銀河戦記/鳴動編 第二部 第十二章 海賊討伐 Ⅰ
2021.04.24

第十二章 海賊討伐




 アルビエール侯国アレックスの執務室。
「ヘルハウンドから連絡が入りました。海賊船は中立地帯へと向かっているようです」
 パトリシアが報告する。
「そうか、やっと本拠地を探し当てられそうだな」
「どうしますか? 戦艦が中立地帯に立ち入るのは、国際条約違反になりますが」
「そもそも中立地帯に違法に基地を建設しているのは海賊だからな」
 としばし考え込んでいたが、
「この際、大掃除するか?」
「中立地帯でドンパチやらかすのですね」
「害悪を放っておいては、摂政派との交渉にも水を差される事態になるかもしれないからな」
「誘拐された候女救出という名分があれば、大丈夫なのではないでしょうか」
「そうかもしれないな」
「それでは、征伐には誰を向かわせますか?」
「ここはやはり、ゴードンがいいだろう」
「捲土重来(けんどちょうらい)ですね。失った信用を取り戻させようと?」
「まあな……」


 海賊征伐の命はすぐさまゴードンに伝えられた。
 副官のシェリー・バウマン大尉が、頬を紅潮させて言う。
「提督の恩に応える機会を与えられましたね」
「すぐさま海賊討伐に向けて準備せよ!」
「はいっ! 海賊討伐に向けた準備を進めます」
 キリッと姿勢を正して、命令を復唱するシェリーだった。
「ヘルハウンドに連絡! 我々が到着するまで、索敵に専念させて早まった行動は取らせるな!」
 通信士も思いは同じだった。
 いや、ここにいるすべてのオペレーター達の思いも。
 ウィンディーネ艦隊が結成されて以降、指揮官たるゴードンに付き従ってきた同志だった。
「了解! ヘルハウンドどうぞ!」
『こちらヘルハウンド』
「索敵に専念し、ウィンディーネ艦隊の到着を待て!」
『ヘルハウンド了解! ウィンディーネ艦隊を待ちます』

 数時間後。
「出航準備完了しました!」
「よおし! 中立地帯へ向けて全速前進!」
「了解!」
「進路、中立地帯へ!」
「全速前進!」
 ウィンディーネ艦隊七万隻が、中立地帯に潜む海賊討伐に向けて動き出した。
 銀河帝国にしろ、共和国同盟にしろ、長年の頭痛の種を葬り去る好機がやってきたのだ。

 その頃、追撃艦隊が動き出したのも知らずに、中立地帯へと踏み込む海賊船団。
「まもなく中立地帯に入ります」
 航海長が報告する。
「警報装置を切っておけよ」
 戦艦に搭載された航路ナビには、中立地帯に近づくと警報を鳴らすシステムが組み込んである。
 結構大きな音を立てるので、煩いからと切るのがいつものことである。
 国際条約上では切ってはいけないことにはなっているのであるが海賊には無用である。
「中立地帯に入りました」
「跡をつけている奴はいないか?」
「感応ありません」
「ならば基地に帰還する」

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2021.04.24 13:28 | 固定リンク | 第二部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第二十章 タルシエン要塞へ Ⅳ
2021.04.23

第二十章 タルシエン要塞へ




 今回の場合もそうだが、ここ一番という作戦にはランドールが原案を考え、ウィンザーが作戦としてまとめ、ゴードンが実行する、というパターンが繰り返されてきたのである。黄金トリオはそうして昇進街道を突っ走ってきた。そのおこぼれに預かって他の者は昇進してきたといって過言ではないだろう。
 とはいっても彼とて軍人であり、武勲を上げて出世することは生きがいであり名誉としていることには変わりがない。士官学校同期の軍人が、せいぜい少佐になりたてだというのに、自分は一足先に大佐となり准将に手が届く距離にいることは、すべてランドールの配下にあってこその幸運であったのだ。オニールを追い越すことは出来なくても、名誉ある第十七艦隊の第二準旗艦・高速戦艦ドリアードに坐乗しているだけでもよしとしなければ。そもそも今回の昇進に際しても、例の軍法会議の一件のこともあり、認められることなどない高望みであったはずだ。それがこうして実現した背景には提督の強い働きかけがあったに違いない。
「シャイニング基地には連邦から搾取した艦船がまだ三万隻ほど残っております。第十七艦隊を分離分割して新しい新艦隊を増設するという噂はどうでしょうか。そうすればカインズ大佐にもチャンスがあります。チェスター大佐は退役まじかですし、コール大佐は艦隊再編成時によそから移籍してきたいわゆるよそものですからね」
「確かに第十七艦隊は大きくなり過ぎていると思う。未配属を含めて十三万隻の艦艇を所有し、四人もの大佐がいる唯一の艦隊だからな」
「ですから希望は捨てないでいきましょう。私だって昇進はしたいのです。大佐の配下のすべての将兵にしても」
「そうだな……」

 さらにパティーは話題を変えてくる。
「それにしてももう一つ解せないのは、第八占領機甲部隊{メビウス}を首都星トランター他の主要惑星に残してきたことです。第十七艦隊の主要なる占領部隊なしでどうやって要塞を落とすのでしょう」
「メビウスは最新鋭の機動戦艦を旗艦に据えて、補充員の訓練をこなしているということだが……司令官には、レイチェル・ウィング少佐がなったばかり」
「表向きは訓練ですが、密かにタルシエンに向かうのではないかとの憶測も飛び交っています。占領部隊なしでは要塞は落とせませんからね。第六の白兵戦だけでは不可能じゃないかと思うのですが。だいたいメビウスはカインズ大佐の配下だったではありませんか。それをウィング少佐が……」
「それを言うな。提督にも考えがあるのだろうさ。これまでもそうやって難局を切り開いてきたのだからな。俺達は命令に従うだけさ」
「納得のいく命令ならいくらでも従いますけどね。一切が極秘なんじゃ……」
「もう一度言っておく。ランドール提督は公正な方だ。すべての将兵に等しく昇進の機会を与えてくれる。ただその順序があるというだけだ。全員を一度に昇進させることができないからな。オニール大佐は、士官学校時代の模擬戦闘、ミッドウェイ宙域会戦と提督の躍進の原動力となった活躍をした背景がある。一番に優遇するのは当然だろう」
 その時、パトリシアがフランソワやその他のオペレーター達を従えて艦橋に姿を現した。丁度交代の時間であった。
「総参謀長殿のお出ましです」
 パティーが刺々しい言い方で言った。
 憤懣やるかたなしといった表情である。これまでの会話で、次第に感情を高ぶらせていたのである。
「艦の状態はいかがですか?」
「全艦異常なしです。敵艦隊の動静にも変化は見られません」
「判りました。カインズ大佐は休憩に入ってください」
「判った」
 立ち上がって指揮官を譲るカインズ。
「これより休憩に入ります」
 敬礼をし、ゆっくりと歩いて艦橋を退室する。その他のオペレータ達も交代要員と代わっていく。
 カインズに代わって指揮官席に付くパトリシア。
 その側に立つ副官のフランソワ。
「目的地到達時間まで十一時間です」
 オペレーターが報告する。
「ありがとう」


 タルシエン要塞中央制御室。
 要塞内に鳴り響く警笛。
「敵艦隊発見!」
「方位二○四、上下角三四。距離十七・八光秒」
「艦数、約七万隻」
 次々と報告される戦況。
「どこの艦隊だ」
「第十七艦隊だと思われます」
「そうか、やっと到着というわけか……フレージャー提督を差し向けるか」
「しかし、フレージャー提督はランドールと相性が悪いですからね。毎回撤退の憂き目に合わされています。今回はどうでしょうか?」
「ううむ……雨男というわけだな。そのとばっちりを受けて、こっちまで雨に降られるのは御免だが……逆に発想すれば、ランドールの猛攻を交わして生き延びてきた運の良い提督という言い方もできる。これまでどれだけの提督が全滅や捕虜になったか……」
「なるほど、そんな考え方もできるんですね」
「よし。フレージャーに迎撃させろ」

 共和国同盟軍第十七艦隊への迎撃命令を受けたフレージャー提督。
「なんでこうも、私にばかりお鉢が回ってくるんだ」
 頭を掻きながら、指揮官席に腰を降ろす。
 これで何度目の対戦だったかなと、指を折って数えている。
「フレージャー提督。今度こそ、これまでの仇を討つチャンスだと思います」
「だと良いんだがな。そもそものけちの付き始めが、あのミッドウェイ宙域会戦。ヤマモト長官より預かった第一機動空母艦隊の主力旗艦空母を多数撃沈され、提督も四名戦死し、ナグモ長官も自決した。その責任をとってミニッツ提督は、艦隊司令を降りられたのだが……」
「アカギ・カガ・ヒリュウ・ソウリュウが撃沈。壊滅的というべき悲惨な状態でしたね。引責退任されたミニッツ提督にはもう少し現役で活躍されることを希望していたのですが。それにしても当時少尉だったランドールも今や准将、一個艦隊を率いるまでに昇進しています。たった二年でここまでくるなんて尋常ではありませんね」
「ミッドウェイ宙域会戦での功績による、前代未聞の三階級特進があるからな。その後もカラカス基地奪取をはじめとして奇抜な作戦で同盟軍を勝利に導いてきた実績を持っているからな。クリーグ基地攻略においても、シャイニング基地を放棄して第八艦隊の援護に駆けつけた奴等に背後を突かれて、撤退を余儀なくされた」
「閣下も重傷を負われたのですよね」
「ああ、運がよかったのだ。ヨークタウンは辛くも撃沈を免れたものの帰還途中に機関部に誘爆を生じて航行不能に陥った」
「そのヨークタウンも閣下が退艦したあとに、漂流中を敵ミサイル艦に撃沈されましたね」
「何にしても、これが最後の戦いになるだろう。勝つにしても負けるにしてもだ」
「どういうことですか?」
「ランドール提督が、この要塞に対する攻略戦を仕掛けてくるということは、それ相応の自信と覚悟を持ってのことだろう。これまでのランドールの攻略戦を分析すれば、作戦途中での撤退などあり得なかった。カラカス基地攻略戦がその良い例だ。背水の陣を強いての強行突入による軌道衛星砲の奪取から始まる劇的な幕切れ。今回もおそらくは……」
 と、その作戦を思い浮かべようとするフレージャー提督。
「だめだな。私のちんけな脳細胞では、ランドールの考えることが思い浮かばない」
「この堅固な要塞を落とすには、奇襲を掛けて潜入し内部から破壊するしかないでしょう。しかし、こうして迎撃艦隊が張り付いている現状では、侵入など絶対不可能です」
「絶対不可能という言葉を使うものではないさ。所詮人間の作ったものだ。どこかに落とし穴があるかも知れない。ランドールは必ずそこを突いてくる」
「あるんですかね……落とし穴」
「俺達の貧弱な脳細胞では考えも付かない穴がな」

第二十章 了

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2021.04.23 08:17 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)
銀河戦記/鳴動編 第一部 第二十章 タルシエン要塞へ Ⅲ
2021.04.22

第二十章 タルシエン要塞へ




 アル・サフリエニ宙域タルシエンに浮かぶ要塞。
 バーナード星系連邦の共和国同盟への侵略最前線基地にして、その後方に架かる銀河の橋を守る橋頭堡でもある。
 銀河系の中の、太陽系をも含有するオリオン腕とペルセウス腕と呼ばれる渦の間に存在する航行不能な間隙の中で、唯一の航行可能な領域。それがタルシエンの橋と呼ばれ、その出口にバーナード星系連邦が建設した巨大な軍事施設がタルシエン要塞である。
 直径512km、質量7.348x10^21kg(地球質量の1/81,000,000)

 *ちなみに太陽系内では、準惑星のケレスが直径1000kmで他に500km級は2個しかない。また、スターウォーズのデススターが直径120kmである。*

 要塞は重力を発生させるためにゆっくりと自転しており、人々は要塞の内壁にへばり付いている。 重力のほとんどない要塞最中心部には、心臓部とも言うべき動力エネルギーを供給する反物質転換炉。
 それを囲むようにして収容艦艇最大十二万隻を擁する内郭軍港及び軍需生産施設があって、要塞の北極と南極にあるドッグベイに通路が繋がっている。
 中殻部には軍人や技術者及びその家族軍属を含めて一億二千万人の人々が暮らす居住区画やそれらを賄う食物・飲料水生産プラント。要塞を統括制御している中枢コンピューター区画、病院やレクレーションなどの福利厚生施設も揃っている。
 そして最外郭には、要塞を守るための砲台が並ぶ戦闘区画となっている。
 その主力兵器は、陽子・反陽子対消滅エネルギー砲。中心部の反物質転換炉から放射状に伸びる粒子加速器によって加速された反陽子一単位と、もう一対の粒子加速からの陽子二単位とを反応させた際に生ずる対消滅エネルギーを利用し、残渣陽子をさらに加速射出させる。通常の陽子加速器では得られない超高エネルギー陽子プラズマ砲である。副産物として多量のダイバリオン粒子が生成されることから、ダイバリオン粒子砲とも呼ばれる。
 質量のすべてをエネルギー化させる対消滅エネルギー砲に勝るものはない。例えば核融合反応における極微量の質量欠損だけでも、E=mC^2で導かれる膨大なエネルギーが発生するのである。
 ちなみに広島に落とされた原爆における質量欠損は、0.7グラムだと言われている。1グラム(1円玉の重さ)にも満たない質量がすべてエネルギーに変わるだけで、あれだけの破壊力を見せつけてくれたわけである。
 サラマンダー艦に搭載された原子レーザー砲と比較検討がされたりするが(つまりどちらが威力があるかだが)、前述の通りであるし、そもそも巨大要塞砲と、蟻のように小さな戦艦搭載砲とを比べるのには無理がある。

 居住区画の一角にある中央コントロール室。
 壁面のスクリーンに投影された要塞周辺の映像や、要塞内の状況がリアルタイムに表示され、それらを操作するオペレーター達が整然と並んでいる。
 要塞を統括運営する機能のすべてがここに終結している。
「第十七艦隊の動きに何か変わったことはないか?」
「別にありません。二十八時間前にシャイニング基地から出撃したとの情報からは何も……」
「だろうな。無線封鎖をして動向をキャッチされないようにしているだろうからな。それで予定通りこちらに向かったとして到着は何時ごろだ」
「およそ十八時間後だと思われます」
「警戒を怠るなよ」
「判っております」

「それにしても着任そうそう、あのランドール提督とはな。ついてないな」
「はい。あのサラマンダー艦隊かと思うと、身震いが止まりませんよ」
「君は、ランドールを評価するのか?」
「前任の司令官自らが率いた八個艦隊もの軍勢をあっさりと退けた張本人ですからね。安全な本国でのほほんとしている頭の固い将軍達はともかく、こっち側にいる指揮官達は、みんな奴とだけはやり合いたくないと願っているのですよ」
「そうか……。君達の気持ちも判らないでもないが、だからと言って逃げているわけにもいくまい」
「ランドール提督なら、平気で逃げちゃいますけどね」
「奴は例外だ。しかし奴とて闇雲に逃げ回っているわけではないだろう」
「そうです。転んでもただ起きるような奴ではありません。いつも必ず罠を仕掛けてあります。それに引っかかって幾人の提督が泣かされたか。前任の司令官なんか、捕虜にされるし一個艦隊を搾取されしで面目丸潰れ、もはや本国に帰りたくても帰れないでしょう。捲土重来はあり得ず、全艦玉砕すべきだったというのが本国の一致した意見らしいです」
「らしいな。罠を仕掛けたりする卑怯な奴として思われているが、罠に引っかかる方が不注意なのであって、それも立派な戦術なのだがな」
「今回はどんな罠を仕掛けてくるのでしょうか? たかが一個艦隊だけで、この要塞を攻略など不可能ですからね」
「十分以上の用心をするに越したことはないだろう」
「考えられるだけのすべての防御策を施した方がいいでしょう」


 宇宙空間に出現する第十七艦隊。
 旗艦サラマンダーの艦橋。
 ワープを終えて一息つくオペレーター達。
「第一目標地点に到達しました。全艦、ワープ完了。脱落艦はありません」
「よし。全艦、艦の状態を確認して報告せよ」
「全艦、艦の状態を報告せよ」
 エンジンに負担を掛けるワープを行えば少なからず艦にも異常が生じる。それを確認するのは、戦闘を控えた艦としては当然の処置であった。特に旗艦サラマンダー以下のハイドライド型高速戦艦改造II式は、今だに改造の続いている未完成艦であり、データは逐一フリード・ケースン少佐の元に送られる事になっていた。それらのデータを元にして実験艦「ノーム」を使用しての、改造と微調整が続けられていた。
「一体、何時になったら改造が終わるんだ?」
 アレックスが質問した事があるが、フリードは肩をすくめるように答えていた。
「他人が建造した艦ですから、いろいろと面倒なんですよ。例えばある回路があったとして、それがどんな働きをしているか理解に苦しむことがあるんですよ。最初から自分が設計した艦なら、すべてを理解していますから簡単なんですけどね」
 その口調には、自分にすべてを任せて戦艦を造らせてくれたら、サラマンダーより高性能な艦を建造してみせるという自信に満ちているように思えた。しかしいくら天才科学者といえども、そうそう自由に戦艦を造らせてもらえるものでもなかった。まずは予算取りからはじまる面倒な手続きを経なければならないし、開発設計が始まっても軍部が口を挟んで、自分の思い通りには設計させてはくれないものだ。そして実際に戦艦を造るのは造船技術士達であり、設計図通りに出来上がると言う保証もなければ、手抜き工事が横行するのは世の常であるからである。
「報告します。全艦、異常ありません。航行に支障なし」
「よし。コースと速度を維持」
 時計を確認するカインズ大佐。
「うん。時間通りに着いたようだな」
「時間厳守なのは、第十七艦隊の誇りです。一分一秒の差が勝敗を決定することもありますからね」
 副官のパティー・クレイダー大尉が誇らしげに答える。
「そうだな……」
「ところで、カインズ大佐……」
「なんだ」
「提督は何を考えておられるのでしょうか。大佐をさしおいて、ウィンザー少佐に第十七艦隊の全権を委ねるなんて。自身はウィンディーネのオニール大佐と共に別行動にでたまま。通信統制で連絡すらままならないし」
「まあ、そう憤慨するな。この作戦の立案者の一人であるウィンザー少佐に指揮権を任せるのが一番妥当ではないか」
「そうはいいますが、何もウィンザー少佐でなくても……だいたい作戦内容が一切秘密だなんて解せないですよ。一体提督は第六突撃強襲艦部隊や第十一攻撃空母部隊を率いて何をしようとしているのですか? 第六部隊は、白兵戦用の部隊なんですよ」
「ランドール提督がわざわざ第六部隊を率いる以上、ゲリラ戦を主体とした作戦だとは思うが、それがどんなものかは少佐の胸の内というわけだ」
「ゲリラ戦ですか……しかし相手は巨大な要塞ですよ。一体どんな作戦があるというのでしょうか」
「さあな。俺達には何も知らされていないからな」
「やっぱり、恋人だからですかね」
「ま、どんなことがあっても、絶対裏切ることのない信頼できる部下であることには間違いないだろうな。後方作戦の指揮をまかせるのは当然だろ」
 カインズとて、下位の士官に命令を受けるのは好ましいことではなかった。しかし、今の自分の地位があるのも、ランドール提督とウィンザー副官の絶妙な作戦バランスの上に成り立っているのも事実であった。大佐への昇進をゴードンに先んじられ、悔しい思いを胸に抱きながらもやっと大佐へとこぎつけたばかりだ。配下には三万隻の艦隊を預けられている。
「大佐。今回の作戦が成功すれば、提督は第八師団総司令と少将に昇進することが内定していると聞きましたが」
「それは確からしい」
「だとすると、今四人いる大佐のうちの誰かが第十七艦隊司令と准将の地位に就くということになりますね」
「ああ……そういうことだな」
「どうせ、腹心のオニール大佐でしょうねえ。順番からいっても」
 それは間違いないだろう。
 カインズは思ったが、口には出さなかった。やっとゴードンに並んだばかりだというのに、という思いがよぎる。ランドールの下で動く限り、その腹心であるゴードンに完全に追い付くことは不可能であろう。

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2021.04.22 07:48 | 固定リンク | 第一部 | コメント (0)

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