銀河戦記/鳴動編トップメニュー
2021.07.31

PC版ホームページからの移行ブログです。
最近はスマホが流行し、今後は主流となると思います。
そこで、スマホでは表示が見にくいPC版を、
こちらへと転載していこうと思います。
ルナリアン戦記
第一部後半はこちらです
第二部はこちらです
第二部後半はこちら
ファンタジー系はこちらです


序章
索敵 
士官学校 
模擬戦闘 
情報参謀レイチェル 
独立遊撃艦隊 
カラカス基地攻略戦 
不期遭遇会戦 

第八章~十章は、稚拙ながら推理小説仕立てとなっております。
殺人犯は誰なのか? お楽しみください(*'▽')

犯罪捜査官 コレット・サブリナ 
コレット・サブリナ 犯人を捜せ! 
コレット・サブリナ 氷解 
スハルト星系遭遇会戦 
テルモピューレ会戦 
ハンニバル艦隊 

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梢ちゃんの非日常 page.10
2021.07.29

梢ちゃんの非日常(ルナリアン戦記前章)


page.10

 あしかショーが終わって、会場を出る絵利香と、一抱えもあるぬいぐるみを大事そうに抱えた梢。
『ねえ、絵利香』
『なに?』
『あのお姉さん。絵利香のこと、お母さんって呼んでたね。えへへ』
『梢ちゃん、嬉しそうね』
『だって、絵利香は、梢のお母さんだもん』
『あのね……』
『お母さん、お母さん』
 ぬいぐるみを抱えながら、はしゃぎまわっている。
『はあ……好きに言ってなさいよ。もう……』
 動物園内で、二十一歳の絵利香が、三歳の梢を連れていれば、誰だって母娘だと思うだろう。動物園に来る前から、母娘だと間違われるだろうことは、覚悟の上だった。だから、あしかショーで、お母さんと呼ばれても、あえて訂正しなかったのである。それこそ何十回と言われるかも知れないのに、いちいち訂正などしていられない。逆に勘繰られてややこしいことになる可能性もある。
 それに以前から梢は、梓と絵利香の事を比べて、
『ママが二人だよ』
 と自ら発言している通り、絵利香を母親的存在として認めている。だから他人に、絵利香が梢に対してお母さんと呼ばれることに喜びを感じているようだ。


 家族達が行きかう動物園内。
 木陰になって風通しの良いベンチに腰掛けて本を読んでいる絵利香。その膝を枕にして、気持ちよさそうにお昼寝中の梢。その足元には、あしかショーでもらったぬいぐるみも置いてある。
 園内のレストランで昼食をとってしばらくすると、目をこすりはじめたので、このベンチに連れてきて、膝枕してあげると、ぐっすりと寝入ってしまったのである。寝冷えしないように、自分の着ていたカーディガンを掛けてやっている。
 屋敷の寝室でも、フリートウッドの座席でもない。こんな人通りの多いベンチでも安心して眠っていられるのは、絵利香に絶大な信頼を抱いている証拠である。
 ベンチは半分ほど空いているのであるが、寝ている梢を起こさないように、来園者は皆遠慮して通り過ぎていくようだ。さすがに子供連れで来園している人々だ。子供とその母親の心情を理解している。
 やがて大きな伸びをして梢が目を覚ました。
『あら、お目覚めね』
『ん……』
 まだ眠いのか目をこすりながらも、身体を起こしてくる梢。
『お顔を洗ってらっしゃい』
 といってハンカチを手渡しながら、目の前にある水飲み場を指差す絵利香。
『うん。洗ってくる』
 ハンカチを受け取って、顔を洗いに水飲み場に向かう梢。肩から下げたポシェットには、自分用のハンカチやティッシュも入っているのであるが、ここは手渡された絵利香のハンカチを使うようだ。
『あは、冷たい!』
 蛇口を捻って冷たい水で顔を洗えば目覚めもすっきり、渡されたハンカチで顔を拭って絵利香の元に戻る梢。
『はい。返すね』
 ハンカチを絵利香に返して、隣に座りなおす梢。もうすっかり眠気も取れたようだ。
『今度はどこに行くの?』
『そうね……』
 そろそろ退園時間の予定が近づいている。最後としてパンダ舎を見に行くか。そう思って梢を見ると、往来する人々の手に握られたソフトクリームを、物欲しそうに見つめているのに気づいた。
 そういえば三時のおやつがまだだった。
『あのソフトクリーム、食べたい?』
『うん。食べたい』
 園内を見渡せば幸いにも視界内に、ちょっと離れた所にソフトクリームの屋台が見えた。
 梢のそばを離れるのは、誘拐の危険があってできない。仕方なく梢の手を引いて、その屋台まで歩いて行って、ソフトクリームを買うと再びベンチに戻る。その間、梢に右手でぬいぐるみを持たせ、自分は二つのソフトクリームを左手に、右手で梢の左手を引いていた。
 歩きながらでは、足元が不確かになって転ぶ恐れがあるので、ベンチに腰掛けたまま食べることにする。
『はい。梢ちゃん』
 ソフトクリームを手渡されるも、往来の中で食べ物を取るということは、梢には経験のないことである。きょろきょろとあたりを見回したりするが、すぐそばでは絵利香が平然とソフトクリームを食べている。
『梢ちゃん。ソフトクリームはね、こうやってお部屋の外で食べてもいいのよ』
 絵利香は、梢が外で食べたことがないだろうと、先に食べて見せていたのである。
『うん。いただきまーす』
 絵利香が実際に食べているのを見て、安心して冷たいソフトクリームを頬張る梢。
『冷たくて、おいしい』


 あしかショーの会場から、西へ移動しながら点在する動物を鑑賞していく二人。
 やがてお昼となって、食事のために園内レストランに入る絵利香と梢。
 レジの脇に、ビニール製の食品サンプルが収められたショーケースがあった。
 梢はサンプルケースを右に左に見回しながら品定めをしている。以前にも何回か、デパートなどの大衆レストランで食事をしたことがあるので、サンプルケースがメニューブック代わりになっていることを知っている。
『極上サーロインステーキ(sirloin steak)か……こんな場末のレストランじゃ、まともな肉じゃないでしょうね。硬くてまずいかな』
 絵利香はサンプルの一つを眺めながら、思いをめぐらす。牛一頭を解体して、ロース肉の極上部分を切り出せば、確かに嘘はついていないかも知れないが、牛そのものがまともなものでなければ意味が無い。乳の出なくなった乳牛だったり、役牛だったり、その素性が知れたものではない。
 真条寺家で出される肉類は、畜産農家と個別契約して厳選された極上品質のものを手に入れている。屋敷や寄宿舎、飛行場、医療センターなど二百人からの従業員の食事を賄うためである。
 いつのまにか絵利香の脇に梢がくっついている。
『梢ね。これがいいな』
 と絵利香を見つめながら、極上サーロインステーキを指差している。
 肉好きな梢の事、目ざとく一番大きな肉を選んだようだった。
『ああ、もう決めちゃったのね』
 手間ひまかけて調理されるフランス料理に馴染んでいる絵利香や梓は、肉塊のまま焼いて出すだけのビーフ・ステーキは好みではない。シャトーブリアンなるビフテキ様のフランス料理もあるにはあるが……。
 とはいえ、大衆レストランにフランス料理を望むのは無理である。梢にしても、料理の真髄よりも肉が大きければ、感動ものなのである。
 とにもかくにも、梢の選んだ極上サーロインステーキと、野菜サラダ、コンソメスープ、そしてパン、デザートにカスタードチーズケーキ。それらの食券一人前ずつを購入して中に入り、テーブルにつく二人。あしかのぬいぐるみは足元に置いてある。
 例によって梢は絵利香の膝の上である。他の幼児達は、幼児用高椅子にちゃんと座っているのだが、梢はどこ吹く風のごとく我が道を行くである。梓によって、そういう風に育てられたのだから、梢自身には罪はない。
『梓、やっぱりあまやかし過ぎじゃないかな』
 絵利香は、思わず呟いてしまう。
『ん。なに?』
 その呟きを聞きつけて梢が首を傾げる。
『何でもないわよ。あ、ほら。料理がきたわよ』
 梢の目の前に、焼きたてのステーキが運ばれてくる。
 絵利香は早速ナイフでステーキを小さく切り分けはじめる。その行為は本来食事のマナー違反なのであるが、ナイフが使えない三歳の梢に自由に食べてもらうためには、いたしかたないところだ。思った通り、肉は極上と呼ぶにはおこがましく、あまり良い品質のものではなかった。それでも繊維が固いというほどでもないので、梢でも食べられるものであった。
 その間、梢は舌なめずりして、絵利香がフォークを手渡してくれるのを待っている。こういう点は他の幼児にはない、躾の行き届いたところである。
『はい、梢ちゃん。食べていいわよ』
 半分ほど切り分けたところで、持参した幼児用フォークを梢に手渡す絵利香。
『いただきまーす』

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11
梢ちゃんの非日常 page.9
2021.07.28

梢ちゃんの非日常(ルナリアン戦記前章)


page-9

 動物園に着くまでの間、そのパンフレットを梢と一緒に眺める絵利香。
『ねえ。パンダは?』
『ええとね……あった。園の西側にいるみたいよ。でも、パンダを見るのは、お昼を食べてからにしましょうね』
『うん。いいよ』
 メインディッシュは最後の方に出るものである。先にパンダを見せてしまうと、すぐに飽きてしまって、帰ると言い出すかもしれない。興味のあるものを最後にしておけば、ずっと引き延ばすことができる。
 東のあしかショーを見て、少しずつ西へ移動しながら、園内の動物やアトラクションを見てまわって、最後にパンダを見ることにする。
 こうやって予定を先に立てることができるのも、白井がパンフレットを取ってきてくれたおかげである。心から感謝する絵利香。

 あしかショーの会場。
 場内の前の方の席に陣取り、ショーを観覧する梢と絵利香。
 あしかのおどけた仕草と、インストラクターの絶妙な話法で、観客を虜にしている。梢も夢中になって見ている。
『それじゃ、ここで会場の子供達にも手伝ってもらおうかな。だれか、手伝ってくれる子はいるかなあ! 手伝ってくれる子、手を挙げて』
 司会役のインストラクターが場内にむかって問いかける。
 すると、
『はい、はい、はい!』
 なんと梢が、小さな手を挙げて、元気一杯に叫んでいる。
『はい。そこの小さなお嬢さん。前に出てきてくれるかな。お母さんも一緒にお願いします』
 司会が梢を指差して、手招きしている。観客の視線が一斉にこちらに向いている。
『なんてこと……』
 頭を抱える絵利香。
 とことことプールサイドの方へ歩いていく梢。
『早く、早く』
 後を着いて来ない絵利香に、梢が手招きして呼んでいる。
『しかたないなあ……』
 ゆっくりと立ち上がって梢の後を追ってプールサイドへ向かう絵利香。

 屈みこんで、マイクを向けて梢に話し掛ける司会役。
『お嬢さんの、お名前とお歳はいくつかな』
『あのね。梢は、三歳だよ』
『ありがとう、梢ちゃん』
 司会役は立ち上がって、場内に向かって語りはじめる。
『さあ、お手伝いしてくれるのは、梢ちゃん。三歳だそうです。はきはきとした元気なお嬢さんですね』
 その時、あしかが前びれを動かしながら鳴き声をたてる。
『あら、あしかさんが握手したいそうよ。梢ちゃん、あしかさんと握手しようか』
『うん』
 司会に誘導されて、あしかの前に進み出る梢。そして前びれをつかんで握手である。
『えへへ。あしかさんと握手しちゃった』

 その間、別のインストラクターが絵利香にそっと耳打ちしている。
『お母さん。梢ちゃんは、足し算できますか?』
『ええ、一桁内なら、指を使ってなんとか』
 梓が車で移動中などに、梢に足し算を教えていて、指十本を使っての計算ができることを知っていた。
『ありがとうございます』
 確認して、司会役の方に合図を送っている。
『さて、あしかさんと仲良くなりました。梢ちゃんは、足し算はできるかな?』
『できるよ』
『じゃあ、足し算やってみる?』
『うん、いいよ』
 するとあしかが鳴き声をあげる。
『ええと、あしかさんも足し算をしたいそうですよ。梢ちゃんと、どっちが先に答えを出せるか競争しましょう。いいかな、梢ちゃん』
『梢、負けないもん』
 たいした自信である。実際に一桁内の足し算なら、指計算で正確に答えを出せることは知っている。しかし競争となれば、正確さに加えて迅速さも必要なのだが。

『はい。それでは、ここに「1」から「5」までの数字板があります』
 手伝いのインストラクターが、観客にも良く見えるように高く数字板を掲げる。
『この中から、梢ちゃんに、二枚引いてもらいます』
 数字を裏に向けて梢に引かせる司会。
 客に数字板を引かせるのは、前もって答えを教えていないというジェスチャーで、「5」までしか数字がないのは、足し算して一桁を越えない配慮であろう。
『ここにあります二枚の数字板の数を足し算してもらいます。答えが出たら、大きな声で答えてね、梢ちゃん』
『うん』
『あしかさんには、後ろにあります「1」から「9」までのプラカードを引いて答えを出してもらいますよ』
 司会が示す場所には、数字の書かれたカードが順列で並べられている。あしかはそれを咥えることで答えを示すということらしい。
『さて、梢ちゃんが、引いたのは「2」と「3」でした』
 正面にある大きな掲示板に釘が出ていて、穴の空いた数字板を引っ掛ければ数式が表されるようになっている。
 2+3=?
 という一桁の足し算である。
『それじゃあ、2たす3です。梢ちゃんはわかるかな』
『えっとね……』
 梓が、三歳の梢のために教えた計算方式をはじめる。
 まずは左手指を二本たて、右手指を三本たてる。次に右手指を一本降ろして、左手指を一本上げる。それを繰り返すと左手指が五本全部上がることになる。つまり答えは「5」である。
 しかし、梢がそうやって数えている最中に、あしかが先に動いた。
 踏み台から滑るように、数字の列のとこへ行って、「5」の数字を引き当てたのである。
『正解です。答えは「5」です。残念ですねえ。あしかさんの方が先に答えてしまいました』
『ううん……負けちゃった』
 悔しがる梢。
 本当にあしかが答えを出したと信じているらしい。
 実際には誰かが判らないように、あしかにサインを送って、答えを教えていると思うのだが、実に巧妙ですぐそばにいる絵利香も気づかない。

『それでは、次の質問ですよ。今度は、同じようにお母さんに数字板を引いていただきましょう』
 言われるままに数字を引く絵利香。
『はい、お母さんが引いたのは、「3」と「4」でした』
 3+4=?
 再び掲示板に数式が掲げられた。
『それじゃ、梢ちゃん。わかるかな』
『ん……』
 再び指計算に入る梢。
 左手に指三本、右手に指四本を立ててから、右手の指を一本降ろして左手の指を一本立てる。これをもう一度繰り返して、左手五本、右手二本となる。左手の指が五本全部立ったところで、はじめて立っている指を数える。左手はもちろん「5」となるので、右手に移って二本たっているから、「6」・「7」と数えていく。答えは「7」である。
 こんなまわりくどいやり方をしなくても、立っている指を「1」から順番に数えていけば「7」という数を答えることができるのだが、左手五本の指「5」のブロックをわざわざ作るのには意味がある。指先がなめらかに動くようにする鍛練を兼ねて、5から9までの数は、5+Xということを覚えさせるのがねらい。
 今後として、
 6+7=?
 というような一桁を越える計算を理解させるのに重要となるのである。

 その間、あしかの方は考えている風に首を傾げている。
『さあ、梢ちゃん、どうかな。あしかさんも首を傾げて考えていますよ』
 そして、計算が終わって、
『7!』
 と、数字を示した両手を勢いよく挙げて、答えを叫ぶ梢。
『はーい。正解です』
 あしかが、さかんに前びれを振っている。
『お利口な梢ちゃんに、あしかさんも、拍手していますよ』
『えへへ……』
 誉められて思わず頬を赤らめる梢。
 実際には客に恥じをかかせないような演出で、二度目の計算は必ず先に梢が答えるようにしていたのであろう。

『これで、梢ちゃんのお手伝いは、おしまいです。梢ちゃんには、参加賞として、このあしかのぬいぐるみをプレゼントいたします。会場のみなさん、この元気でお利口な梢ちゃんに、大きな拍手をお願いします』
 割れんばかりの拍手が巻き起こる場内。
『梢ちゃん。どうもありがとう。大変勉強になりましたよ。どうぞ、席に戻ってください』
『ありがとう』
 手提げ状のビニール袋に入った大きなあしかのぬいぐるみを手渡されてお礼を言う梢。そしてゆっくりと歩いて元の席に戻る。
『えへへ。もらっちゃった』
『よかったわね。梢ちゃんがお利口だったからよ』
『うん!』
 ……しかし、こんなぬいぐるみもらったら、梓が持ってくるコアラが影薄くなっちゃうわね。ま、仕方ないか……


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