第三章 第三皇女
XV  インヴィンシブルの艦載機発着場。  アークロイヤルの皇女専用艀が停船しており、その周囲を将兵が整然と取り囲んでい た。真紅のビロードの絨毯が敷かれて、ジュリエッタ皇女が出迎えていた。  やがてドアが開いて、中からマーガレット皇女が姿を現わす。その背後にはアレック スが控えている。  タラップが掛けられて、兵士達が一斉に銃を構えなおし、VIPを出迎える動作を行 った。内乱の首謀者といえども、皇女という身分を剥奪されてはいないからだ。 「お姉さま!」  ゆっくりと歩み寄るジュリエッタ皇女。 「ジュリエッタ……」  互いに手を取り合って再会を喜ぶ二人。政治の舞台では反目しあっていても、姉妹の 愛情は失われていなかった。  首都星へ向かうインヴィンシブルの貴賓室で、姉妹水入らずで歓談する二人。アレッ クスは席を外しており、別の部屋で待機をしていると思われる。 「そういうわけだったのね」  ジュリエッタは、共和国同盟の英雄との出会いを説明していた。 「噂には聞いておりましたが、あれほどの戦闘指揮を見せつけられますと……」 「何? 何が言いたいわけ?」  言い淀んでしまったジュリエッタの言葉の続きを聞きだそうとするマーガレット」 「マーガレットお姉さまも気づいていますよね?」 「エメラルド・アイでしょ……」 「その通りです。軍事的才能をもって帝国を築いたソートガイヤー大公様の面影がよぎ ってしかたがないのです」 「そうね……。もしかしたら大公様の血統を色濃く受け継いでいるのかもしれません」 「だったら……」  身を乗り出すジュリエッタ皇女。 「待ちなさいよ。結論を急ぐのは良くないことよ。わたし達はランドール提督のことを、 まだ何も知らないのよ。例えば連邦にもエメラルド・アイを持つ名将がいるとの噂もあ ることですし」 「ええと……。確かスティール・メイスン提督」 「連邦においてはメイスン提督、同盟ではランドール提督。この二人とも常勝の将軍と して名を馳せており、奇抜な作戦を考え出して艦隊を勝利に導いているとのこと」 「そして異例のスピードで昇進して将軍にまで駆け上ってきた。もしかしたら……この どちらかが、アレクサンダー皇子と言うこともありえます」 「ええ。何につけても『皇位継承の証』が出てくれば、すべて氷解するでしょう」 「そうですね……。とにもかくにも、今は身近にいるランドール提督のことを調べてみ るつもりです」 「事が事だけに、慎重に行うことね。何せ、命の恩人なのですから」 「はい」 第三章 了
     ⇒第四章
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