型高速戦艦改造Ⅱ式、旗艦ウィンディーネは宇宙から消えた。 「よし! 艦隊に戻る。全艦、現宙域を離脱せよ!」  ヘルハウンド以下の小隊が、ワープして宙域から離脱した。  アレックスの思惑通り、戦意を喪失した反乱軍は、白旗を揚げたのである。  七万隻を誇る艦隊のすべてを指揮統制することのできる戦術コンピューターを搭 載していた旗艦ウィンディーネなしでは、まともな艦隊運用はできないからだ。  数日後、ゴードン・オニール准将がタルシエン要塞のアレックスの元へと出頭した。 「済まないが、拘禁させてもらうよ」 「自分はどんな処分でも受け入れるつもりだ。しかし、部下には情状酌量をお願い したい」 「分かった。考慮する」  拘束されて独居房へと連行されていった。  艦橋内に寂しげな雰囲気が漂う。  同志として生死を共にし、感動を共有していただけに、ゴードンの拘禁によって、 士気の低下は否めないものとなっていた。  情状酌量で反逆罪は免れても、ウィンディーネ艦隊の将兵達は無気力となっていた。 「いかんなあ……」  この状態で、連邦軍が攻め込んできたりすれば苦戦は免れず、最悪カラカス基地 を奪還され、さらにはアルサフリエニ地方も陥落するかもしれない。 「連邦の革命後の組織再編が長引くことを祈るしかないな」 第十章 了
     
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