第十章 反乱
Ⅳ  アルサフリエニ方面への道行きのため、艦隊編成と補給が急がれた。  同行するのはサラマンダー艦隊二千隻の他、マーガレット艦隊から五千隻、ジュ リエッタ艦隊から同じく五千隻が編成された。いずれも帝国の中でも精鋭を選りす ぐった艦隊である。  今回の遠征には、TV放送局の艦艇は同行を許されなかった。かつての仲間で骨 肉相食む戦闘となるのだ。横やりが入っては集中できないし、相手方に情報を漏ら すことにもなる。  アレックスが決断して三日後に出航準備は完了した。 「アルサフリエニ方面に出撃する!」  進軍を下令するアレックス。  こうして準備を終えた一万二千隻の艦隊は、静かにアルデラーンを出立した。  途中トランターに燃料補給で立ち寄るも、ワープゲートを使用することなく、そ のまま通過した。  ワープゲート不使用は、要塞側のゲートがハッカーに乗っ取られた場合を考慮し たのである。 「ワープはしたが、出口側が消失して異次元空間を彷徨うことになりたくないからね」  タルシエン要塞へと急ぐ艦隊。  二日と七時間を要して、ついに要塞に到着した。 「入港許可願います」  通信士が入港許可申請を出す。 「許可します。十一番ゲートから入港願います」 「十一番ゲート。了解した」  要塞駐留司令官ガデラ・カインズ中将が出迎えた。 「早速、詳細を聞かせてくれないか」 「分かりました。会議室へどうぞ」  アレックス及びパトリシア以下の二人の皇女と参謀たちが従った。  提督や参謀が全員揃ったところで、会議ははじまった。 「それでは、事の発端となった皇太子礼のTV放送を流します。まず最初は、要塞 で受信した映像からです」  映像の中から核心と思われる部分が流された。 『帝国皇太子及び共和国同盟最高指導者たる身分をもって、共和国同盟を銀河帝国 に併合し、帝国貴族にその所領を与えるものとする。貴族の末端にまで公正に分配 する』  息を飲む参謀たち。 「どうです。間違いありませんか?」 「うむ。見た通りだった」  他の要塞参謀が頷く。 「それでは、アルデラーンでの本放送の録画です」 『共和国同盟は元の政体に戻すこととする。相当の準備期間を設けて、評議会議員 選挙を執り行う。概ね2年程になると思われるが、その間は軍が暫定政権を敷くこ ととする』 「以上がアルデラーン本放送です」  比較して全く違う内容になっているのに、憤りを覚えずにはいられない参謀だった。 「まるで反対ではないか!」 「アルデラーン本放送から要塞での放送に至るまで、一時間ほど時間差があります。 その間に映像を改造して偽放送データを送り、ハッキングされた要塞側が偽放送を 流したと思われます」 「つまり要塞では、本来の放送は遮断されていたのだな?」 「その通りです」 「そして、その偽放送を信じたアルサフリエ側が叛旗を掲げたということか……」 「しかし偽情報だけで、裏切るなどありうるのでしょうか?普通なら、情報の信憑 性を確認しますよね」 「そうでもないだろ。孤児として拾われて以来立身出世で共和国同盟軍の最高の地 位にまで上り詰めたのは賞賛者で伝記の主人公となっても不思議じゃない。がしか し、実情は皇太子でした。ってことになれば、賞賛から嫉妬に一変するものだ」 「そうですね。特に『皆殺しのウィンディーネ』と言われていた時は、連邦に対す る激しい憎悪は並大抵のものではありませんでした」 「信じていた親友の心変わりに対して、裏切ったのはランドール提督の方だという 感情が沸くのも当然かもしれません」  次々と持論を述べる参謀たちだった。  果たしていずれが正解なのかは、本人に直接会って確認するよりないだろう。
     
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