第七章 反抗作戦始動
V  ザンジバル艦橋。 「何だと! もう一度確認しろ!」  突然、通信班長が部下の通信士に向かって怒鳴るように言った。 「間違いありません。何度も確認しましたから」  通信士は汗を拭いながら答える。 「そんな馬鹿なことがあってたまるか……」  彼自身も信じられないという表情がありありだった。 「事実です」  そんなやり取りを耳にして、マック・カーサー大将が尋ねた。 「どうした? 何を騒いでおる」 「はあ……。共和国同盟の各地で暴動が起きました」 「暴動だと?」 「首都星に駐留していた防衛艦隊の半数が暴動鎮圧のために各地へ出動したもようです」 「暴動鎮圧に向かっただと? 誰がそんな命令を出したのだ」 「共和国同盟総督府マック・カーサー総督の名において出動命令が出されています」 「馬鹿な。儂は命令など出してないぞ」 「ですが、間違いなく総督の認証コードで発せられています。何者かが認証コードをハッ キングして、艦隊に指令を出したものと思われます」 「う……一体誰なんだ」  言いながら、端末を操作していたが、 「だめだ!」  ドンと両手の平で端末を叩き付けるカーサー提督。 「どうなさいましたか」 「儂の認証コード用の暗号コードが変更されている。トランターの統帥本部コンピュー ターにアクセスできない」 「それじゃあ、暗号による指令が出せないということではないですか」 「とにかく、まだ半数の艦隊が残っているのだな」 「そ、それが……つい先程、反乱軍と思われる多数の艦隊が接近中とのことで、残存艦隊 も迎撃に出撃したもようです」 「馬鹿な! それでは首都星は丸裸ということではないか。呼び戻せ!」 「だめです。先の鎮圧部隊ともども、連絡がつきません」 「何ということだ……。こんな大事な時に……」  頭を抱えるカーサー提督。  報告は続く。 「大変です! 首都星トランターに二千隻の艦隊が出現し、首都防衛地上部隊と交戦 中!」 「二千隻だと?」 「ランドール配下の第八占領機甲部隊『メビウス』です」 「各地の軍事施設を急襲してこれを無力化。さらに機動戦艦『ミネルバ』を主力とした艦 隊が、総督府を包囲せんと展開中です」 「こちら側の勢力は?」 「防衛地上部隊が四千隻に水上艦艇が六千隻です」 「なら問題はあるまい。こちらには新造の機動戦艦もあるしな」 「現在、ミネルバ級同型二番艦『サーフェイス』と三番艦『アルキメデス』が迎撃に出ま した」 「それにしても、一体どこに隠れていたんだ?」 「報告によりますと、メビウス部隊は第十七艦隊新設の際に分離独立されて、軍事演習目 的でトランターに残ったとありますが、その後消息を断って完全に沈黙してしまいました。 いずこかに秘密基地を建設して隠れていると噂されています。配下の工兵部隊なら秘密基 地の建設も容易でしょう」 「司令官は誰だ?」 「ランドール提督の腹心で、レイチェル・ウィング大佐です」 「どんな奴だ」 「ランドール提督が最初の独立遊撃艦隊を新設した時に副官として任官し、最初の参謀役 として情報参謀を務めていたようです。共和国同盟開国以来最初の女性佐官です」 「女なのか?」 「はい。提督が作戦立案を練るときには、彼女の情報力が大いに寄与していたと言われま す。かのタルシエン要塞攻略の作戦立案にも参画した功績で大佐に昇進したもよう」 「情報参謀か……」 「認証コードをハッキングしたのも彼女らではないですか?」 「ありうるな……」 「ともかく、今日あることを予想しての第八占領機甲部隊の配置。ランドール提督の先見 性は神がかりものですね」 「敵将を賛美してどうするか。士気に関わるぞ」 「あ、申し訳ありません」
     
↓ 1日1回、クリックして頂ければ励みになります(*^^)v

小説・詩ランキング

11